恐怖の出待ちメイド
「んー…。なんとも釈然としない」
今俺は先ほど着替えをさせてもらった部屋に戻ってっきていた。
俺の当面の心配はこれで一気に減ったはずなのに、なんだか腑に落ちない点が多いせいか安心しきれない。
少し整理してみよう。
そもそも俺がこの屋敷に来てから周りの反応が薄すぎだ。(パジャマを除く。)
それにイグニスはこんな夜中に俺が来たにも関わらず俺に何の文句も言わずに当主として出迎えてくれた。
あ、いや、それはアイセアの頼みだからっていうのもあるかもしれないんだけど…。
それはそれとして、もしかしたら今までも何度かアイセアが立ち行かなくなってどうしようもなくなった旅人なんかを屋敷に連れてきたことがあったのではないだろうか。
そう考えるといろいろ納得がいく。
俺を連れてきたのに俺の身元の確認をしない警備兵。
誰も屋敷に入ってきた不審な俺に対してアイセアに確認をしない。
それらも今までに何度も同じような経験をしているなら説明がつく。
次に俺の魔術のことだ。
『固有魔術』というのはそのままの意味でとっていいならそいつだけのユニーク魔術的な解釈でいいんだろうか。
イグニスの口ぶりからして魔術の種類についての考えは俺が考えていたものと概ね同じと考えてよさそうだ。
火や水、風などの自然界の力を使うものが普通の魔術。
固有魔術はさらに特殊?―――――普通の魔術師よりレアな存在だから逃がさないために俺を雇った?
そうだとしたらなんか怖くね?解剖とかされないよね?
「お前の中身をバラして固有魔術の研究の礎になってもらうぞ。ぐへへ」なんてマッドでサイエンスなENDはお断りだ。
でもそんなこと考えてこの機会のがしたら野垂れ死にまっしぐらだし。
とりあえず今日は明日の予定でも考えながら寝るか。
明日はとにかく俺のこの魔術がどんなものなのか調べたいな。
最初にこの屋敷に来た時に暗くて全体像は見えなかったが、何となくめちゃくちゃでかいのだけはわかった。
きっと広い庭なんかもあるだろう。
それが無ければ少し来た道を戻って畑のない草原でも探そう。
その他には何があるだろうか?
せっかく異世界に来たんだから街も見て回りたい。
なんかちょっとワクワクしてきたな。
あとは―――――
「っと、その前にトイレ、トイレ」
皆も寝る前には一回いっとくんだぞ!
あ、でもこの屋敷のトイレの場所ってどこなんだろ?
「まぁ、その辺のメイドさんはまだ起きているだろう聞けばいっか」と独り言をつぶやきながら扉を開ける。
ガチャリと音を立てて開いた扉の先には――――――――。
「どこへ行かれるのでしょうか」
―――――――金髪碧眼のメイドさんだった。
数秒メイドさんと向かい合った後にそっと扉を閉める。
ええええええええ!?もしかしてずっとそこにいたの!!?
そう考えるとますますさっきの仮説の線が濃くなってくる。
俺が固有魔術を使えると知って手元にはおいておきたい。でも今までのしがない旅人とは違うから何か危険なことはしないように監視は付けておきたい。
といったところだろうか。
にしても部屋の前で立ってるかな?普通。
某半島の北側の国を思い浮かべながらも怖くて外に出られなくなってしまったので今日はこのままベッドにもぐりこむことにする。
ちなみにパジャマは今日外で寝っ転がってしまい埃にまみれていたので洗濯してもらうことになったので今日はローブの下に来ていたセーター(?)にシャツを合わせたような格好で就寝だ。
なんだかここでうまくやっていけるか不安になってきたよマミー。
とにかくその日は真顔で扉の前に立っているメイドさんが夢に出てこないことを震えながら祈って眠りについた。
自分の部屋の前に常に誰かが立ってるって考えるとちょっと怖くない?
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