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漂流の騎士  作者: 1346
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9/17

裏側

 長い長い石造りの廊下を、走り続ける。等間隔で壁に掛けられた燭台はどれも殆んど蝋燭など刺さっておらず、あったとしても火は灯っていない。本当なら魔法で足元でも照らしながら進むのだろうが、そんなものの心得など無い僕は、闇にならした瞳を頼りに行くしかない。

 今まさにこの城の玉座のまでは、あの聖女様と修道士、そして先生が大立ち回りを繰り広げているはず。そのおかげか、そもそもこの廊下はあまり使われていないのか、辺りに憲兵や軍の人間の気配はない。

「急ごう、いくら先生でも、人を守りながらじゃ思い切り戦えない……」

 解れの目立つ絨毯の上を、足音も気にせず進む。この廊下の先には、今はもう忌まわしき過去の産物として放棄された、宝物庫とは名ばかりの巨大な武器庫があるらしい。

 それらは宝という名に恥じない、名の売れた刀匠や鍛冶屋が手掛けた伝説級の武具が収められていると聞く。どれもこれも呪いや怨念を魔力に近い形で取り込んでいるせいで、身につける者が端から正気を失い、命を落とすため、廃棄物という銘を打たれてそこに打ち捨てられているも同然なようだが。

 さしものループトンもこれの扱いには手間取っているだろうと踏んだ聖女様は、これを使って周辺国と手を結ぶ段取りをしているらしい。黒の国と条約を結んでいる他の大国ではなく、周辺の小国に比較的凶悪性が低く、且つ即戦力級になる武具を配布し、迎撃態勢を取らせることで、黒の国の戦力の肥大化を防ごうという。

 問題は、武具に適合できるレベルに強い魔力を有する人間がいるかどうかなのだが、武器が外に流出した時点で、ループトンの打てる手は圧倒的に制限されることになる。密使を放って調査させようにも、それが捕らえられれば、もし武具を使える人間がいた場合、黒の国へ向けられる体制は迎撃から攻撃に移ってしまう。

 ――その可能性がある、というだけで、もう彼は動けない。彼はそういう男だと、聖女様は笑顔で語った。

 リストアップされ、外見的な特徴を教えてもらった四つの武具。それを持ち出せば僕の任務は完了し、先生たちも撤退することができる。国の門の周辺に潜伏している黒の国の信仰者達と合流し、そのまま国外へと出ることができれば、今回の計画は成功するのだ。

「見えた!」

 廊下の突き当たりにある、錆の目立つ大扉。

 鍵はもう壊れ、宝物庫としての体を成していない。体当たり気味に押し明けたその先に踏み込んだ僕は、自分の不用意さを後悔した。

 膚に突き刺さるような、魔力とか神力とかそんな曖昧な物でない、明確な殺気。

 闇の中であるはずなのに、歪に煌く細い剣尖が、目の前から一直線に迫った。

ブログURL http://syousetutamago.blog.fc2.com/?page=0.html

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