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モノリスレコード  作者: 東城 涼
ウォーデン王国編
9/10

8話:決意

 目が覚めると、白色の天井があった。

「知らない天井だ、何処だ此処。」

 自分の格好は水色のガウンで右の前腕に点滴がされていた。

 辺りを見回すと左の棚に花瓶がありその奥のベッドでカイルが寝ていた。

 今の状態を確認し自分は治療院にいることが分かった。

 だが、ここに至るまでの記憶がまるで靄がかかったみたいに思い出せない。

「ソニアとオウカは?」

 記憶がないせいで此処にいない二人の安否が分からず、不安を搔き立てる。

 すぐにベッドから立ち上がり右腕の点滴針を無造作に抜いて、壁に手をつきふらふらの体を支えながら部屋から出る。

 廊下は左右に分かれていて手をついていた右側から調べていく。

 二人の名前が有るネームプレートがある病室を探しているうちにふらっと後ろに倒れそうになる。しかし、倒れることはなく後ろから誰かが支えてくれていた。

「何してんのよ、レイド。」

 後ろを見るとソニアがいてレイドの背を支えていた。そのままソニアは支えながら近くの椅子にレイドを座らせる。

「まったく、様子を見に来たら部屋にいないで。しかもそんなふらふらな体で。」

 すぐさまソニアはレイドを叱りつける。

 だがレイドの耳には届いておらず、それよりも安堵があった。

「ちょっと、聞いてるの?」

「もちろん。でもよかった、無事だったんだな。オウカは?」

「当然、オウカも無事よ。今は別棟で寝ているわ。」

「そうか、みんな無事だったか。本当によかった。」

 パーティーメンバー全員の無事が分かり、レイドは背もたれに寄りかかる。

「まぁ、私は一時的な魔力欠乏だけだったし、オウカとカイルも今は疲労で寝ているだけよ。それより、一番重傷だったレイドがいなくて心配したんだからね。」

「悪かった。記憶があやふやだったりして冷静じゃなかった。」

「レイドもそうなの、実は私も。でも、とりあえずその話は二人が目を覚ました後にしよう。」

 ソニアは座っているレイドを起こし、そのまま肩を貸し病室まで運んだ。

 病室に戻るとカイルは寝たままで、外した点滴を付けるために看護師を呼んだ。

 来た看護師に小言を言われ点滴を付けてもらい、ソニアが自分の病室に戻りすることが無くなった。

 ベッドの上で瞼を閉じダンジョンのことを思い出す。

 ホブゴブリンを倒し十階層を攻略し未明領域に転移させられたことは覚えている。

 未明領域でゴーレムとキマイラと戦い討伐したことも覚えている。

 だが、未明領域で見たものとキマイラを討伐した後のことがどうしても思い出せない。

 なんとか思い出そうとするが思い出せず、そのまま眠りについた。


 再び目が覚めるとカイルが起きていた。

「よう、起きたのか。」

「ああ、そっちも無事そうで何よりだよ。」

「まあな、ソニアとオウカは。」

「二人も無事だ。昨日ソニアが来てくれて教えてくれた。」

「そうか、よかった。にしてもこんなに眠ってたんじゃ情けないな。」

「それはしょうがないだろ、おまえとオウカの二人が特にキマイラと戦ってたんだから。」

 ダンジョンでの反省点等を話していると扉が開いてソニアが入って来た。

「あっ、二人とも起きてたんだ。おはよう。」

「「おはよう。」」

「オウカも起きて体調もよさそうだから、二人も動いて平気そうだったら談話室で話したことがあるんだけど。」

「俺は平気だぜ。」

「俺も。」

 カイルに続いて応え、談話室に向かう。

 ソニアはオウカを呼びに戻り、オウカを連れて五分くらい遅れて着いた。

 キマイラとの戦いから二日ぶりにパーティーメンバーが全員揃った。

「レイド殿、カイル殿お待たせしたでござる。」

「おっ、来たか。」

「体調は大丈夫か。」

「体は平気でござる。二人も無事そうでよかったでござる。」

 オウカとの挨拶を済まし、すぐに未明領域についての話になる。

「三人は未明領域でのことをどれだけ覚えている。」

「俺は未明領域に転移させられ其処で戦ったことは覚えている。」

「拙者もゴーレムとキマイラと戦ったことを覚えているでござる。」

「私も。ただ、未明領域での戦闘以外のことと帰還時に記憶がない。」

「そういえば俺も覚えていない。」

「拙者もでござる。」

「やっぱりか。」

 予想していたこととはいえ手掛かりの一つもないのは悔やまれる。

 未明領域が行ったことがある人がいても未だ謎に包まれている理由を実感した。

「誰も攻略できない理由がわかった。」

「まさか、行き方と帰り方に加え中での戦闘以外一切わからないとはね。」

「正直、拙者たちもどうして転移したかもわからないでござるし。」

「どうして帰還できたかもわからないしな。」

「噂としか思っていなかったしね。」

「唯一わかるのは俺たちは相手に助けられたというだ。」

 今回一番重要だったことを切り出す。

 そこで静寂が流れ全員が下を向いた。

 四人とも今まで負けたことがないわけではないが、戦いで情けを掛けられたことはなかった。

 負けたことだけでも悔しいのに命のやり取りをした相手に情けを掛けられたことは屈辱でしかなかった。

 心の中で様々な負の感情が募っていく。

「切り替えるわよ、落ち込んでいても仕方がないわ。」

 ソニアが椅子から立ち上がった。

「次のダンジョン探索、二か月後の学期末の実技試験でリベンジするわよ。必ず強くなってこんな思いをしないように。」

 語りかけるソニアをよく見ると手が強く握りしめられていて少し血が滲んでいた。

 最後にキマイラに止めを刺したといっても、戦闘にはあまり関われないで四人の中で一番悔しい思いをしているはずだ。

 現にまだ掌から血が滲んでいて歯を食いしばっていた。だけど、顔を上げ前を向いていた。

 強いなと思う。そして自分もそうあれるように顔を上げ立ち上がる。

 レイドと同様に二人も立ち上がり、四人の目が合う。

「さあレイド、パーティーのリーダーとして一言。」

 ソニアに言われ、リーダーとしての役目をする。

「って言われても、さっきソニアに言われたこと繰り返すだけだと思うが。」

 一呼吸し、

「リベンジは二か月後の実技試験、それまで各々強くなって未明領域を攻略するぞ!」

と堂々と宣言した。

更新は不定期ですが今後も続けていきます。

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