その35 二人の成長
あれからかなり移動して、第一層を探索中。
翔が見つけたという扉は、まだ見つからない。
まあ、根気よく探すか。
外には早く出たいしね。
あと、探索についてだけど、めっちゃ快適。
翔と協力すると、その辺の魔物なら一瞬で倒せる。
翔嘘ついてた。
あいつ援護クソ上手い。
ちょっと危ないな、って思ったら魔法で相手の動き抑制してくれるし。
風の魔法で俺の速度底上げしてくれるし。
その援護のおかげで、俺はなーんも気にせず突っ込んで破壊すればいいから、楽で楽で。
戦闘が早く終わるようになった。
・・・ただ、ちょっと欠点、というか代償というかがあってですね。
超重領域が、使えない。
なんでかというと、理由は単純。
翔を巻き込むからだ。
超重領域は発動後、操作がいらない。
その代わり、発動対象の限定はできない。
察したかな?
つまり、翔も押し潰される。
それはさすがにまずい。
翔は磁力系の耐性低いしね。
てことで、しばらく超重領域は、封印、ですね。
[スキル{武器強化}のレベルが上がりました。]
[レベルアップ後のスキルレベルは、10です。]
[スキルレベルが10に達しました。]
[スキル{武器生成}を獲得しました。]
[獲得したスキルのレベルは、1です。]
「んあっ?」
「どうかした?優樹。」
やべ。
変な声でた。
「いや、ちょっと新しいスキルゲットしただけ。」
「そうなのか。なら大丈夫だな。」
翔に説明を終える。
ちょっとビビった。
武器強化してたら急に聞こえてきたもんだからね、びっくりした。
で、これはどんなスキルだ?
武器強化の進化スキルなのはたしかだけど。
武器生成:SPを消費し、武器を生成する。
そのまんまだな。
これは今のところ使うことないかな…
この剣だけで事足りてるし。
でもちょっともったいないよな…
なんかいい使い方ないかね。
・・・小ぶりなナイフでも作るか?
ナイフがあれば魔物の解体がしやすくなる。
あ、でも鞄なんてないじゃん。
どう持って行くんだよ。
手に持って…ってさすがに無理がある。
てことはナイフ案はなしか。
でもこれ以外となるとな…
そんな感じにうんうん唸っていると。
「どうしたんだ?」
翔が話しかけてきた。
「いや、武器を作るスキルをゲットしたんだけど、なにに使うか思いつかないんだよ。」
「うーん、武器はその剣で足りてるもんなぁ。サブ武器…とか?」
「サブ武器?」
その考えはなかった、けど。
「ありだけど、どうやって持って行くのさ。」
「俺に考えがある。ちょっと剣貸して。」
翔は、俺の剣を浮かせた。
別に、この光景自体は珍しくない。
翔はよく剣とか槍を浮かせてるからな。
でもそれでずっと運ぶのはちょっと心配。
「そうやって持っていくのか?負担ないか?」
「いや、こうやる。」
翔は、そう言い、俺の剣を…
虚空に消した。
「え?ちょっ…俺の剣…どこ?」
混乱して頭と口がうまく回らない。
「大丈夫、ここにある。」
剣が虚空から「生えてくる」。
「なにこれ…」
「空間魔法の一つ、空庫。色々な物を収納できるみたい。これがあれば気になる物は持って行けるぞ?」
「それは…すごいな!じゃあちょっとサブ武器作ってみる!」
そう言って俺は、すぐに武器を作り始める。
いやー、翔…すごいな。
色んな魔法を使いこなして、完全に魔法使いって感じ。
でも虚空に剣が消えた時はびっくりしたわ。
さて、早速作りますか。
やっとできた…
翔に渡そう。
「翔ー。武器できたからしまっといてー。」
「わかった、これだな?」
「うん、それ。」
翔に作った武器を渡す。
しかし、難しかった…
選んでSPを消費するだけの武器強化とは全然違う。
どうやるかと言うと、何を作るか想像して、その形に技力を操作して、固める。
言う分には簡単だけど、全工程が難しい。
まず、かなり具体的に想像しないといけない。
ぼんやりとした想像ではできないんだ。
次に、技力を形にしようとすると、思いがけないほうに技力が飛び出て、うまくいかない。
やっと形になったと思ったら、固める段階で形が崩れたりね。
固めるのは、まあそこまで難しくない。
形が崩れないよう圧縮するだけだからね。
だけど、今までの工程全部目視できないんだよ!?
脳内でやらないといけないの。
そら難しいよね。
そんなこんな苦労しながら作り上げた。
作ったのは、大剣。
今使ってる剣よりもっと攻撃に特化した武器が欲しいと思って、思い浮かべたのが大剣だった。
見た目はただぶっといだけの剣。
鱗魔の剣の数倍のサイズで、それ相応の重量もある。
振り回すのが辛いほどではない。
ステータスも上がってきてるからね。
そんな大剣、なんと!
なんとなんと!
・・・弱いです。
かなり時間かかったし!
SPも大量に使ったのに!
鱗魔の剣より圧倒的に!
弱い!!!
・・・いや、まあそこまで弱いわけじゃない。
火力はある程度あるし。
鱗魔の剣が強すぎるだけ。
だって、鱗魔の剣って俺がずっと強化して使ってきた、まさしく相棒みたいなもんだから。
この剣は悪くないんだ。
ただ、この新しい剣は空間の裂け目には突っ込めないな。
耐久力足りなくて、たぶん壊れる。
あ、そうそう。
話変わるけど、空間の裂け目。
これの詳細、調べました。
空間の裂け目。
それは、「強力な負荷がかかり、空間が裂けたもの。」
その説明と、前にできた時のことを踏まえて試行錯誤した結果、作れるようになった。
作り方は…
場所を決め、重力磁場のリミットブレイク時の最大出力を二方向、真逆の方向にかける。
すると、空間が裂ける。
簡単でしょ?
そう、なんにも難しいことはなかった。
ただ真逆に重力をかけると空間が耐えられなくて裂けてるっぽい。
それに気づいてから、作り方はすぐマスターした。
今では即座に複数個も作れる。
火力もめっちゃ、ステータスで言うなら三万に届くかもしれないほどには上がるし、かなり強くなった。
だからこれを使えない新しい大剣はまだ実戦には使えないな。
わざわざ強くなれる方法を使わない必要はないし。
・・・ただ、腕を裂け目に突っ込んだときの痛みにはまだ慣れないなぁ…
ほんとにすごい痛い。
HPもごっそり持っていかれるし。
レベルアップがないとしばらく痛みにのたうち回る程度には痛い。
しかも、これ痛覚軽減ありでこの痛みだからね。
マジでおかしい。
翔にもよく心配される。
「そんな戦い方して、体は大丈夫なのか?」ってね。
その度大丈夫って言い聞かせてるけど、言っても翔は心配そうにしてる。
まぁ、俺が我慢すればいいから大丈夫だね。
ここからさっさと出たいし、強くなれる方法を手放すわけにはいかない。
早く外の世界を見たい…!




