その52 おかーねーがーほしーいー
これからの投稿時間を23時に変更したいと思います。
理解してくれるとありがたいです。
あれから、しばらく経った。
最近はずっと働き詰めで、依頼を受けまくって過ごしてた。
疲れて疲れて、でも、じんわりとお金が貯まってきた。
それでも…
「お金が足りなーい!」
武器屋で値段を聞いて、首を横に振りそうになった翔をなんとか宥めて、説得して武器の改良をやってもらってるんだけど…
ここで暮らしてきて気づいた。
金貨三十枚は、さすがに高すぎる。
まず、この世界の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨がある。
銅貨百枚で銀貨一枚、それと一緒で銀貨百枚が金貨一枚。
で、見てもらえばわかるように、一食に銀貨二枚ぐらいかかる。
それで結構いいものが食べられる。
ステーキとかね。
感覚的には…大体銀貨一枚が五百円から千円ってとこかな。
つまり金貨は五万から十万。
それが三十枚?
仮に銀貨が五百円でも、百万円以上かかるってことだぞ!?
無理無理無理!
異常だよ。
・・・いや、その値段以上に難しいことなんだろうけど…
そんな大金、低ランクの冒険者が集められるわけがない。
ぶっちゃけ、頼んだことを後悔し始めてる。
だってさ!
いくらいつでもいいって言われても、お代は早く払うのが筋じゃん?
大量値引きしてもらってる上に、武器屋のおやじの生活がかかってる訳だしね。
だから、一週間以上、死にもの狂いで集めました。
どれぐらい貯まったと思う?
正解は…
銀貨七十枚!
もうね、絶望しました。
依頼を片っ端から受けて、寝る間も惜しんで集めて、銀貨七十枚!?
頼んだことが悪いわけじゃないけど…
もうちょっとお金を貯めてからやるべきだった。
なんか、ガッツリ金を稼げる依頼とかないかな…
まあいいや。
ずっと宿にいても始まらない。
ギルド行こう。
翔は…もう行ったのかな。
ついでに探すか。
ギルドに到着し、掲示板に目を通し始める。
今、俺たちのランクはD。
つまり受けられる依頼はCからEランクの依頼まで。
ランクは上に行けば行くほど報酬が上がるから…
Cランクの依頼を中心に探す。
ランクも早く上げないとな…
依頼受けていけば上がると思ってたけど、まだ上がってないからなんか別の条件がありそうなんだよな。
そんなことを考えていると、いつのまにか隣に二人組がいた。
そいつらは何か話をしているみたいで、俺の意識も誘われた。
「───で、結局おまえはどうするんだよ。」
もう盗み聞きも慣れたもんだ。
これが一番効率がいい情報の集め方だからね。
「冒険者杯のことか?たしか、無条件ランクアップと、優勝賞金で金貨五十枚だろ?夢あるよなぁ…」
!?
「なら、出るのか?」
「いやぁ…聞いたところには、その大会…絶対王者がいるんだろう?」
「らしいな。俺はそれで諦めた。圧倒的強さ、SSランク並の力があるらしい。」
「凄まじいな…そんなこと知ってたら誰も参加者いないだろうな。」
「いや、案外───」
まだ話は続いているようだが、俺は聞くのをやめた。
それ以上は、もう必要なかった。
は?
なんだって?
賞金、金貨五十枚!?
ちょっと待て…
一、十、百…
少なく見積もって…二百五十万円!!?
とんでもない額だぞ!?
どんな大会なんだよ…
そう考えつつも、俺の頭の中にはそこに行く以外の選択肢はなかった。
いや、そんなことより、早く翔に伝えないと!
「───ってことなんだ。」
「・・・。」
翔は黙って、考えこんでいる。
俺は、今すぐその冒険者杯に参加したい。
理由もある。
すぐに金がいるし、ランクも上げたい。
一石二鳥だ。
翔もそれがわかってるから突っぱねないんだ。
「・・・やっぱり、ダメかな…?」
ただ、だからと言ってなにも考えず翔が承諾することなんてまず無いけど。
まずは、どこで開催なのか。
そして、何をするのか。
さらに出場条件、いつ開催かなどなど。
色んなことを事前に調べて、その上で慎重に決めるはずだ。
今まではそうだった。
前世でもね。
言っちゃうと、正直判断が遅い。
その分、熟考できるから成功率は高いけど、考えすぎて間に合わないこともある。
それが翔。
だから簡単に行けるはずが───
「わかった。調べて、すぐ行こう。」
あれー?
「ついたー!」
「ここが…」
「「コルバン!」」
ハモった。
いやー、早かったね。
俺が情報をゲットしたその日に出発したもんな。
翔に伝えて、すぐに調査を始めた。
それで、冒険者杯は、冒険者のための戦いの大会的なものだと判明。
コルバンという都市で開催されて、毎回豪華な優勝賞品やらがあるそうな。
で、ルート調べて、歩いて、野宿して、また歩いて…今。
翔の判断が早すぎた。
これには某天狗面さんもニッコリ。
珍しいよな…
翔なりに色々考えた結果なんだろうけど、なんか違和感。
まあそんなこと考えてもしゃーないし。
さっさと出場手続きしたいな。
どこが会場なんだったか…
たしか、一目でわかる、って…
・・・まさか、これのこと!?
俺の目の前には…
巨大な円状の闘技場が鎮座していた。
石壁が陽を反射して、白く輝いていた。
でっか…!
これ、何メートルぐらいあるんだ…?
下手したらキロ単位であるんじゃ…?
こんなところで戦えるなんて…
最っ高じゃないか!
俺は、ワクワクしながら翔に問う。
「会場ってここかな?」
「たぶん、そうだと思う。受付してくるか。」
「おう!」
・・・なんか見覚えあるな、ここ。
なんだろう。
前世で見たことあるような…
ヨーロッパの方のなんか…
コロッセオだったか?
それにすごい似てる気がする。
教科書で読んだような…
うろ覚えだからわかんないけど。
そんな考えを一度消し、深呼吸をする。
さあ、ここで戦って、勝ったら大金!
今までの成果を見せてやる!
頑張るぞ!




