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異世界に来たが、どうやら俺の武器は炊飯器らしい  作者: みっトン
第二章 炊飯器でダンジョン攻略するのは間違っているだろうか
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第二章6 『亜のダンジョン』

――亜のダンジョン――


「……炊飯器でダンジョンを攻略するのは間違っているのだろうか」


「どうしました? リョウさん」



 リョウ達はタイトの姉に言われた通り、竜の涙と許可証を交換して貰う為、亜のダンジョンに来ていた。



「さッさと行こうぜ! 急いでんだろ?」



 もちろんタイトも同行している。

 竜の涙を無事に見つけることが出来れば、町を出て行っても良いと姉から言われたのだ。



「そうですね……リューシャさんも心配ですし……」



 リューシャは残念ながら、度重なる負傷によってダンジョン攻略には参加しない。

 亜のダンジョン攻略は、リョウ、セティア、タイトの三人パーティーで行うことになっている。



「……入る前に、一つ」


「はい?」


「亜のダンジョンって何!? つーかダンジョンとかあるんだこの異世界!?」



 てっきりダンジョンの概念はこの異世界に存在しないと思っていたリョウだったが、その予測は間違いだった。 

 

 

 明からにただの洞窟ではあるが、リョウが目を凝らしてみてみると薄っすらと階段の様な物が見えた。

 入ってくれと言わんばかりに松明まで灯されており、見るからにダンジョンっぽい。

 入り口には看板で『二十五階層迄』と書いており、最深部に竜の涙はあるとリョウは考えている。



「亜属性の精霊、オドゥリエが気まぐれで作った場所だと言われてます。ここ以外にも、幾つも亜のダンジョンはありますよ。リューチカ村の近くにもありましたし」



 リョウは亜属性の精霊、オドゥリエの名を聞いたことがあった。

 ボルミアに着くまでの道中、リューシャとセティアに魔法のいろはについて教えて貰ったのだ。

 


「オドゥリエが他の精霊と仲良くない理由、分かった気がする」



 オドゥリエは他の精霊と仲が悪く、その為亜人は亜属性の魔法しか使えないとのことだった。

 仲が悪い理由は、オドゥリエが気まぐれすぎるからだろうなと、リョウは思う。



「他に聞きたいこと無いですか?……と言っても、私も入るのは初めてなので……」


「俺も今まで町から出た事ねーからよ! とりあえず入ッてみようぜ!」


「まぁ、出られねぇ訳じゃねぇだろうし、入るか……タイト、戦闘は任せたぞ」


「おうよ!」


 

 リョウは基本的に楽をしたがる人間である。

 バトル脳のタイトが居る中、自分が率先して戦おうとはまず思わない。

 もちろん戦う覚悟は出来ているが、あくまで切り込み隊長はタイトに任せる予定だった。



 三人は亜のダンジョンに入っていった――




――亜のダンジョン・地下一階――



 ジメジメした湿気の多い洞窟内は、まさにダンジョンそのもの。

 岩で作られたダンジョンで、壁には所々苔やキノコが生えている。

 広い空間、狭い空間、長い一本道、しばらく一階を探索したリョウが出した感想は、



「まるでランダムダンジョンだな……」



 自動生成系のダンジョンの特徴と、このダンジョンは全てが当てはまっていた。



「炎刃!」



 タイトがスライムに斬りかかる。

 スライムは倒されると、十ゴールド硬貨に変化、極稀に薬草や魔法石が変わりに出現。

 これは他の魔物も同じだった。



「ゴブリン、蟻みたいなの、スライム……どれも雑魚系。階層が深くなるにつれ、強くなっていくのがセオリーだが、まぁタイトなら大丈夫だろ」



 最初の階層という事も有り、出現するモンスターはどれも強いとは言えない。

 これなら俺も戦うかと思ったリョウだったが、モンスターが出る度にタイトが斬りかかるので、その僅かな戦闘意欲が役に立つことは無かった。



「リョウさん、あの階段……」


「お! あれ降りれば次の階行けるぞ! タイトー! 次行くぞ次ー!」


「おうよ!」




――亜のダンジョン・地下二階――



「おい! オニギリ出たぞオニギリ! 食ッていいか!? めッちゃ腹減ッてんだ!」


「いや、俺の考えが正しければ限界まで食料は……っておい!」



 リョウの発言を無視し、タイトはモンスターから変化したオニギリを食べていた。

 リョウが知っているダンジョンであれば、空腹システムは間違いなく存在する。

 空腹が限界を超えると体力が歩く度に減っていき、最終的には死んでしまうシステム。



「うッま! 米うッま!」


「……」



 タイトには、自制なんてものは存在しない。

 


「ふゥー、ウマかッた! で、何か言ッたか?」


「……何でもねぇよ、ったく」




――亜のダンジョン・地下三階――



「――ディアル」


「わりーなセティア!」


「……」



 掠り傷ではあるが、タイトが初めての負傷。

 ゴブリン二体と戦っていた所、不意の遠距離攻撃によって生じた傷だ。

 階層が進むにつれ、少しづつではあるが敵が強くなっているのをリョウは感じる。

 だがそれよりも、リョウはこの現状に納得行かない。



「……終わりました。気を付けて下さいね」


「おうよ!」


「……」


「どうしたリョウ? 元気ねーじャねーか! さッきのオニギリ食いたかッたのか!? だッた言ッて――」


「ちげーよ馬鹿!……早く行こうぜ、リューシャさんが待ってる」



 リョウは自分の中にある感情が、嫉妬だという事を理解していた。

 だが、それを認めることが出来ない。

 呼び捨てだけで、セティアとタイトが仲良くしているだけで嫉妬を覚える心の弱さを認めたくなかったのだ。



 リョウは足早に階段を探し始める。



「リョウさん……」



――亜のダンジョン・六階――



 ぎこちない雰囲気のまま、三人はダンジョンを進む。

 その雰囲気を全く気にも留めない男が一人――



「火炎連弾!」



 タイトの手から波動と火の魔力が融合した弾が放たれる。



「ゴブゥ!」



 如何にもゴブリンです! とでも言いたげな声を上げるのはもちろんゴブリンだ。

 ゴブリンは火炎弾を振り払おうと、こん棒で迎撃する。



「ゴ……ゴブゥゥゥ!!」



 だがその迎撃も虚しく、タイトの火炎弾によってゴブリンは消滅した。

 そして地面には、アイテムが出現。



「ん? 指輪かこれ」



 ゴブリンが落としたのは、赤色の宝石が埋め込まれている指輪。 

 宝石には幾多の蛇が絡み合うようにして喰いあっている模様が入っており、どこか怪しい雰囲気を纏っている。



「おいリョウ! なんか指輪出て来たぞ!」


「……ん、それ填めんなよ。呪い罹ってたらろくな事に――」


「わりィ! もう填めた! カッコ良くね!?」



 そこまで言ってタイトは――



 リョウ達の目の前から、消えた。




――――


――


――亜のダンジョン・地下?階――



「どこだここ!?」



 タイトのダンジョン物語が今、始まる。

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