表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界にて魔術家庭教師に再就職しました。  作者: 時雨
異世界転移編
10/33

初めての創造

屋敷から歩いて約40分。

例のミレニア草原に到着していた。

ほんとに何もないただただ草原だ。

ここに来るまでにフィーネと話して驚いた。

フィーネはあの館のメイド長をしていて、魔術も使えるらしい。

何でもあの館にはフィーネ、アイセア、それにもう一人魔術を使える人がいるらしい。

領主なのだからその土地の有用な人材は放っておかないのはまぁ当然と言っては当然なのだが、3人も、ではなく3人しかいないというのに驚いた。

やはりそれだけ魔術師は貴重な存在ということらしい。



「では始めさせていただきます」

「ば、ばっちこい」



今俺はフィーネに魔術の手本を見せてもらっている。

いざ魔術を使ってみよう―――と思ったのだが、よく考えたらそもそも魔力とやらの使い方がわからないことに気づいた。

我ながら間抜けだとは思うが、そこは優しく温かい目で見守っていてほしい。



「魔力とは体の中を流れている力のことです。詳しくは解明されていませんが、一説によると血液と一緒に体の中を循環しているとも言われています」

「ほうほう」

「体の中の流れを手のひらに集めるようイメージし、魔術の名前を口にすることで使用することができます」

「ふむふむ」

「では実際にやってみましょう。『ファイヤーボール』」



魔術の名前を口にすると彼女の手のひらの中にボウッと火球が現れる。



「おおおお!!すごいな!これが魔術か!」



目の前でまるでゲームやアニメのような光景が起きたことに感動を覚える。

これを自分がやれると思うと早くやってみたくて体がうずく。

ようやく今まで何となく異世界だなーと思っていたのが、異世界なんだとはっきり認識できた。



「では、実際にやってみてください」

「おう!」



手に力の流れが集中するようにイメージし、火球が手に出てくることもイメージする。

俺の魔術ならきっとさっきみたいな火の玉だって作り出せるはずだ。

手のひらを上に向け、「むむむむ…」と力を込める。

すると何か体の中に感じたことのない流れのようなものを感じた。



もしかしてこれが魔力の流れか?

そう思ったとき。



――ボウッ



「お?」

「流石ですね。まさかやり方を説明して一回でできるとは思いませんでした」



手のひらには先ほど見たものと同じくらいのサイズの火の玉ができていた。

それを見た瞬間に全身をアドレナリンが駆け巡るような興奮を覚える。

どうやら俺が一発でできるとは思っていなかったのか、出会ってから先ほどまでずっと続いていた無表情が少し崩れて口を開けて驚いていた。

逆に魔力が散っていくイメージをするとフッと炎は消えた。



「やった、魔術を使えた!」

今までことあるごとに「もし魔法や魔術があればいいのになー」と口にしてきた者にとってこれ以上の感動はないだろう。

しかし、感動に打ち震えるのも早々に新たな考察を立てていた。



もしかするとあの『深く理解している』定義はそこまで細かくはないんじゃないだろうか。



次はもう少し違うものを作ってみることにする。



「よし、"アレ"にしよう」



中学二年の闇の時代。

あの時の古き遺産がこんなところで役に立つことになろうとは。



本体の材質は当然鉄だよな…後はそれから―――。







正直に言って驚いた。

きっと今日丸一日掛けてようやくできればいいほうかと思っていたが、まさか一回で私と同じサイズの『ファイヤーボール』を作り出すとは。

しかも一度も『ファイヤーボール』と口にしていない。

流石は固有魔法の使い手といったところだろうか。

本来であれば最初に出てきたとしても小さなろうそく程度の明かりだ。

そこから魔力の使い方に慣れていき、段々とそれに応じて炎の大きさも大きくなっていく。

本人も驚いている様だったので、どうやら本当に初めて魔術を使ったらしい。

レベルは1だと聞いていたが、レベル1でこれならレベルが上がればどこまですさまじくなるのか皆目見当もつかない。

この方ならもしかすると――――。







手のひらの中で青白い粒子が渦巻き、俺の想像していた物が形になっていく。



「よし!やっぱりだ!」



俺の手の中には日本人なら誰でも知っている武器。

そう『日本刀』があった。

そしてあの定義も何となく理解できて来た。

あれはあくまで組み立て方を知っていなくてはいけないだけなんだ。

例えば、ここに組み立て前のプラモデルがあるとする。

それを順番に組み立てて行けば結果的にプラモデルが完成する。

しかしそれを組み立てるのにプラモデルがどんな成分で作られているかを知る必要などはない。

まさしくチート魔術だった。








「つ、つかれた…」

「大丈夫ですか?そろそろ休憩にしましょう」



あの後刀の鞘を作ったり炎以外にも水や氷、風なんかも作れることを試した。

ほんとに何でもありだった。

ただ、夢中になってアドレナリンのせいで気づかなかったが、想像以上に体がだるくなっていた。

魔力を消費しすぎたからだろう。

鞘に納めた刀を杖にするようにフィーナがいる木陰まで歩いていく。

頭がふらふらする。

二日酔いをひどくしたような症状に見舞われる。

木陰にたどり着く前に力が入らなくなってきた。

どうやらレベル1のくせに無理をしすぎたらしい。

くらりと体が傾き、そのまま意識は闇の中へと落ちて行った。


物語始まってから魔術使うまでちょっと長かったかな?


ブックマーク・評価もよろしく!ヽ(´▽`)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ