3話 やるとゆう事、やれたとゆう事
前回までのあらすじ
ランドにやって来た、勇気はユウキブレイブになり魔獣ハイグールを討伐。
しかし突如として現れた闇の勇者ガザードによって、戦闘不能に追い込まれる。
そこを救ったのは、ガンタンの元賢者こと氷の勇者カウス。
だが実力が圧倒的に足らず、カウスは一つの決断をした。
最後の決断を…
(きっと私の力では、こいつに傷一つ付けることも叶わない。
この技を出す前に殺されるかもしれない。
けど、未来の為に今生きてきた全てをこいつにぶつける。
必ず弱点はある、そこに最大火力をぶつければ……あの子たちがやってくれる)
カウスは危機的状況に置いても、その冷静さを失わず、
勇者として、ここにいる戦士としての威厳を立たせる。
そして未来に残すための力を宿した舞を踊る。
至高魔法………それを出す為に体全体の全て機能で詠唱を始めた。
そんな絶好のチャンスの中、ガザードは何もしなかった。
余裕か?油断か?
否、彼はカウスを認めた、勝負の…いや決闘の相手として。
最後の最後まで勝負を捨てぬ、その精神に。
現実的には無謀…しかし愚かではない。
もっといい手があるかもしれない、その考えを捨てたカウスの姿に、
ガザードは最高の至高魔法をぶつける事を決めた。
その時、風は、大地は、草は、木は、虫は、鳥は、花は、獣は、時すらも邪魔しようとは思わないだろう。
「これが私の………遺言です」
するとニヤリと笑う。
「そうか、結構な事だ」
その時、空に輝く天使の欠片が降り注ぐ
ガザードは爆裂する闇の波動を放つ。
氷の破片から吹き渡る、氷点下の嵐が刃を運ぶ。
それに乗り爆裂は分散した、更にガザードは至高魔法を使った後だ、
(見えた、全ての穴への道筋)
そしてカウスは最後の力を振り絞り、杖を打ち出した……
音がしない、きっと逃げてしまったのだろう。
しかし中心へと走る者がいた、グレイスだ。
(さっきの光、間違いなく至高魔法だ…)
グレイスは走り続けた、すると微かな痛みも走る。
首筋の痛みに立ち止まり、、首を触るとそれは氷の破片だった。
(これは…そんな!?)
氷の破片は溶けてしまう。
グレイスは首を横に振るが、見えたのだ。
溶けた氷も消えたカウスも……
その後の事は誰も知らない。
しばらくした後ガーディアンセンターのメンバーがやってきて、勇気を緊急救命室につれて行き一命を取り留めた。
しかし氷の勇者の喪失……それを受けたガーディアンメンバーは絶望を感じていた。
そして夜が明けた、
「…ん?ここは?」
勇気が目を覚まし周りを見る。
そこは清潔感のある部屋で、
形はいびつではあるものの、医療用であることが分かる器具が置いてある。
(そうか……俺は誰かにやられたのか?)
勇気は拳で膝を叩く。
(…畜生!!あいつにも頼まれたのに。
あれ?そうするとグレイスさんは…まさか)
すると少し隣で音がする、勇気は警戒しつつカーテンを開けた。
「何だ、良かった…グレイスさんじゃないですか」
グレイスの姿を見って安心した後、スリッパを履いて隣に立つ。
「どうしました?そんなに暗い顔して……グレイスさん」
しかし反応は無い。
「……………」
「グレイスさん?」
グレイスはハッとすると勇気の方を見た。
その目は暗く揺れていた。
「どうしました?グレイスさん」
勇気が再び問いかける。
しかし何も答えないし、じっと勇気を見ている。
「君は何で?」
「へ?」
突拍子が無い、受け答えもできない。
「何で、勇者になったんですか?
関係が無いのに、何故ですか」
(わからない…なぜこの子は勇者になったんだ?
この子は動けたんだ?)
グレイスは吐き出した、感情を。
「君はなぜ勇者になった、死ぬかもしれないんだぞ。
それも普通じゃない方法で…」
少し考えて答えた。
「あいつに言われたからだと思います」
グレイスは舌打ちをした、
「そんな奴の言う事を鵜呑みにして、簡単にやるなんて言うのか?
カウスの奴だって、それで死んだんだぞ?
人生の大半を棒に振ってな」
勇気の甘い言葉に彼は窘めた。
「……は?カウスさんが死んだ?」
視界が歪みだした、
それに畳みかけるように奴は話しかける。
「自分の意思で事を進めない奴は力を持つ資格なんて無い」
頭痛がひどくなり始める、耳鳴りもする。
そして野郎は勇気の頭を触り、カウスの人生を見せた。
カウスが生まれたのは、最後のネザ信仰をしていた、聖スペシアであった。
彼女は幼少の頃からネザの心を植え付けられて、ノブレスの継承者に抜擢されたのだ。
そして世界にネザを再び立たせる為に国を回った。
始めにガンタンについた、
しかしそこに行ったのは勧誘のためではない。
そもそも両方は昔からにらみ合っていた。
だがネザはガンタンに負けて、岩山の奥に押し込まれた。
民たちは妨害してくるであろうガンタンを先に潰すように言ったのだ。
そして彼女はガルランドル・カーナス・ブレイジレルの元にたどり着き。
正面から暗殺を申し立てた、だがしかし彼女の前に近衛兵であり勇者である。
グロウ・ブレイジング・バーナエルが現れた。
剣を振り上げると彼は決闘を申し込んだ。
カウスは決闘に負けた。
グロウはカウスを配下にすると召使のように扱い人を守る名を与え。
逆らうことの出来ないカウスは人助けを一生強いられ、最後は殺されるのであった。
果たして、これが良い人生か?
故郷に帰ることも許されず、人助け何かをさせられ続けて。
相応の贅を味わえぬまま死ぬ、果たしてそれはいい人生か?
否、勇者になるという事は、
家族や友人以外の他人のために戦い、
それが終わっても傷だらけの体を持つだけの価値の無い物だ。
特にこの世界に家族や友人を持たぬ勇気に価値は無い。
この世界に価値は無い。
「あう……あううああああ」
勇気は床に這いつくばって苦悶を耐えようとしていた。
しかし記憶は何度でも頭を壊そうとしてくる、
(俺はあの時、誰の声を聞いたんだ?
思い出せない声なんて聞こえない)
頭の中で渦巻く声に傾く、目の前に黒い穴が現れて、
(帰らないと、
忘れて生きていける。
あの世界へ)
勇気は手を伸ばす、伸ばす。
全ては自分の思慮が薄い故の過ちだと気づき、戻れば楽であろう。
世界はそれを許した、神がそれを許した。
元の自分がいるべき場所に、
「……勇気君?」
ハッとして後ろを向くと、そこにはグレイスが立っていた。
「グレイスさん。
あなたは何で勇者になったんですか?」
勇気がそれを言うと鼻で笑い、椅子に座った
「さぁ何ででしょうね。
カウス様にやれってしつこく言われたからかな?」
「あなたもそうなんですね」
勇気は落ち込みベットに座った。
しかしグレイスは問いかける
「じゃあ君は何で、あの時僕を助けたんだい?」
「だって言われたから…」
「誰に?」
「知りません」
意味はあるか?
「僕もさ、最初は言われたからやってたんだよ」
グレイスは思い出すように上も見つめながら言った。
「身寄りもないし、自分の場所を守りたいからやったんだ」
「結構な理由じゃないですか」
「君だってそうじゃないか」
「へ?」
訳が分からない言葉に動揺するも、理解しようとする
「君も守りたいから守っただけだろう?
誰に言われようとやるのは自分なんだから、
やったって事は、やりたいって事じゃないの?」
グレイスの言葉は間違っている、
しかしその言葉は深く刺さった、心に…
「ねぇ勇気君は何で勇者になろうって思ったの?
この国に来たばかりなのに。
その力をどう使いたかったんだい?」
勇気の思考は長い時を刻んだ、僅か10秒を、
自分の事など自分にわかるはずがない。
しかし考えずにはいられなかった。
「…俺はあの時……グレイスさんが死んだら駄目だと思ったんです。
笑顔で死ぬより、泣いて生きてほしかった。
泣いて生きるより、笑って生きてほしかった。
エゴかもしれないけど、自分が望んだ場所を守りたかったんだ」
黒い穴は閉じた、向こうには君を心配する人がいる。
けれどエゴイストな彼はそれを跳ね除け、目を覚ました。
目の前にはグレイスがいた、
「…グレイスさん?」
「良かった…勇気君」
すると警報音が鳴り響く。
グレイスはノブレスを持ち、向かおうとした。
「勇気君はここにいて。
もう傷付けさせないから」
だが勇気はグレイスの裾を掴み静止した。
「待ってよグレイスさん。
俺が戦いますよ」
顔は下を向いていて表情が読めない勇気にグレイスは困惑する。
そして勇気はグレイスを押し倒してノブレスを奪い取った。
「待ってくれ、君は無関係だ!!
それに傷だってまだ…」
勇気は顔を見せぬまま聞いた。
「グレイスさんは俺が死んだら、泣きますよね?」
グレイスは首を縦に振る、
「それならよかった。
それなら俺は負けません…」
何故なら勇者だから。
ノブレス
ネザ教の儀式などで使われていた、スティック。
その力は使用者の精神に直結しており、強き心の者が使えばさらに強くなる。
また一定のレベルが存在しており。
レベル1以上の者が使えば、その者が最も得意とする形状へと変化する。
後にガンタン王国へカウスが持ち込み、グレイスが改造を施した、ノブレスが勇気達が使うノブレスだ。




