その45 冒険者になろう
遅れましたすいません!
その45 冒険者になろう
ガチャ…
扉を開け、中に入る。
「おお…」
思わず声が漏れる。
ここが冒険者ギルド…
ザ!って感じだな。
何組かテーブルと椅子があって、そこには十数人の冒険者だろう人たちが座って会話している。
横に目をやると、掲示板のようなものに、たくさんの紙が貼られていて、興味をそそられる。
奥にはカウンターがあり、そこには受付嬢がいて、一人の冒険者となにか話している。
俺たちも冒険者にならないといけないから…
まずはカウンター、あそこに行かないとかな。
「ふっ、アイツら…なにしに来たんだ?」
「孤児だろ、ほっとけよ。」
「じゃ、アイツはなんだよ!父親か?お父さん、ギルドについて来て〜、ってか?w」
俺たちを笑う声が聞こえる。
隠してるつもりかもしれんが、丸聞こえだからな?
翔も渋い顔をしてる。
まあ、無視無視。
こんなの乗ったら負けだからね。
・・・嘘です強がりました怖いです。
だってぇ…
ちょっとでもなんか言い返したら襲われて見ぐるみ剥がされそうで…
関わらないのが一番だよね。
色々言ってる冒険者たちを無視して、俺たちはカウンターへ向かう。
カウンターではなにかしているようで、空く様子はない。
面倒だな…
仕方ない、大人しく待つか。
暇だし、聞き耳でも…
「───はい、パーティ解散で、お願いします…」
「・・・は、はい、お疲れ様でした。」
パーティ解散…?
パーティっていうと、チーム的な感じか。
それの解散って一人でできるのか?
他のメンバーの同意とかっていらないのか?
うーん、やっぱり聞き耳じゃわからんな。
冒険者になるわけだし、ルールとかも教えてもらわないと。
カウンターがやっと空く。
これで登録できるかな。
「翔。」
「はいはい。」
翔に頼もうとしたら、察してくれた。
頼りすぎか…?
まあ、いいか。
「あのー、冒険者の登録がしたいんですけど…」
「あ、はい。では、こちらの用紙にご記入ください。」
そう、ギルドの受付嬢が言う。
彼女はおそらく元々の俺と同じ種族…マデル族だろう。
角以外に気になる場所がない。
やっぱりマデル族は多いみたいだな。
「・・・優樹、これ見てくれ。」
「うん?」
翔から、用紙を手渡される。
そこには、こんなことが書いてあった。
〆‘$[£“〆’]〆]$,々]£‘€”“々 €][£>_”+,』$〒『.〆───
なんだ、これ…
・・・そうか!
言語理解を持っていても、文字が読める訳じゃないのか。
いや、それがわかってもどうしようもない。
どうしよ…
翔に相談…
「・・・これ、読めない。」
「だよな。すいませーん。この文字が読めないんですが。」
「え、ああ。文字が読めない方でしたか。失礼しました。では読み上げますね───」
【冒険者業務契約書】
本契約は、下記に従い、冒険者と冒険者ギルドとの間で締結されるものである。
一(目的)
冒険者はギルドに登録し、依頼の遂行を通じて報酬を得ることを目的とする。
二(基本義務)
冒険者は依頼の内容を正確に把握し、これを誠実に遂行すること。
依頼遂行中における破壊、損傷は必要最小限に留める努力をすること。
三(報酬)
報酬は依頼達成後に支払われる。依頼に失敗した場合、報酬は支払われず、報酬の三割を依頼人に支払う必要がある。
戦利品は、事前の取り決めがない限り、依頼主の了承を得たうえで発見者の所有とする。
四
冒険者にはEからSSまでの七段階のランクがつけられる。
最初のランクは登録時の測定によって決定される。
ランクは、各ランクの昇格条件を満たした場合、ギルドにて手続きすることで昇格可能。
ランクごとに受けられる依頼が決まっており、二ランク以上の依頼を受けることはできない。二ランク以下も同様。
三回連続で依頼を放棄すると降格される。
五
二人以上の冒険者で、パーティを組むことが可能。
だが、二ランク以上離れた者同士は、パーティを組んではならない。
パーティの解散にはリーダーと、さらにもう一人のメンバーの了承が必要とする。(メンバーが死亡、または失踪した場合を除く)
脱退にはギルドの了承以外必要ない。
六(禁止事項)
各国の法に反する行為。
依頼の妨害、依頼品の横領。
ギルドの信用を著しく損なう行為(例:酔って暴れる、依頼主に金品をせびる、討伐対象と内通する 等)。
死亡を偽装して借金や契約を逃れる行為。
その他倫理に反する行為。
七(危険の承諾)
冒険者は依頼遂行中に生命、身体、精神などに危険が及ぶ可能性を理解し、これを承諾する。死亡、行方不明などが起こった場合、ギルドは一切の責任を負わない。
八(契約の解除)
申請した場合、ギルドから契約を破棄し、脱退することは可能。
再契約の場合は最低ランクからのスタートとする。
本契約に違反した場合、ギルドは登録を抹消する権利を有する。
死亡または「死亡に準ずる状態」になった場合、契約は当然に終了する。
九(特記事項)
ギルドは冒険者のランクに応じ、依頼の選択を制限する場合がある。
SSランクの依頼については、別途誓約書の提出を要する。
本契約内容を理解し、これに従うことを誓約する。
「これで終了です。」
んお?
終わった?
ほぼ聞いてなかった。
まあ翔が覚えてるっしょ。
「ではここにサインを…もしかして、書けませんか?」
「恥ずかしながら…」
「ではお名前を教えてくださればお書きしますよ。」
「…」
翔がこっちに目配せしてくる。
たぶんなんて名乗ればいいか、ってことだろう。
それなら…
「俺が優樹、で、こっちが翔。」
翔も受付嬢のお姉さんも、驚いたような顔をする。
「・・・え?あなたも登録されるんですか?」
「え?はい…?」
「で、では少しお待ちください…」
受付嬢がカウンターの後ろに引っ込む。
それを見て、翔が話し始める。
「本名…言っても良かったのか?」
「大丈夫でしょ、ここに俺たちの元の名前なんて知ってる人いないだろうし。」
「・・・本当に大丈夫か…?」
翔は心配しすぎなんだよ。
そんな難しく考えなくてもいいのに。
そもそも本名だとバレたからなんなのさ。
その名前と俺たちが結びつく訳がない。
俺たちが転生者だって知る人なんかいないんだから。
しばらく経ち、受付嬢が戻ってくる。
「えー、ユウキ様と、カケル様ですね。」
そう言い、彼女は二枚の紙それぞれに俺たちの名前を書き込む。
これで終わりかな?
「それでは…ステータスの測定に移りましょう。」
ん?
ステータス測定?
そんなのあんの?
「どうやってするんですか?」
そう、翔が問う。
「こちらの…分析水晶に触れて、分析、と念じてください。そうすればステータスが浮かび上がりますので、こちらに渡していただければ。」
なるほど。
分析するのか。
分析結果を表示できる道具…便利だなぁ。
鑑定バージョンで作れないかな?
・・・いやいや、今はそんなことより測定だ。
まあ、ステータスにそんな変化なんかないだろうけど。
じゃ、久しぶりに。
分析。
ステータス
HP:5673/5673 MP:4129/4129 SP:6440/6440
攻撃能力:0 防御能力:5713
魔法能力:4078 速度能力:6536
おお。
めっちゃ簡素…って、ん?
んんん!?
待て待て待て!!?
攻撃が…
ゼロ!?




