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前世に飽きた魔王の孫、世界に首を突っ込む 〜退屈だから全部かき回す〜  作者: 暇凡人T
一章 迷宮編

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その36 人との遭遇、ぱーとつー!

 

 「ぐあっ!?」


 ん!?

 先行していた翔の声が聞こえた。

 それも、何か攻撃を喰らったような声が。

 何かあったのか?

 ちょっと武器強化中で遅れていたから、翔の姿はとても小さい。

 すぐに向かわないと!



 

 「大丈夫か!?」


 翔のところに着き、声をかける。

 けど、これは…!?

 そこには、大量の魔法に身を打たれる翔がいた。

 翔は、うずくまってただ耐えている。

 小さな傷は多く見えるけど、大きな外傷は…見たところない。

 それに安堵するが、状況が変わるわけじゃない。

 一体何が?

 なんで反撃をしない?

 色々な考えが頭を駆け巡る。

 よく見ると、奥に人影が見える。

 まさか、アイツらが翔を?

 その推測を裏付けるように、奥から魔法が飛んでくる。

 その光景を見て、意識せず、体に力が籠る。

 許せない…!

 誰に手を出してるのか、わからせてやる。

 普段なら色んなことを考えているだろうが、今はそんな判断力はない。

 俺の親友が傷つけられてるんだから。

 アイツらを、潰す。

 全力で。

 魔人化…重力磁場…そして。

 

 「リミットブレイク…!」

 「優樹…?待て、そんなことしなくても───」

 

 翔が話しかけてくるが、俺の、血が上っている頭には届かない。

 先程まで強化していた大剣を構え、全力で走り出す。

 今持っているのが大剣でよかった。

 あのクソ共を一網打尽にできる。

 

 「・・・ん?人…?」

 

 アイツらも俺に気づいたみたいだ、

 まあ、もう間に合わないがな。

 

 「なにかが高速で向かってきてる!」

 「人だ!でも止まらない!」 

 「防御を!早く!」

 「間に合わない!待て!話を───」

 

 俺の今まで鍛えて来た力、そのほぼ全てを使った一撃だ、止められるもんなら止めてみろ。

 抜刀!


 ズッッッ───


 一瞬の静寂。

 

 「…?何が…!?」

 

 ズガガガガガガン!!!


 横薙ぎに斬った全ての物が、崩れ落ちる。


 「ぐあああああっっ!!」

 「きゃああああっっ!!」


 たくさんの断末魔が鳴り響く。



 悲鳴も、なにも聞こえなくなったころ。


 「ば、化け、物、め…」


 そう言って、最後の一人が事切れた。

 どっちが化け物だよ。

 俺の仲間に魔法撃って来たのはそっちだろ?

 じゃなきゃ、なんで翔はうずくまってたんだよ。

 反撃もせず、傷だらけになりながらうずくまってたんだよ!

 無抵抗の奴をいじめてなにが楽しいんだよ…!

 俺は、俺たちは悪くない。

 これは正当防衛だ。

 

 「こ、これは…!?」

 

 ん?

 声の聞こえたほうを向く。

 すると、通路の先から、人がやって来ているのが見えた。

 しかも、かなり多い。

 さっきのは偵察隊かなんかだったのか?

 まぁ、なんでもいい。

 もう俺の話を聞くような状態じゃない。

 完全にこっちを敵と見なしている。

 俺も、翔に手を出されるわけにはいかない。

 それなら、やることはひとつ。

 もう一度、全員叩きのめす。

 完膚なきまで。

 

 「ふっ!」


 大剣を振り下ろす。


 ドガァン!

 

 その後、すぐに次の動きの用意。

 剣戟球!

 剣を一度振るたび、数人の断末魔と共に血飛沫が舞う。

 ここからさらに───



 殺した。

 誰一人残さず。

 無心で剣を振っていた。

 気づいたら、周りがボロボロになっていた。

 そうだ。

 翔は大丈夫だろうか?

 あいつが居たはずのところに向かう。

 

 「翔?大丈夫か?」

 「優樹か…俺は大丈夫。それにしても…」

 「?なに?」

 「やりすぎじゃないか?」

 

 やりすぎ?

 何が?

 

 「どういうことだよ?」

 「殺す必要は無かったんじゃないのか?」

 「は?」


 こいつ…マジか?

 俺が手を出さなかったら、最悪死んでたかもしれないのに。

 よくそんなこと言えるな。

 自分の命をなんだと思ってるんだ。

 まあ、確かに俺もキレすぎたかもしれない。

 俺もそんな倫理観が高いわけじゃないし、なんでここまでキレたのかは、正直わかんない。

 でも、自分の命を狙われてるんだぞ?

 

 「翔…おまえ、自分の状況を考えた方がいい。今、おまえは龍…魔物なんだぞ?」

 「それは…」

 「ダンジョンで遭遇した魔物なんて、殺すのが当たり前…のはず。」

 「でも、俺たちには言葉が…」

 「あんな状態で話なんか、聞いてくれるわけないだろ!」

 「…」


 黙っちゃった。

 別に翔の言ってることも間違ってない、んだけど状況がね。

 俺と一緒ならまだしも、翔、龍単体なら当然襲われる。

 ここダンジョンだし。

 それに…


 「俺の気持ちも考えてくれ…もし、あのまま翔が死んでたら…」

 「でも…」

 「じゃあ、立場を逆にして考えてみろ。」

 「…」


 また無言になった。

 だけど、どんどん翔の顔が曇っていく。


 「想像したか?」

 「・・・うん。」

 「俺は、翔が居ないと楽しくない!」

 「そんなこと───」

 「あるんだ。だから…自分を大切にしてくれ…」

 「・・・わかった。・・・でも、優樹も自分を大切にな。」

 「おう。約束だ。」

 

 やっと翔もわかってくれたらしい。

 よかった。

 翔に死なれたら…

 俺は、どうするんだろうな。



 ・・・というか、翔が居ないと楽しくないって、確かにそうだな。

 勢いで言ったけど、俺は深層心理でそう思ってたんだろう。

 翔と一緒に行動するようになってから、転生してから今までで一番楽しいもんな。

 当然のことなんだけど、今更気づいたな…

 密かに考えてた目標が変わっちゃったな。

 外に出たら、世界を巡る。

 そう思ってたけど、翔と巡らないといけなくなった。

 ま、そっちの方が圧倒的に楽しいだろうしな。

 じゃ、目標は…「翔と一緒に世界を巡る。」これでいこう。

 ・・・出口、見つかないなぁ。

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