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前世に飽きた魔王の孫、世界に首を突っ込む 〜退屈だから全部かき回す〜  作者: 暇凡人T
一章 迷宮編

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Y-その5 神聖学園

 颯太と訓練を続ける毎日。

 それが、五年ほど続いた。

 訓練の中で、俺たちはメキメキと強くなって行った。

 ・・・だからだろうか、こんな手紙が来たのは。



 俺は、今日の朝もいつも通り起きて、訓練の用意をしていた。

 そんな時、ふと机の上に手紙が置いてあることに気づいた。

 今の俺に、滅多に手紙なんて来ない。

 珍しいこともあるもんだ、と、俺はその手紙を手に取った。

 その手紙の封蝋の紋章には、見覚えがあった。

 剣と杖が交差して、その後ろに教会のようなものがある紋章…

 たしか…そう、あれはスアンの授業の時…


 「あとは…そうですね、神聖アルテミエ学園についての話をしましょう。」

 「神聖アルテミエ学園?」

 「はい、神聖アルテミエ学園…通称、神聖学園。表向きは、重要で優秀な若者の育成のために各国が協力して作り上げた学園です。」

 「表向き…ということは、裏向きは?」 

 「はい、裏向きは…聖戦教によって作られた、聖戦教のための教育施設。ここからは噂ですが…学園の成績でふるいに掛けて、優秀な人材を聖戦教の内部へ無理矢理に勧誘してるとの話があります。」

 「それは…怖いな…」

 「ですが、聖戦教は勇者の管理組織です。歴代の勇者も神聖学園の生徒だった方が多いです。勇者になるためには神聖学園へ行く必要があるでしょう。なので、ユーリオン様には神聖学園の説明を書いた小冊子を読んでいただきます。それがこちらです。」

 

 その小冊子にたしか紋章が…

 俺は小冊子を探し、紋章を見つけた。

 その紋章は、やはり手紙の紋章と一致していた。

 手紙も神聖学園の紋章だと再確認して、理解した。

 神聖学園からの手紙だと。

 それを確かめるため、俺は手紙を開いた。

 すると、中にはこんなことが書かれていた。



 ユーリオン第三王子殿下


 初めてお手紙を差し上げます。

 私は『神聖アルテミエ学園』で教頭をさせていただいております、エルネスト・カストラールと申します。

 貴殿のご活躍、霜天の山脈をも越え、すでに聖都にも響きわたっております。

 その比類なき強さ、さらなる高みを目指すおつもりはございませんか?

 神聖アルテミエ学園…

 この神聖なる学び舎では、最高の教師陣と、さまざまなことを学び、鍛錬し、さらには精神を鍛えることが可能です。

 私ども神聖アルテミエ学園は、貴殿を特待生として招き入れたいと考えております。

 特待生とは、極めて優秀な資質を持つ者のみが所属を許される、特別クラスに所属する立場のことでございます。

 特待生となれば、学費の免除、入学試験の免除はもちろん、学園内での活躍に基づき、聖戦教の要職への推薦枠も開かれます。

 この機会を、ぜひご一考いただければと存じます。

 何卒、お願い申し上げます。

 

 『神聖アルテミエ学園』教頭 エルネスト・カストラール


 

 その手紙は、俺をその学園へ入学させるための手紙のようだった。



 はぁ。

 俺は…どうしたらいいんだ…

 勇者になるなら行くべきなんだろうが…

 颯太と一緒に居られなくなるなんて…

 ・・・悩んでも仕方ないか。

 訓練に行こう。

 そこで、颯太に相談しよう。

 


 訓練場に着くと、もう颯太が基礎トレーニングをしている途中だった。

 颯太に近寄り、俺もトレーニングを始める。


 「・・・ん?洋平か?おはよう!今日は遅かったな!」

 「おはよう…ちょっと、相談してもいいか?」

 「どうしたんだ?深刻な顔して。」

 

 俺は、颯太に神聖学園から手紙が来たことを話した。

 そして、その内容も。

 ・・・顔を見れなかった。

 怖かった。

 颯太が、どんな顔をしてるのか。

 これから颯太と離れなければいけないなんて…

 何を言われるんだろう。

 何を言われるにしても、俺は神聖学園に行かないといけない。

 ・・・でも、颯太に止められたら…?

 俺は…進めるだろうか。

 覚悟を決め、俺は颯太と目を合わせる。

 そこには、困惑しているような顔をした颯太がいた。

 

 「・・・ん?俺の聞き間違いか?」

 

 そこからの颯太の言葉は、俺の思っていた返答と、全く違った。

 本当に、予想だにしてなかった。

 

 「俺もその学校から、似たような手紙が来たんだが…」

 

 ・・・は…?


 「っぇ…?」


 今まで出したことがないような珍妙な声が出た。

 それほど、その言葉は俺を混乱させた。

 なんだって?

 颯太も、神聖学園から手紙をもらったって?

 しかも、同じ内容の?

 何が起きてるんだ…

 

 「じゃ、じゃあ颯太も一緒に、神聖学園に行けるってこと…?」


 混乱する頭の中、俺はただ一つ、導き出した結論を颯太に言った。

 

 「・・・まあ、行けると思う。親の許可さえ取れば。」

 「はぁああぁぁ…よかったぁ…」

 「なんだよ、そこまでのことか…?」


 そこまでのことなんだ、俺にとっては。

 颯太と、一緒に居られなくなることは。



 そこからは早かった。

 俺は神聖学園に入学する意思をスアンに伝え、準備を始めた。

 神聖学園がある、レーベル聖戦神国首都、聖都セラフィアに移り住む用意を。

 準備自体はすぐ出来た。

 だけど、曲がりなりにも自分の生まれた国から離れる…というか、スアンの元から離れることが怖かった。

 赤ん坊のころから、世話をして、俺のことを守ってくれたスアン…

 俺は、スアンのことを家族のように感じていた。

 離れたくは、ない。

 でも、その時はやってくる。

 同じく準備を終えた颯太と共に、俺は国民に見送られながら、祖国、ウェルネス王国を後にした。

 そして…


 「君たちは、この聖なる学び舎、神聖アルテミエ学園に───」

 

 退屈な新入生歓迎の言葉を聞いていた。

 これは、どの世界でも変わらないらしい。

 前世の記憶が蘇る。

 っと、いけないいけない。

 このままだと次の行動に遅れる。

 

 「これから新入生歓迎会を行いますので、移動を───」

 

 どうやら移動するようだ。

 とりあえずついて行こう。


 

 案内された先は、例えるなら、結婚式場のような…教会のような雰囲気がある場所だった。

 装飾がキラキラとしていて、眩しいまである。

 その空間の奥…


 『特待クラス』


 そう書かれた板の奥に、十人ほどが座っているテーブルがあった。

 俺はそのテーブルを囲む椅子の一つに座る。

 颯太の隣に。

 

 「お、また一人来たか。おまえはなんて言うんだ?」

 

 座っていた内の一人が、俺に話しかけてくる。

 なんだか馴れ馴れしいな…

 初対面だと言うのに。

 一応、質問には答える。

 

 「俺は、ユーリオン・ダルコ・ウェルネス。ウェルネス王国の第三王子だ。」


 全員が、俺の方を見た。

 驚いたような、何か面白いものを見たかのような顔をしている。

 なんだ?何か間違えた?

 畏まった言い方の方が良かったか?

 いや、でも相手が砕けた言い方だし…


 「ぷっ、ははははっ!」

 「な、何か間違えた?」

 「いやぁ…間違えてはいるなぁ…だって、俺が聞いてるのは───」


 彼は、笑いながら言った。


 「前世の名前だぜ?」


 「ッ!?」

 

 まさか、ここに居る全員…!?

 

 「・・・雪野、雪野洋平だ。」

 

 おそらく、相手が求めているだろう返答をする。

 

 「おお、雪野か。最初の言い方が悪かったな。すまん。俺は斎藤。斎藤修斗だ。」


 やはり、やはりだ。

 ここに居るのは…全員───


 前世のクラスメイトだ。


 




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 「転生者…全員が集まったようだな。引き続き監視と、隙があれば我が聖戦教への勧誘をしておけ。」

 「御意。」

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