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モノリスレコード  作者: 東城 涼
ウォーデン王国編
10/10

9話:それぞれの特訓①

 翌日怪我も治り無事退院することができ、学園に復帰した。

 勝手に下層に行き行方不明になった罰を受けると思っていたが、迷い込んだ先が未明領域だったことによりお咎めはなく注意と未明領域でのことを聞かれただけだった。

 それについて答え職員室を後にして教室に向かう。

 教室に着くとクラスメイトたちが一斉に寄ってきて、未明領域でのことを聞かれ揉みくちゃにされた。

 周りを囲まれて身動きが取れない中でカツンカツンと歩く音が響き、

「おい、レイド。」

 その一言で周りのクラスメイトが端に寄った。

「ジェイドか。」

 ジェイド・W・アルぺギウス、このウォーデン王国の第一王子で成績はレイドたちにも引けを取らない。宮廷魔術師の家系の男子ルディスと剣聖の家系の女子レイナの二人が常にお供して傍にいる。

 普段は身分を気にせず周囲に気を配っているが、今は威圧感を放っている。

「どうだった?」

 たった一言の質問だった。だが、それにはたくさんの意味が詰まっているように感じた。

「何にも分からず終いで負けたし、覚えていることもあまりない。だけど成長は出来た。」

「そうか。」

「あと、放課後に話がある屋上に来てくれ。」

「承知した、邪魔したな。」

 レイドの返答に満足したのかジェイドは席に戻っていった。

 ジェイドが席に戻ると端に寄っていたクラスメイトが再び押し寄せてきて、始業のチャイムがなるまで質問攻めにされた。

「お、終わったー。」

「初めて学校が辛いと思った。」

 結局放課後になるまで授業合間の休み時間、昼休みと他クラスの生徒まで押し寄せて来て四人は常に質問攻めにされ疲れて、机に突っ伏していた。

「それじゃあ」

 レイドが立ち上がり声をかける。

 それを聞き三人も立ち上がる。

「一時パーティーストゥルトゥスは解散、そして二か月後のダンジョン探索まで各自強くなって集まること。」

 そう言い、右の拳を中央に突き出す。

 レイドの拳に合わせソニア、カイル、オウカと順に拳を出していく。

「強くなるぞっ!」

「「「おうっ!」」」

 夕暮れの教室で四人は拳を合わし、解散した。




レイドの場合


 レイドは教室を出て、朝ジェイドと約束をした屋上に向かう。

 屋上には五分もかからず着いた。

 屋上に続く扉の前にルディスとレイナが経って待っていた。

 ジェイドが二人きりで話せるように気を利かせてくれたようだ。

「ジェイド様がこの先で待っている。何の用かは知らないが問題を起こすような真似はするなよ。」

「ああ、わかっている。」

 ルディスに言われるまま、扉を抜け屋上に足を踏み入れる。

 屋上にはすでにジェイドがいて、腕を前で組み仁王立ちで待っていた。

「悪い、待たせたか?」

「いや、気にするな。今日のお前たちの状況だったら仕方がない。それより話とはなんだ?」

「頼みがある。次のダンジョン探索までの二か月間、お前のところの騎士団で特訓させて欲しい。」

 そう言って頭を下げた。だが、自分で言っていても無茶な頼みだと思う。

 騎士団に入るためには筆記、実技、面接を受けなければならない。さらに毎年何百人という応募の中から二十人しか入団することができない狭き門なのだ。

 そこに特訓をしたいから二か月間だけ入団したいなどとふざけている。

 ここにレイナがいたら激怒して剣先を向けてきてもおかしくない。

「お前の頼みは分かった。判断するためにお前がダンジョンで経験したことを可能な限り詳しく教えて貰いたい。」

 そう言ってきたジェイドの目は真っ直ぐとレイドを見つめていた。

 その目を見つめ返し、レイドは覚えている限りのことを伝えた。

「未明領域でゴーレムにキマイラと戦ったのか、なるほど事情は理解した。いいだろう、お前の頼みなんとかしよう。」

「いいのかっ!?」

 レイドは文句を言われたりや対価を求められると思っていたが一切なく、ジェイドは頼みを引き受けてくれた。

 お礼を言おうとすると、

「ただ、少し愚痴に付き合ってくれ、なにお前に対するものでない。」

 そう言ってジェイドの話が始まった。

「正直、俺はお前たちが羨ましい。俺はこの国の第一王子という恵まれた地位に生まれたが、それ故に交友関係や行動が常に制限されている。だから、学校でバカをやったり命を懸けて冒険をできるお前たちが羨ましい。いや、羨ましいというよりもその生活に憧れている。」

 それは普段凛としているジェイドからは思いもしない発言だった。

「俺はこれから先、王になるために自由がさらに無くなっていく。だから、お前に託す。強くなって、未明領域を攻略し誰もが胸を躍らすような冒険譚を一番初めに俺に聞かせろ。」

「わかった、お前が聞いたら悔しがって王族としての立場を投げ出し一緒に行きたいと懇願してくるような冒険を絶対する。」

 夕日が直に射す春の屋上でジェイドの願いに胸を張って堂々と誓いを立てる。

「ああ、期待している。」

 その後は騎士団への参加期間や宿舎のことなど今後の予定を話し合い、明日の朝十時に王城の門前に行き案内を受け昼から訓練に参加できるようになった。

「ジェイド、ありがとうな。」

「ふっ、結果で返せ。」

 最後にジェイドにお礼を言って屋上を去った。


 翌日、予定の時間より少し前に門前に着くと鎧を着て槍を持っている壮年の男性が立っていて、こちらの姿を見ると同時に声をかけてきた。

「突然すまない、確認したいのだがお主がレイドか?」

「そうですけど、あなたは?」

「俺か、俺は騎士団副総督補佐のオリバーだ。お主の監督役になった者だ。」

「レイド・オルンクスです。今日から二か月間よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくな、ジェイド様の学友とのことらしいが手加減は一切しないから頑張れよ。」

「ええ、望むところです。」

 こうして、仲間との約束とジェイドとの誓いを胸にレイドの特訓が始まった。


 今後も不定期ですが投稿します。

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