たびにでました
前回のあらすじ!
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹をとりつつ、よろずの事につかひけり。
「最早桃太郎関係ねぇ!」
あっはっは!
では、はじまりはじまり~。
渋々旅に出た桃太郎は、ひとまず海を目指して街道を下って行きます。
空は快晴。土がむき出しの道は真っ直ぐに、草原に線を引いています。
「え? 近場って川があるくらいだから渓流じゃねぇの?」
さあ? きっと、洗濯は裏山に行ってんですよ。油を売るにはぴったりですから。
「洗濯してるんだから、油は売ってねぇよ」
ん? 細かいことは気にしない、気にしない!
「いや、少しは気にしろ?! 雑すぎだろ!」
あっはっは。
ぶっちゃけ貴方が、山だろうが谷だろうが、飲食店の路地裏でも歌舞伎町でも屋根の上でも、どこを歩いてても誰も気にしません。
「時代錯誤甚だしい」
いいんです。何故なら、桃太郎だから!
「理窟がわからん」
あらあら。日本で一番有名(笑)なヒーローのクセに、おつむは残念なんですね。ぷーくすくす。
「失礼過ぎる駄地文よりかはマシだろ」
あ、そういえば。
「聞けよ、このクズ」
絵本の桃太郎さんって、旅に出ると必ず紋付き袴着てますよね。
「……それがどうした?」
野山で柴刈って、川で洗濯なんて生活用水垂れ流しにしても何処からも苦情が来ない、超☆ど田舎に住んでるおじいさんおばあさんが、どうして紋付き袴なんて持ってるんです? 実はおじいさん、すごい人? ご隠居的な?
「さあ。知らね。ばあさんが見よう見まねで縫ったんじゃねえの」
なんですって?!
ならば有り難みを感じろ! この放蕩野郎!
「いや、てめぇが追い出したんだろうが!」
……はて?
そら耳?
「………………もうなにも言わねぇ」
よきかな、よきかな。
扨おき。
ふてぶてしい顔で街道を下っていく桃太郎は、草の影からじぃっとこちらを見つめている犬に気がつきました。
―――――
やせいの いぬ が
なかまにしてほしそうに
こっちをみている!
――――
なかま に しますか?
→はい いえす
――――
「拒否権は?」
え? あるんですか?
「こっちが聞きてぇよ!」
え? だって、桃太郎ですよ?
動物たちを、たかが数個のきびだんごごときで、恩着せがましく鬼退治に同行させるんですよ? とんだブラック&動物虐待をさらりとやってのける、鬼畜の所業ですよ?
そんな奴に、拒否権があるとでも?!
あるとでも?!
「いや、だからあの……。同行しなくていいって意味で言ってるんだが」
え?
あんた一人で鬼が倒せるもでも?
ちなみに、犬連れていかないなら桃太郎は終了して、これから『太郎』が始まります。
「いや、誰だよ」
太郎と言ったら『うらしま』の太郎さんでしょ!
「知らねぇよ!」
あの人、九十才のおじいちゃんになっても自分の年齢に気が付かないでいるから、困っちゃうんですよねぇ。
「へー(どうでもいい)」
全くもうっ!
地の文を大事にしないなんて、なんて主人公でしょうっ!
「主人公がどうやって地の文を大事にするんだ? 普通」
なら、こちらにも考えがあります。
「丸無視か」
鼻をほじりだした桃太郎は、心底鬱陶しそうな顔をしながらもきびだんごを投げてやりました。
「酷い風評被害だ」
気のせいです。
「団子くらい、普通に分けてやるわ」
お腹を空かせていた犬が、嬉しそうにその団子を食べようとした刹那! 桃太郎はなんと団子を踏みにじりました!
犬を見下して、一言。
狂犬病持ってるかもしれない野犬はとっとと失せろ! 血統書持ってきな!
「だからしてねぇっつの! お前はどんだけ、オレを悪者にしたい?!」
……ん?
何やら外野が騒がしいような?
「おい、わんこ。さっさと食べちまいな。ろくなことにならねぇ」
そうやって手ずから食べさせるフリして、喉の奥に突っ込むんですね?! やだー。お巡りさん、この人です。
やっぱりほら、心底鬱陶しそうめんどくさそうな顔してるじゃないですかー。やだー。
「理由が違うだろ、理由が」
溜め息と共に、桃太郎は眉間を揉みました。団子をもらった犬は、嬉しそうにしっぽを振っています。
「ももたろうさん、ありがとうだわん!」
「いや、喋るのかよお前!」
「おれいにおにたいじにいっしょにいくわん!」
「ええ……。鬼退治……オレ一度として行くって言ってねぇぞ……」
「わんわん! ももたろうさん、おいらがんばるわん!」
うんうん。
こうして、桃太郎は犬をお供に旅を続けました。
「最早、何でもいいから進めようとしてるだろ」
気のせいです。
おや?
遠くの方から、何やら土煙が上がっていますよ?
「今度は何だよ……」
ああ! なんと言う事でしょう!?
「わざとらしいな、こいつ」
あれはっ! ニワトリがロ◯ドランナーの如く走ってくるではありませんか!
みっみっ!
その後ろには、コヨーテの姿が……!
「は?」
おや、桃太郎さん。何だか怪訝そうですが、どうしました?
「……なあ、キジはどうしやがった?」
え? キジは前回、あとがきにて鍋パーティーしたじゃありませんか。
キジ鍋うまー。じびえうまー。
「は?!」
役者が足りなくなったので、代打です。
「ニワトリが?!」
近所の小学校に沢山いたので、一匹分けてもらいました。
「それダメだろ?!」
テロップ出しとくので大丈夫です。
* * *
ぴんぽんぱんぽーん。
※画面の向こうの良い子は、勝手にニワトリを連れ出してはだめだぞ☆
画面を見るときは、部屋を明るくして、離れて見るんだぞ☆
桃太郎との、約束だぞ☆
* * *
これでよし!
「いかにもアニメのオープニングを装うのやめろ。あと気色わるい」
失敬な。大事な事じゃないですか。
幼い頃からドライアイとか可哀想です!
「……そこ? お前は本当に、これが幼い子供に読まれると思ってるのか……?」
ええ。童話ですから!
「詐欺だろ」
ええ、童話ですから!
「もういい。アホは喋るな」
では、先に進めます。
「この地の文もうヤダ……」
ニワトリが巻き上げる砂ぼこりが目に入った桃太郎は、イライラした様子でニワトリとコヨーテの間に立ち入りました。
戦闘開始です!(BGM:戦闘!野生のポ◯モン)
やせいの コヨーテ が あらわれた! ▼
「世界観って知ってるか?」
特性、おばあさんの難聴
「すっとぼけるくらいならもう少し自重しろ!」
だが断る!
やせいの コヨーテ を たおした!▼
てれれれんっ!
ももたろう は レベルが あがった!
※ちなみに、レベル(Lv)とは「Level of Violence」の略です。
「多分、元ネタ知ってるやつの方が少ねぇだろ。やめろ」
※なお、戦闘シーンは砂ぼこりで見えなかったので、描写はありません。
「手抜きだろ。ただの手抜きだろ」
二回も言うなんて、大事なことなんですね。
親父にも言われたことないのに。
「地の文に親父いるのか?」
ええ。名をヨハン・セバスティアンと言います。
「そりゃ音楽の父だ」
よくご存知で。
あなたにも大概世界観がないと、わたくしは主張したいです。
「……え、キジがこれって。じゃあサルは、まさか……?」
無視ですか。いい度胸で(以下略)。
ご想像にお任せします。
ニワトリにお団子はあげるくせに、こちらの相手はテキトーですか。いい度胸です。
「先に無視したのはそっちだろ。第一、お前を相手にしてても仕方ない」
……チッ。
あ、ピンチヒッターに孫の手と猫の手なら、どっちがいいですか?
「なにゆえ手にこだわる?」
サルの手の代わりに。
流石に孫の手じゃどうにもならないので、猫の手を借りることにしました。ピンチヒッターだけに!
「いや、上手いことなんて一つも言えてねぇよ?!」
「ももたろうさん、きびだんごくれたらおともするにゃー」
ほらほら、桃太郎さん。藪から猫が申し出てますよ!
さっさと仲間にしてください。
「ほんっと、やっつけだな? おい」
そんなことありません。
だって、桃太郎ですよ? 誰もがお話の流れを知ってるんです。少々はしょっても、誰も気になりませんよ。
「最早暴論だろ」
扨々。
こうして桃太郎は、犬、ニワトリ、猫をお供に、旅を続けるのでした。
さあっ、いよいよ鬼退治です!
街道を下りきった彼らの目の前に、真っ白な砂浜が現れました。
視界を遮ることのない、どこまでもどこまでも青い水平線が広がります。微かに見える島こそ、彼らの長い旅路の終着点です。
「あそこが、鬼ヶ島」
感慨深そうに呟いた桃太郎の目には、静かな闘志が宿っております。鬼退治への意気込みと気合いは十分です。
「別に意気込んでない。疲れただけだ」
「おっかないわん」
「どうやって行くコケ」
「あふぅあ……だるいにゃー」
さすがのお供達も、どこまでも広がる海に困ってしまいました。
そんなお供たちの姿に、桃太郎は肩を落としました。
「…………船を探すか」
どうやらお疲れのようです。
「ああ、誰かさんのお陰でな」
えへへーそれほどでもー。
「誉めてねぇ」
さあっ
張り切って船を探しますよ!
「やってろ」
次回、桃太郎! (BGM:ソーラン節)
サブタイトル
『因幡の白兎』
海を渡りたい?
ばーか、この先はバミューダ海峡だぜ? 何隻船が沈んでると思う?
アヒルボートじゃ何年かかってもたどりつけやしねぇさ。諦めな。
それでも私は、世のため人のため……苦しんでいる人々の為に行かなくてはならないんだ!
正義の名のもとに!
漁師どの、どうかお願いします……!
鬼岩城を目前に、桃太郎一行を阻む大海原!
海を、鬼を恐れて、船を出すなんて毛頭もない漁師を、果たして桃太郎は説得出来るのか?!
どうする、オレ! どーする?! 桃太郎!
つ づ く!
「これ、各地方から苦情来ねぇか? 鬼岩城とかアウトだろ」
あ、用意したのがこちら。バギ◯ちゃんです。
「やめろぉおおお!」