スライムキラー
心地よいそよ風が頬を撫でる感触で目を覚ます。
体のだるさはだいぶ抜け、少し気分が楽になった気がする。
どうやら魔力、MPは時間とともに回復するようだ。
これで何かアイテムを使わないとずっとこのままですなんてことになったら大変困る所だったが、そんな酷な仕様ではなかったらしい。
「お目覚めですか?」
「あぁ、なんとか。もしかしていきなり倒れちゃった?」
「はい。魔力が枯渇して気を失ってしまったようでしたのでここまで運んでまいりました」
思い出してみると確か俺は木陰を目指している最中に倒れたはずなのだが、今は木陰の下に入って寝転んでいる。
どうやらフィーナがここまで運んできてくれたようだ。
「迷惑かけたみたいでわるいな」
「いえ、カグヤ様のお世話を仰せつかっておりますのでこの程度のことは当然です」
「というかフィーナはメイド長じゃなかったっけ?こんなとこで俺に付き合ってて館の方は大丈夫なの?」
「問題ありません。私がいない程度で機能しなくなるような軟な指導はしておりませんので」
「そ、そっか」
どうやら彼女は仕事のできるメイドなだけでなく他のメイドたちにとっては鬼教官だったらしい。
恐らくフィーナはイグニスの命令で俺についているのだろう。
それなら俺が逃げ出そうとする、あるいは襲い掛かってもそれを撃退等できる実力があると思われる。
もし仮にこの予想があっているなら俺としても好都合だ。
さっきから視界の端に映っている"アイツ"に挑戦もしてみたいしな。
予想以上に強くて俺がぼこぼこにされたとしてもフィーナが助けてくれることだろう。
ちょっと情けないけど…。
「あれってやっぱり―――スライムか?」
「ご存じだったんですね。あれはこの一帯に生息している魔物の一種。スライムです」
先程から自分たちのいる木陰から少し離れた草原に水色の半透明なぶよぶよが蠢いているのが見えていた。
某超有名RPGのように定まった形があるわけではなく本当に昔理科の実験なんかで作ったスライムが意志をもって動いている様な感じだ。
目や鼻のような器官があるかどうかはわからないが感知能力はそこまで高くないらしい。
相手は一向にこちらに気づく様子はない。
フィーナの落ち着き様を見ているとやはりこちらのスライムもそこまで警戒するべき相手ではないらしかった。
「ちょっと戦ってきてもいいかな?」
「はい。かまいません。ですが、昼食はどういたしますか?」
フィーナの手にはバスケットがあり、その中にはおいしそうなサンドイッチが並んでいた。
どのサンドイッチも俺に食べられたそうな顔をしている。
食べ物を目の前にしたせいか腹の虫が途端に鳴き始めた。
「あ、あはは。じゃ、じゃあいただいてから行ってきます」
ちなみに具材はいろいろあったものの、どのサンドイッチも大変おいしゅうございました。
「さてと、じゃあおなかも膨れたし。行きますか!」
軽く準備運動も済ませてスライムに近づいていく。
最初から接近戦はちょっと怖いな…。
となるとやっぱ魔術か。
あれ?でもそういやさっきは手のひらに火の玉出したけど飛ばし方わかんないぞ?
まぁ、どうにかなるだろ。
―――――――たぶん。
スライムからの距離は大体3メートルといったところだろうか。
手を前に突き出し、火球を作り出す。
先程何度かやってイメージや感覚をつかんできていたので今度はすんなり出すことができた。
ここからどうするかだよなぁ。
どうすれば飛ぶかな?
「飛べ!」って念じてみるか?
何となく火球が手のひらから離れて飛んでいくイメージを思い浮かべる。
すると手のひらにあった火球がまっすぐスライムに向かって飛んで行った。
ボフン!と音を立ててスライムに火球は衝突し、スライムは1メートルほど吹き飛んだ後に青白い粒子になって消えて行った。
「なんか飛んだんだけど…」
それからは魔術を自分の手元から飛ばすことの味を占め、楽しくなってそこら中のスライムを狩りまくってしまった。
気づいたときにはもうすでに遅く、見渡す限りどこにもスライムはいなくなってしまっていた。
それに気づいて少し焦ったのだが、魔物は自然発生するらしくむしろ魔物退治は領地に貢献することなのでよかったらしい。
もしスライムが絶滅してしまったらどうしようとか思ったが、俺が今日一日で絶滅させられるようならもうすでにここら一帯に魔物はいなくなっているはずだ。
なので今日のところはスライムたちには悪いが俺の経験値が溜まったのでよしとすることにした。
帰るころにはもうすでに日は傾いており、西の空が夕焼けに赤く染まっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「はい。それにしても記憶をなくされていたというお話でしたが魔術の使い方は覚えていらっしゃったのですか?」
「いや、フィーナに教えてもらって初めて使ったような感じ…かな」
異世界を、というかレベリングを満喫していて忘れていたが、今俺は記憶喪失設定だったのだ。
「そうでしたか。初めてであれほどまでに魔術を行使できるとは、恐れ入りました」
フィーナがぺこりとお辞儀をする。
たぶん俺のこの固有魔術のおかげだが、もしかしたら今日パッと出来たのはこの世界の常識ではおかしかったのかもしれない。
「ま、まぁイメージ力にはちょっと自信あるしね!」
「もしかしたら記憶をなくされる前のカグヤ様は高名な魔術師だったのかもしれませんね」
「そ、そうかなぁー、は、ははははは!」
フィーナのお世辞に苦笑いで誤魔化す。
イメージ力が豊富なのは日夜ゲームやアニメの妄想にふけっていたからなんて口が裂けても言えない。
ここでそういえばと存在を忘れていたものを思い出した。
ポケットの中を漁り、指先にコツンと当たるものを見つけて取り出す。
出てきたのは長方形のカード。
ステータスカードだ。
「レベル上がってるといいんだけどなー」
期待を込めてステータスカードを確認する。
あれだけの数スライムを倒して途中倒れなかったのは恐らくスライムを倒している最中にレベルが上がり、魔力が回復したからだ。
それをかんがえると最低でも2レベくらいは上がっていても良さそうなものなんだが。
カグヤ・アマクサ
レベル:5
年齢 :22歳
性別 :男
種族 :人間
職業 :
魔術 :創造者
称号 :創造者・降り立ちし者・惰眠・守銭奴・スライムキラー
どうやら予想以上にレベルが上がっていたらしい。
まさか今日一日でレベル5になることができるとは思ってもみなかったのでこれはうれしい誤算だ。
もし魔力の増え方がゲームで言う所のMPと同じなら、これで恐らく魔力の総量も増えたことだろう。
よしよし、と予想以上に今日の収穫を喜んでいると何やら気になるものを見つけた。
「ん?なんだこれ?」
なにやら魔術の欄にある創造者がうっすらと発光しているようだった。
何か出るかと思い、詳細を調べたときと同じように創造者をタッチしてみる。
すると昨日はなかった文章創造者の説明の下に浮かび上がってきた。
インプット
触れたものの構造を読み取り、創造できるようになる。
読み取る際にも魔力を消費する。
魔力消費の条件は創造するときと同じである。
それがレベルが上がったのかスキル熟練度のようなものなのかはわからないが、2つまで解放されたらしい。
なんだこれチートじゃねえか。
今までも十分チートだと思っていたが、更にチートに磨きがかかったな。
いくら何でもチートすぎだろ。
あまりの便利さに使っている俺自身も苦笑いするしかない。
どうやらこの世界はまだまだ俺を楽しませてくれる要素が満載のようだった。
ちょっとやって見たいことができたな。
明日の予定を考えながらにやりとほくそ笑む。
明日も楽しい一日になりそうだ。
ちなみに最初に作った日本刀は持って帰ってきている。
炎や風とは違い、うまく消すことができなかった。
これは作ったものの複雑さが原因なのか、刀が消えていくイメージが俺の中で固まらなかったせいなのかは定かではないが、これについてもこれから探っていく必要があるだろう。
ブックマーク・評価もよろしく!ヽ(´▽`)/




