表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書けなくなった作家擬きが出会ったのは甘党少女でした。  作者: 神無桂花
甘党少女と追い縋る影。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/72

番外編。猫の日。甘党少女の場合。

 「荒谷さん荒谷さん。見てください見てください」


 それは、俺がようやく書けるようになった頃の話だ。


「……なにしてんだ?」

「猫耳ですよ猫耳。世界猫の日なので」

「二月二十二日だろ」

「にゃんにゃんにゃんですからねぇ」


 ご丁寧に猫の手ポーズまで取ってくるあたり、サービス精神が旺盛な奴だ。


「なんか、理由はわからないのですが、制定されているそうですよ」

「ふぅん」


 髪色に合わせて、淡い茶色の毛並みの猫耳。

 まぁ、似合うんじゃないか。いや、似合うな。

 凪に惹かれている現状、迂闊にそんな、一般的に萌え要素の感じるとされる恰好をされると、心臓がざわつくから勘弁してほしい。


「どうですかどうですか? 撫でますか?」


 そんな風に挑発してくるから、顎を撫でて応える。


「ゴロゴロゴロゴロ」

「猫か!?」

「猫ですよ。諭さーん。可愛い猫ですよ~。好きにして良いですよ~」


 ソファに座る俺の膝の上で転がり始める。 

 これが本物の猫なら、今頃ズボンはガムテープ辺りで掃除だな。


「ったく」


 そんな風にされると、俺の理性のタガが外れそうになるから勘弁してほしい。

 仕方ないので頬をムニムニと指で突くことで我慢することにする。


「ふひひ」


 手が伸びてきて、同じように顔を触られる。


「なるほど」

「何がだよ」

「諭さんが私のを触る理由、わかります」

「こんなの触って楽しいのか?」

「なんか、楽しいです」


 ああ、理解されてる。

 楽しい。

 内面を知られてるって、凄いな。変な気分。

 理解者がいるという事か。それは、なんだろう、ありがたいというか、贅沢というか。


「うん。内面知られてるって、一方的に色々掴まれてるってことか」


「あはは、そうですね。荒谷さんの好みとかは、理解しているつもりですよ。甘えたいし甘えられたいって、凄い複雑ですね」


「お互い甘え合うって、カオスだな」

「でも、書いてみれば、できているものじゃないですか?」

「まぁね」


 凪は控えめにクスクスと笑う。


「影山とか、似合いそうだな」

「……なるほど」

「凪も似合うな」

「ありがとうございます」


 嬉しそうに笑うけど、そんなに嬉しいのか。

 褒めてもセクハラになる事があるこのご時世。元作家志望としても言葉選びに苦慮する時代だ。ため息を吐きたくなる。

 イケメンが許される言葉も、フツメン以下はセクハラ扱いとか、普通にあるからなぁ。

 まぁでも、凪は躊躇わず褒めても良いのか。

 それはありがたいな。最低限の言葉選びで済ませられる関係は。


「ったく、可愛い奴め」

「ん?」


 凪が何を言われたかわからない顔で、でも頭では理解しているようで、? が浮かんでいるような顔で、でも口元は弧を描いていて、そのままきょとんと首を傾げた。


「荒谷さん。急に褒められると、戸惑います」

「わりと褒めてると思うが」

「真っ直ぐな言葉は違うのですよ。荒谷さん」

「そうかい」


 凪の身体を起こして、俺は執筆に戻るべく、部屋に入った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ