その49 勘違いは、稀に悲劇を生む…かも
「ふあぁぁあ。」
俺は大きく伸びをしながら起き上がる。
うーん、いい朝だ。
こんなにいい朝は久々かもしれない。
やっぱりベッドはいいね!
ぐっすり寝れる。
ここから出なきゃいけないのが惜しい。
俺は布団から出て、外出の用意をする。
そういえば翔いないな。
もう起きてどっか行ったのかな?
下行って探すかぁ…
俺は部屋を出て、一階へと向かう。
すると、いくつかテーブルが出されていて、朝食を食べている人たちが見える。
そのうちの一つに…
「翔!おっはよう!」
「起きたのか。おはよう。」
翔がいた。
やっぱり先に起きてたか。
ごはん食べてる。
美味しそう…
俺も翔の前に座り、話しかける。
「それ、どこでもらえるんだ?」
「ここに座ってたら持って来てくれたぞ?たぶんそろそろ…」
コトッ
「朝食です。ごゆっくり。」
「ほらな?」
俺の目の前に、美味しそうな食事が置かれた。
その内訳は…
まずパン、久しく食べてなかった。
普通に美味い。
次に肉…たぶん干し肉かな?
食べたことないけど…
そもそも肉なんだ。
まずいはずもなし。
最後にスープ。
豆のスープかな?
食べたことあるような、ないような味だ。
おいしい。
てことで。
即完食。
「ご馳走様でした。」
美味しかったです。
さて。
今日は何をしようか。
「この後どうする?」
俺は翔に聞く。
翔が色々情報持ってて、金銭管理もしてくれてるからね。
「今日も、お金を稼がないと。服を買ったせいでそんなに余裕がないんだ。」
「そか。なら依頼受けに行こう!」
「了解。」
やっぱりあれだけの稼ぎじゃ色々買うのは無理か。
もっとたくさん報酬がないと…
いっぱい依頼受けたら稼げるかな?
それとも報酬が高い依頼を受ければ…?
宿から出て、ギルドへと向かう。
その間も考える。
どうしたらもっと稼げるのか。
どうすれば旅行できるほどお金が貯まるのか。
頭の中がぐるぐる回って、色んな方法が浮かんでは消える。
結局、堅実に行くなら───
「───おい、おい!優樹!」
「はっ!なに?」
「ギルド着いたぞ。とっくにギルドに到着してるのに歩き続けるなんて…よっぽど考え込んでたんだな。」
いつの間に…
こんな集中して考えたのなんか久しぶりだな。
飽き性のくせに。
「そうだな…どうやったらもっと稼げるか考えてた。」
「稼ぎ方か…ランクを上げて行くしかないんじゃないか?」
やっぱりそうだよね。
俺もそう思ってた。
「そうだよな…とりあえず今日は、できるだけ依頼受けよう。」
そう言って俺たちはギルドへ入る。
今日も少し視線を感じる…けど、そこまで気になることでもない。
陰口言われてるわけじゃないし。
さ、掲示板は…っと。
えーっと、どれが俺たちが受けられる依頼なんだっけ。
・・・翔に丸投げでいいか。
「翔ー。適当な依頼四つぐらい受けてきてー。」
「え?そんなに受けて大丈夫か?」
「手分けしてやればいいでしょ。そもそも俺たち二人が必要な依頼とかある?」
「たしかにそうだけど…わかった。受けてくる。」
よしよし。
翔もわかってくれたことだし、しばらく待っとこ。
・・・暇だ。
情報収集でもするか?
聞き耳立てるだけだけど。
聴力超増強あるからそれでも十分か。
ザワザワ…
雑音が多い。
付近の会話に集中して…聞き取る。
「あの、ゼロのやつら…デモリニックとやら?がオボルウルフの討伐依頼を成功させたらしいぞ。」
「あいつらが?あの「Dランク詐称」とまで言われた依頼を?」
「ああ、どうやら素材を全部持ってくる余裕もあったらしい。しかも、一匹は変異種だったとか…」
「どうなってんだ…たしか、ゼロ以外のステータスもあったよな?」
「らしいな。ゼロ以外はどうやらSランク並だったみたいだ。」
「嘘だろ?強いわけだ…ただ、ゼロのステータスがあるんじゃなぁ…」
「そうだよな?俺なら即死する自信あるぜ。」
「そういえば、あのチビの方が戦士で、そうじゃない方が魔法使いだろ?」
「たしか…チビは魔法系ゼロで、あいつは攻撃がゼロだったか?人は見かけによらないよなぁ…」
それ以降の話は、俺の耳には入らなかった。
もう、俺の脳はパンパンだった。
うん、なんて???
あの狼の討伐依頼が詐称?
むずいってこと?
そんなことある?
瞬殺だったぞ!
まあそれはいいか。
そもそも俺のパワーならAランクとかでも余裕じゃない?
でよ、変異種ってなに?
強そう(小並感)
でもそんな強いのいなかったけどな…
ちょっとデカくて若干色が違うかなぁぐらいのがいた…かな?
そいつもワンパンだったけどね。
まあたかが知れてるわな。
で?
俺たちのステータスが…Sランク並だって?
おかしいだろ。
一部ステータスゼロとして見られてるんでしょ?
それでもSランクって…
もしかして本来のステータスなら、SSランク並とか?
・・・さすがにないか。
Sランクまでならね、死線をくぐり抜けて鍛えて来たわけだし。
おかしくはない。
でもSSランクって頂点でしょ?
それはないかな。
でも次が一番ない。
俺が魔法使い、翔が戦士だって?
おかしいだろ!
翔みたいに完璧な魔法見たことない!
俺にもできない!
で、俺以上の攻撃力持ってるやつも見たことない!
翔は攻撃力七千かそこらだったはず。
ほんとになんで?
・・・ああ、そうか。
俺は攻撃がゼロで、翔はMPと魔法がゼロなんだった。
ならそう見られても仕方ないか…
でも一回俺たちに戦いを見たら分かると思うけどな…
もしくはもう一回、ちゃんとしたステータスを見てくれれば…
「優樹。」
翔に声をかけられて、振り向く。
「どうした?もしかして受け終わった?」
「そうだよ。もう依頼を終わらせるだけ。」
「そうか…ならさっさと終わらせてこよう!」
俺たちは、ギルドの外に出た。




