現れたカナリア。そして最終話
ドズがブローチと布をプレゼントしてくれてから1週間が過ぎた。
ワンピースもブローチも、状態保存の魔法と汚れを弾く魔法をかけて、大切にしている。
普段は狩りや余所者とのバトルで血を被ることがあるので、特別な日だけに着る事にした。
ドズからの贈り物以来、少し二人の距離が縮まった気がする。
フェンリーなんて
【新婚の夫婦みたいだな。ワシ、邪魔か?しばらく旅に出た方が良いか?】
とか言ってて、驚かされた。丁重にお断りした。
今、二人にされたらお互いが意識しちゃってギクシャクしそうな気がするもの。
ドズも同じ反応だったらしい。
フェンリーが【お前もか】って笑ってた。
そして、今日。
ドズの服を買いに街へ行くことになった。
本当は次の商隊が来るまで待ちたかったんだけど、フェンリーがドズ相手にふざけて爪を引っかけて服を破いたのだ。
一応、状態保存の魔法をかけてはいたが、私がかけた魔法だったので、私より強いフェンリーには何の効果も無かったらしい。
幸いにもドズに持たせていたフェンリーの鱗が防御魔法を発揮し、ドズに傷は付かなかった。
もし、傷が付いていたら、私からフェンリーへの一方的な攻撃が丸一日繰り広げられただろう。
よって、ドズが所有していた唯一まともな服は
背中がギザギザに裂かれた斬新な服になった。
今、街に行くために、毛皮で作ったベストを服の上から着て誤魔化してはいるが、ダサい。
マッチョなもっさいオッサンが
シャツの上に毛皮のベストを着ている。
どこのマタギさんですか?銃はお忘れですか?
って状態だ。
なのに、腰には剣。
違和感が半端ない。
更にシャツはよれよれ。ベストとの色が全く合ってない。
ダサい。もの凄くダサい。
ドズもフェンリーも【あ、この格好はねぇわ。】
と呟く様な格好だ。
だが、だがしかし。
なんでか胸が《キュン》とする。
何故だ。何故なんだ、私。
なんで、こんなにダサい格好をした、もっさいオッサンにキュンキュンしてるのよ!
ちょっと困った様に眉をハの字にしてるのが可愛いなんて!
ダサくて似合わないのが、なんだか可愛いなんて!
この格好で街に入るのか・・・。なんて落ち込んでる姿が可愛いなんて!
どうなってるのさ!
恋する乙女はオソロシイ!!
落ち込むオッサンと、気の毒そうなドラゴンと、必死に己と戦うオーク。
全員が平常心に戻ったのは一時間後だった。
「あー、それじゃ、そろそろ行こうと思う。サユ、護衛をお願いしても良いか?」
申し訳なさそうなドズだけど、一人で行かせるなんて選択肢はない。
当然。私は護衛する気満々だ。
そう告げようとしたのに先にフェンリーが答えた
「うむ、そうだな。サユ、折角だからあの魔法で一緒に行ってやれ。1日位なら何の問題も無かろう?ドズに商品が売ってもらえるか分からんし。何か問題が起きたらワシが対応してやる。だから楽しんでこい。」
あの魔法ってあの魔法?
別に使うのは構わない。
魔力を大量に消費するけど、丸一日位なんともない。
でもなぁ。あの魔法にドズが慣れてしまうのは嫌なんだけどなぁ。
でも確かに、ドズに嫌がらせで商品を売らない馬鹿もいるかもしれない。
と悩んでいるとドズが不思議そうな顔でこっちを見ていた。
その顔も可愛いな、オッサン。
「あー、んじゃ、ちょっと着替えてくる。待ってて。」
結局、あの魔法を使うことに決めて
困惑してるドズを置いて私の部屋に戻り、ドズがくれたワンピースに着替える。
勿論、ブローチも忘れない。
そして、あの魔法。
オークの私が人間と同じ姿になる魔法。
縮まる背丈に手足、頭部に伸びる金色の長い髪、皮膚も普通の人間と同じ肌色に。
自分で言うのもなんだけど、美人だと思う。
中身はオークだけどね。
大切な事だから、もう一度言っとくね?
我ながら、人間基準で考えてかなりの美人だと思う。
オークだけどね。
ちなみに、ワンピースと下着は体型に合わせて魔法で小さくしてあるから問題ない。
この姿になるのは久しぶりだったから少し不安だったけど、歩くのに違和感もないし、大丈夫みたいだ。
「どうかな?この姿でも変じゃない?街で歩いても平気かな?」
ドズとフェンリーの元に戻り、問いかけてみる。
すると
ドズの眉間に皺が寄った。
は?なんで?
え?え?そんなに似合わないの?
そんな顔をされるほど?
なんでドズに睨まれてるの?
「誰だ お前。なんでサユの部屋から・・・、お前!なんでその服を着てんだ!それはサユの服だぞ!おま、ブローチまで!サユをどうした!サユに何しやがった!サユ!無事か!サユ!」
って必死な形相で私の部屋に走っていったドズ。
マ ジ か!!
まさかの反応に頭が追いつかず、その場に残された私。
爆笑しちゃってるフェンリー。
すぐにドズが戻ってきた。
凄く怒ってる。
今まで一度も見たことがない表情だ。
私を心配して怒ってくれてるんだ。
自分で言うのもなんだけど、今の私は美人なのに。
その美人よりもオークの私を心配してくれてる。
どうしよう。凄く嬉しい。
ヤバイよ!嬉しいよ!
だってさ、普段はヘタレで泣き虫で弱いドズが!
オークの私の為に、美人に激怒してるんだよ!?
女なら、好きな人にそんな反応されたら嬉しいに決まってるでしょう!!
胸がキュンキュンする!
私は赤くなってきた顔をドズに見られない様にうつむいた。
その時
「サユをどこにやった!」
とドズが私の腕を強く乱暴に掴んだ。
止めたのはフェンリーだった。
「待て!ドズ!そいつがサユだ!さっきワシが言ってたのはサユが人間の姿になるための魔法の事だ!驚かせようと、説明しなかったワシが悪かった!すまん!手を離してやれ!」
目を見開き、私を見るドズに
詳しく説明するのを忘れていた事を思い出した
「ごめん!ドズ、私も説明するの忘れてて!驚いたよね?ごめんなさい!
えっとね、私、魔法で自分の姿を人型にすることが出来るの。魔力を大量に消費するから普段は使わない様にしてるんだけど、1日位なら何の問題も無いから。ドズと堂々と二人で出かけられるから人型になったんだけど・・・。オークの姿でいつもみたいに後ろを着いていく方が良い?」
断られたらショックだなぁ。
「サユ?え?本当なのか?サユ?あ、わ、わりぃ!俺、手を!ごめん!大丈夫か!?怪我してないか!?」
正気に戻ったかの様に軽く頭を振ってから、私の手を強く掴んでいた事に気づいて焦りだし、顔を覗き込んできたドズ。
おおう、ちょ、ちょっと、ドズ、近い。近いから。
顔、真っ赤になっちゃうから。
待って。近い。近いよぉ!
「おーい!ワシを無視するな!お前ら、イチャイチャするなら部屋でやれ!部屋じゃないなら、ワシをほっとくな!寂しいから!かまえ!拗ねるぞ!?」
流石のフェンリーさん。
どんな時でも己の欲に忠実です。
この空気の中、入り込んでこれる、その精神力。
流石ドラゴン。
そして、真っ赤になった私達二人。
お出かけする前にこの空気、どうするのさ!?
フェンリー!!
「サユはお前が全力出しても折れるような骨は持ってないぞ。それよりも、どうなんだ?サユがその姿で一緒に行くのを許すのか、オークの姿に戻させるのか」
おお!話を続けてくれた!
2回目は聞きにくかったから助かる!
まぁ、良い雰囲気をぶち壊したのもフェンリーだけどね。
あ、ドズが真っ赤になった。
やっぱり、この姿は美人なんだろう。
「は?え?このサユと二人で?俺と街に?お、おう!俺は、その、構わないんだが、この格好の俺と歩くのか?今のサユが、この格好の俺と・・・?」
あ、確かに。
若い美人とダサいオッサンマタギ。
前世なら職質間違いなしだ。
でも良いだろう。
私が構わないんだから。
「一緒に行きたいから、このままで良い?良いよね?私も布とか調味料なんかも見たいし。ドズと二人でお買い物行きたいもの。良いよね?」
ドズは顔を真っ赤にしながら小さく頷いた。
ああ、可愛い。
怒ってくれてるドズも良いけど、
真っ赤になったドズもやっぱり、良いなぁ。
なんて考えてニマニマしてたら
「だから!イチャつくなよ!なんだよ!この甘酸っぱい感じ!本気で拗ねるぞ!もう良いだろう!行ってこいよ!さっさと行ってこい!」
とフェンリーに洞窟から追い出されました。
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「グスンッ スンッ」
あー。
無事に山の麓まで来たのですが、
ドズが泣いちゃいました。
私、泣かせちゃいました。
でも、しょうがないじゃない?
だってさ、魔物とか道とか危ないし。
ドズの足だと今日中に街まで着かないし。
「ズズッ その姿のサユに担がれるなんて グズッ」
うん。
ごめんね?
私もちょっと思ったよ。
オッサンを担いで山道を走る美女。
ね。ちょっとね。
でも、麓に降りてから姿を変えるのは大変だし。
しょうがないよ!
ドズの男としてのプライドが傷ついたのは、申し訳なく思うけど。
ドズの背中を撫でながら、励まし、お買い物楽しみだなぁ♪とアピールし、ドズの機嫌が直る頃には街が見えてきた。
周りの奴等にちょっかい出されないように、私がしっかり守らないと!
と気合いを入れて、二人で仲良く街へ入っていく。
街に入ったら突き刺さる視線。
小声で【裏切者】とか言ってる奴、聞こえてるからね?
狩るぞ?山には気をつけなよ?
怯えてるドズの手を握って
【大丈夫だよ】
の想いを込めて微笑んで
「ドズ、どこから見る?あっちでドズの服から選ぼうか?こっちの布から選ぼうか?後であのお店も見て良い?」
と聞いてみる。
「あ、ああ!俺の服なら、あの辺だな。布もそっちの店もその後で・・・」
「お嬢さん。時間があるなら俺とデートしようよ。そんな冴えないオッサンはほっといてさ。何でも買ってあげるよ?」
「いやいや!俺だろ!そんな ダッセーオッサンの相手してねーで、俺と遊ぼうぜ!」
おい。お前ら、誰の許可を得てドズの言葉を遮ってんの?
ドズが黙った上に泣きそうな悲しそうな顔してるじゃないか。
腹立つわ。許さないぞ?お前ら。
もしかして、この後もこんなナンパ野郎共に声をかけられるのかな?
そんなの凄くすごーく嫌だ。
ドズとの会話の時間も減るし、楽しくなくなっちゃいそう。
よし!決めた!
ナンパ野郎共に一撃必殺をくらわせてやる!
「ごめんなさい。私達、夫婦なの。私、貴方達より、この人の方がずっとずーっと良いから。悪いけど、折角のデートの邪魔しないでくれる?」
大きな声で言ったし、これで大丈夫でしょう!
夫婦の邪魔する馬鹿はいないだろうし
私はドズとの夫婦デートを楽しめるし
ウハウハだわ♪
って
えぇぇーーーーー!?
なんで泣いてるの!?
ドズ!
なんで泣いてるのさ!?
どうしたの?
「・・れで・・・のか?」
はい?
「俺で良いのか?」
は?
「ズビッ 俺が、サユの旦那になって、夫婦になって良いのか? スンッ サユは俺なんかで良いのか?」
って、涙目でこっちを見られるなんて、誰が想像できますか?
か わ い い
可愛いぞーー!!
オッサン、ヤバイよ!
可愛いよ!!
ナンパ避けと私の欲を満たす為に言った事だったのに、こんな返しをされるとは!!
これ、これってあれだよね?
【夫婦になろう】
って話だよね!?
私の勘違いじゃないよね!?
ドズはオークの私と夫婦になるつもりがあるって事だよね!?
マジかッ!?
自分で言うのもなんだけど、オークと夫婦になるって凄いな!!
凄いよドズ!
そうだ!返事!
返事しなきゃ!
勿論だって!私はドズが良いって!
言わなきゃ!
「ドズ!私、わた・・」
鼻血吹きそうな位、テンションが上がった私の耳に不愉快な声が聞こえた
「あー!いたー!ドズさぁーん!お久しぶりです!カナリアです。覚えてくれてますか?この間はごめんなさい。ドズさんのお仲間さんのお話を聞いて怖くなっちゃって・・・。でも私、気づいたんです!ドズさんが一番好きだったって!あの時は傷つける様な事言ってごめんなさい!」
お前、私の言葉を遮りやがって、このクソあま!
って、待てよ?
【カナリア】って
あの、ドズが惚れてた悪女?
え?は?
なんでこのタイミングで出てきたの?こいつ。
混乱してきてドズを見てみると
口をパクパクさせてた。
どうしよう。
カナリアにドズが取られる。
「ドズさん、宜しければお食事に行きませんか?先日、商隊の方がドズさんから珍しいアクセサリーを購入したって聞いて、ドズさんが生きてるのが分かって、私、本当に嬉しかったんです♪」
なんて言いながらドズに腕を絡ませた。
何それ?
わざわざアクセサリーの話を出したって事は
ドズが卸すアクセサリーが目当てなの?
ドズの事はついでなの?
なんなの?
お前、恥ずかしがりやで手を繋ぐのも断ってたんじゃなかったの?
なんで腕組んでんの?
この女、私に喧嘩売ってんの?
やる?
買うよ?
その喧嘩。
ドズを取られるくらいなら、ボロッボロになるまで口でも腕でも黙らせるよ?
良い?
良いよね?
しかし、喧嘩する気満々だった私より先にドズが口を開いた
「離れてくれ。俺はもうあんたに話すことはない。何かしてやるつもりもない。
なぁ、あんた、俺に触って平気なのか?5年も貢いでた時は離れて歩かせたろう?
なぁ、俺が泣いたらあんたはどうする?俺が魔物に襲われたら?俺がアクセサリーを作ってる人間じゃなかったら?俺がゴブリンだったら?あんたはどうする?」
「は?どうしたんですか?ドズさん。何を言ってるんですか?意味が分からないですよ?なに?なんの話?」
困惑してるカナリアの腕を振りほどき、ドズは私に向かって続けた
「サユは俺が泣いたらどうする?俺が魔物に襲われたら?俺がアクセサリーを作ってなかったら?俺がゴブリンだったら?」
そんなの、決まってるでしょうよ。
「全部問題ない。泣いてるなら背中を撫でて一日中でも話を聞くよ。魔物に襲われたら私が倒す。ぶっ飛ばす。アクセサリーなんて作んなくても良いよ。側にいてくれれば。私が養うもの。ゴブリンだったら?気にしないよ。そんなの。分かるでしょう?・・・・ゴブリンにしては良い男すぎるとは思うけど。」
カナリアが私を睨んできた。
「口だけなら何とでも言えるわよね?ドズさんから好かれたいからって、そんなに必死に嘘をつくなんて!最低よ!」
5年間もドズを騙してたお前が言うなよ!
「黙れ。嘘つきはあんただろう?サユは嘘なんかついてない。皆に見捨てられて、怪我だらけで、弱くて泣き虫でビビりで無一文なダメなオッサンの俺を助けてくれたのは、養ってくれたのは、サユだ!」
おお!
ドズが、こんなにも強く人に言葉を投げるなんて!
感動した!
だが待て!事実だが待て!ドズ!
それだと、私に頼りっきりの最低なクズ男だと宣言してる様なもんだから!!
「・・・・え?」
ほら、カナリアも周りの奴等も引いてるよ!
皆、【マジかこいつ】みたいな顔しちゃってるから!
「サユ!俺と夫婦になってくれ!」
え!?
この空気の中でプロポーズ!?
斬新すぎじゃない!?ドズさん!
パニックになっている私と目を合わせて
ドズは真剣な顔で返事を待ってる。
あー!もうっ!
「決まってるでしょう!勿論よ!私はドズが好きなのよ!ドズに恋してるんだから!
ドズが弱くて泣き虫でビビりなオッサンなのは最初から分かってる!それでも良い!
私はそんなドズが可愛くて、愛しくてしょうがないんだから!
私が一生愛するから!私が一生側にいるから!私が一生幸せにしてあげるから!
だから安心して私に養われなさい!」
ってあれ?
思ってた事を全部言っちゃったけど、
プロポーズの返事としてはイマイチじゃない?
私の内面が全部出ちゃった感じじゃない?
どうしよう。
普通、プロポーズされた女の子って涙を流して喜んで、幸せになろうね!とか言ったり
「ズビッ ありがどう~ザユゥ~!ズゾッ 俺達は夫婦だぁ!幸ぜになろう゛!う゛ぅー よがっだ、よがっだー!」
あ、うん。
私の代わりにドズが泣いてるから良いかな?
にしても
本当に、本当に可愛いオッサンだなぁ。
「ドズ、私、プロポーズしてもらえて凄く嬉しい。ドズと夫婦になれて凄く嬉しい。ドズの側にいられるのが凄く嬉しい。
絶対に幸せにするから。これからもよろしくね、ドズ」
もう、周りの奴等もカナリアも知らん。
さっさと買ってさっさと帰ろう。
「ドズ、夫婦なんだし、手を繋いでも良いよね?
洋服は私が選んでも良い?私の布はドズが選んでくれる?お夕飯、何にしようか?」
ドズの手をとり、恋人繋ぎにしてから、ドズを軽く引きながら歩く私達。
周りは死にかけの魚みたいに口をパクパクしてた。
【お似合い夫婦】
なんて言葉が所々から聞こえてきて、ニマニマしちゃった。
その後、私達は誰にも邪魔されず
手を繋いだまま、お互いの服を選んで
調味料や珍しい魚なんかを買って山へ帰った。
時折、お互いに顔を見合わせては、照れたように笑って。
凄く楽しかった。
凄く幸せな時間だった。
勿論、帰りの山道ではドズを担ぎましたが何か?
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山の洞窟に入ったら、フェンリーが待ち受けていた。
「フェンリー!俺、俺は、サユと夫婦になった!祝福してくれ!」
と全力で告げるドズ。
父親に娘さんを下さいって言う感じなのかな?
凄く緊張してる。
私も手汗が凄い。凄く緊張してる。
フェンリーの言葉を待つ私達に頭上から声が響いた。
「やっとくっついたか。お前ら。おめでとう。
だが、言っておくことがある!
いいか!イチャイチャするのは各自の部屋でしろよ!それ以外はちゃんとワシも構えよ!寂しいからな!分かったか!?じゃないと拗ねるからな!」
と、通常運転のフェンリーさん
『分かってる』
二人同時に発した声にフェンリーさんもご満悦です。
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その後、
商隊の爺がアクセサリーの専門店を出してくれたり、
二人で仲良く街にデートしに行ったり、
ナンパ野郎共をドズが頑張って追い払ったり、
カナリアを筆頭にドズの金に群がろうとする悪女共を口喧嘩で負かしたり、
山にやって来た余所者を排除したり、
フェンリーが風邪をひいて洞窟が火で包まれそうになったり、
そんな濃い日々が続く。
ドラゴンで構ってちゃんな変竜のフェンリー
人間で泣き虫なオッサンのドズ
オークで人間のような山の長サユ
3人で仲良く暮らしていきます。
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「サユ、人間の姿って凄く魔力を消費するんだろう?無理に人間の姿でいる必要は無いぞ?
俺、オークのサユに惚れてるからさ。どっちでも良いんだ。無理しないでくれよ?」
はにかみながら、頬を赤く染めながら言ってくれるドズに、嬉しくて涙が出た。
オークの姿でも良いなんて、普通は言えない。
ドズは私を愛してくれる。
オークの私でも愛してくれる。
あり得ないと思っていた幸せが手に入った瞬間でした。
私はオーク。
旦那は人間。
私は最高の男と夫婦になれました。
お読みいただきありがとうございました。
最初に考えていた方向からドンドンずれて行ったんですが、幸せそうなんで良いですかね。
終わらせ方が難しくて、最後が雑ですみませんでした。