その79 死闘、再び
「グォオオオオオォン!!!」
風王龍は翔の姿を見た瞬間、もう一度咆哮した。
そして腕を振り上げ、こっちに飛びかかってきた。
「優樹危ない!」
その声と同時に、翔が結界を生み出し、俺と風王龍の間に割って入る。
だがその瞬間。
「グオッ!?」
驚いたような声をあげて、風王龍は急に移動方向を変えた。
当たるはずだった攻撃を、やめてまで。
自分から、翔を避けた…?
意味がわからない。
翔には、全然向かっていかない。
・・・ま、それはそれで好都合。
俺は方向転換した風王龍を追う。
そして近づき、刀を振ろうとするが…
「ッ…!」
痛ッ…!
刀を持っている腕全体に痛みが走る。
俺は、思わず腕を見る。
すると、そこには血だらけの腕があった。
そして、今も腕を風が切り裂いていた。
これは…アイツの魔法か。
最初も使ってた。
さっき近づいたときは使ってなかったけど、そんなことはどうでもいい。
やるしかないんだ。
俺が鱗を剥がないと、翔は攻撃できない。
痛いけど…刀を振れないレベルじゃない!
鱗に!刀を!
俺は自分に喝を入れ、もう一度刀を振る。
刀が、鱗に触れたその瞬間。
ドゴォン!
俺は吹き飛んでいた。
視界の端には、鞭のようにしなる尾があった。
「グッ…ハッ!」
遅れて衝撃が来る。
脇腹に思いっきりもらった。
肋骨が軋む。
まずい…
視界がぼやけていく。
意識が…
俺が、意識を失いかけていたとき。
目の奥が、光り輝いた。
「───優樹!」
その声が聞こえた途端、体から活力が湧き出始めた。
痛…くない?
そうか。
翔の治癒だ。
やっぱり、頼りになるな!
俺は、カッと目を見開く。
体を見ると、そこら中にあった傷は、大半が塞がりかけていた。
さすが!
俺は、一瞬で立て直す。
空を蹴り、吹き飛ばされた方へと向かう。
が、俺は甘かった。
「・・・はッ!?」
いつのまにか、目の前にアイツがいた。
たしかに移動してきたはずなのに、そこに現れたようにしか見えなかった。
咄嗟に刀を振る。
ガッギィィィ!!
刀は、爪で受け止められた。
そこから、動かない。
押し負けない。
でも、押し勝てない。
どうする?
下手にここで動けば…
・・・いや、ここで動いた方が面白い!
相手の虚をつけるかもしれないしね。
刀を引く。
風王龍が驚きつつも前足を振り抜くが…
俺はもうそこにはいない。
重力磁場で下に回避!
で…また上に跳ぶ!
龍の腹部に迫った俺は、刀を上段に構える。
フルパワーで!
鏡鱗を突破してみせる!
刃烈波!
俺は、刀を振り下ろした。
ガギャァン!!
刀から出た斬撃と刀そのもの、それと鏡鱗の反発力が拮抗して不快な音を発する。
これならいける!
俺は刀を鞘に直した。
そして、勢いよく抜き放った。
抜刀!
ドバッガァァン!!!
鏡鱗は砕け散り、肉を切る感触が、刀に伝わる。
血の匂いが周囲に溢れ、視界が赤く染まる。
・・・よっしゃあ!
俺の行動は素早かった。
刃烈波から抜刀までの連携、それを一瞬で終わらせたのだから。
それでも、それは風王龍が動くのに十二分な時間だったみたいだ。
風王龍の腹部に、淡い緑色の魔力が集まっているのは、わかっていた。
だが刀を振り切った今、移動する余力はない。
目の前で竜巻ができていくとしても、俺はなにもできなかった。
その竜巻が、俺に向かって発射されようとしたその瞬間。
ドゴォォォン!
別の場所で、爆発音が聞こえた。
「グオォ!?」
風王龍は声を上げ、その場から退く。
少し見えた龍の体からは、黒い煙が上がっていた。
そしてその近くに、翔が飛んでいた。
翔か!
助かった!
今、あいつは引いてる!
このタイミングに攻めきれないと、もっと警戒される!
そしたらジリ貧で、負ける!
ここで終わらせる!
俺は空を走って、龍の首へと向かう。
これなら追いつく!
俺は重力磁場を使い、加速する。
そして、刀を腰に構えた。
一閃!
一瞬の間に龍の頭上まで小さな影が移動し、刀が首の表面を這う。
バリッ!バリバリバリィンッ!!!
鱗が割れ落ちる音が響く。
俺は、そのまま落下して首を断とうとするが…
視界端に、またこちらに向かってくる龍の尾を捉える。
どうする、避けるか?
これ以上の負傷はまずいもんな…
仕方ない。
俺は体勢を整え、刀を構え、下からくるはずの攻撃に備える。
すると…
炎の槍が、俺の斜め下に現れる。
その槍は、鱗が削がれた首へと向かう。
俺へと向かうはずだったあの尾は、槍を迎撃する。
そして、龍はそのまま離れていった。




