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第9話 疑問と禁句

 翼がサティアへと、聞きたかった疑問を話し出す。たくさん気になることはあるのだが、翼が今一番知りたいこと、プリムの境遇を。


「あの、『奴隷』について聞いてもいいですか?」


「あら、最初の質問が『奴隷』のことなの? 異世界人は魔法に興味を示すって聞いてたんだけどね」


「も、勿論、魔法のことも気になってます。でも、昨日知り合った少女が、『奴隷』だなんて信じられなくて」


 サティアは、翼の表情と言動に不安を覚えながらも、『階級制度』と『奴隷』について説明を始める。

 能力測定の結果で、翼の階級が決まることや、一般階級と上流階級で決まりごとが少し違うこと、そして階級の一番下『奴隷』になる経緯を話し始めた。


「人が『奴隷』に堕ちるのは、国に叛く行為など、犯罪を犯した時です。その罰はとても重く、子供を産まされ、その子供も生涯を『奴隷』として生きなければならないのです」


「どんな犯罪かによって罰が重くなるのは理解できますけど、子供までって······それは重すぎじゃ」


「『奴隷』まで堕ちると、国は人と認めない。だからこそ、国民は罪を犯さないように生きるのです。これが、犯罪者を出さない、この国の仕組みですね」


 階級が上がることで裕福になる、目に見える形で表される差別が、より向上心を持って生きることを強制する。

 それと並行して、『奴隷』という重い罰が、良心的に生きることも強制するのだ。


「な、なんの罪もない子供が『奴隷』って、人じゃないなんて言われるのは絶対に違うと思います。そんなの······」


「それ以上は、口にしてはいけません。この国の決まりごとは、全て『王』が創ったもの。それを批判することは、『王』に、国に叛く行為です。国に叛くとどうなるのか、先ほど話したばかりでしょう」


「は、はい。でもっ、この国の人は、違うと思わないんですか? それとも、言えないんですか······」


「白崎さんは優しい人ですね、でも安心してください、この国にも優しい人は居ますから。もう、この話は終わりです」


 翼は、サティアの説明に納得することなどできなかった。それでも、これ以上は反論はしない、できない雰囲気は理解する。


 気まずい雰囲気が教室を支配していると、丁度良いタイミングでドーガが迎え来る。

 そして、今日の指導は此処で終わりになるのであった。


✩✫✩✫✩


 プリムへと能力測定の結果を話していると、サティアへ質問した解答も思い出してしまった。


「翼様? 能力測定は良い結果だったんですよね、他に何かあったんですか」


「ん、あれだよ。僕が居た世界とは色々と違うんだなってね、ちょっと考えてたんだ」


 なんとなくだが、プリムに『奴隷』の話をしたくないと思ってしまう。

 今度『奴隷』のことを話題に出す時には、知識や力を手にしてからだ。そう翼は考えると、話題を戻していく。


「プリムはさ、能力測定ってしたことあるの?」


「私も簡易的な測定はしてますよ、『火』『水』『雷』『土』の基本属性の測定です」


 『奴隷』プラント『青い果樹園』では、売り物の品質管理のために測定はしている。

 だが、基本『奴隷』には家事や、一般教養を教えるぐらいで、魔法の習得や戦闘訓練などは

実施していなかった。

 何故なら、力をつけた『奴隷』が叛徒となる可能性と、買い手がそれを求めていないからだ。


「基本属性って4つなんだ、8つかと思ってたよ。ランクも判るの?」


「判りますよ、4つ共Bランクでした。プラントでは、私も優秀な方だったんですよ」


 確かに、Bランクの適正を持つ人間は優秀な部類に入る。一般階級ではBランクを持つ者など少なく、上流階級でもおかしくない適正値なのだ。

 だが、あくまで『人』であった場合だ、『奴隷』には関係のない内容であった。


「へぇ、凄いんだね。それならプリムにも何か教えて貰えるのかな?」


「えっ、魔法ですか? 残念ですが、それは無理ですよ······魔法は禁止されてたので」


「そ、そっか······」


 翼は、『奴隷』への話題には触れたくないのに、そこへ繋がってしまうことで、言葉に詰まってしまう。

 プリムの今まで生きてきた時間を考えれば、『奴隷』にはできなかったことや、此れからもできないことがたくさんあるのに、最初の失言が言葉を縛り付ける。


「そ、それならさ、一緒に訓練して使えるようになろうか?」


「ぜ、是非っ。あ、あの、翼様に着いて行くことはできるんですかね?」


 プリムには、翼の心中など察することはできない。自分の目的、翼に着いて行き、情報を集めるチャンスだと考えた。


「どうなんだろう、明日聞いてみるよ。ぼ、僕も、一緒に行けたら心強いしさ、楽しそうだよね」


(『奴隷』を連れて行けるのかな······あっ、まただ。『奴隷』だからって考えなきゃいけない、そんなのおかしいだろ)


 この日の夜、プリムは安心して眠ることができた。寂しさで心が不安定になっていたが、翼との会話で、一歩でも前進できたことが嬉しかったのだ。


 一方翼は、今日一日のことを思い出して眠ることができない。

 魔法の存在や身体強化、この話はとても魅力的で、此れからも楽しみなのに。心の中は『奴隷』を許容するこの国に、それを創った『王』への憤りでいっぱいになっていた。

〜プリムのひとり言〜


プリム「正直、『奴隷』って考えないで欲しいです、私もプラントの皆も自分を『奴隷』だなんて思ってないんですから」


プリム「まぁでも、しょうがないのかな······それよりも、外に出るチャンスが来たことを喜びましょう。それに、私も魔法の訓練は楽しみだったりして」


プリム「これからも精一杯頑張りますので、皆様応援してください。『プリムも連れて行けっ』って思ってくださった方、ブックマークと高評価(☆にチェック)をお願いします」


プリム「次のお話は『案内人、ドーガとビネット』です。また次のお話で会いましょう」

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