プロポーズは突然に
「───そこまで! 勝者、仮面騎士デュランフェルムウォム・アレンバイル!」
時間稼ぎの応酬が続いたが、さすがに御前試合で不正は出来なかったのか審判は不満そうな顔をしたまま勝敗の旗印を掲げた。
仮面の騎士と呼ばれているデュランは息を整えて模擬刀を収め、礼をしてから王室の席に勝者の仕草を行う。アレンバイル家は王室と異なる派閥に所属している関係からか、向こうも義務的な手振りを行うだけで、本来与えられるはずの褒賞でさえ下賜されそうにない。
「……実に、大義であった。それでは、勝者を讃えてボクがお相手しよう!」
王家側からの腕試しか嫌がらせか、デュランの前に甲冑姿の小柄な少年が姿を見せた。完全なる飛び入りかもしれないが、意図的な妨害の可能性もある。
「まったく、王家というのはどれだけ性根が腐っているんだ……。剣の一本くらいは下賜して貰えると思ったが、名誉ある騎士学校も貴族院の傀儡か……」
甲冑の少年は対戦相手より動きが素早く、繰り広げられる剣筋も力も非常に重い。連戦の疲れに手の痺れを覚え始めたものの、動作の機微に品はないため隙が多く、ある程度受けながらかわすことが可能だった。
「……やっと、終わりか……。もういい加減にしてくれ」
右手首を狙って弾き返し、甲冑の少年は剣を失って力尽きた。見返してみれば模造刀ではなく弾いた剣は真剣で、試合を装った暗殺か何かではないかとデュランは冷や汗を流す。
「何という強さなんだ、ボクは感動したよ! 仮面の騎士殿、手合わせをしてくれてありがとう!
君が気に入った、ボクと結婚してくれないか!?」
「…………は?」
甲冑姿の少年が兜を脱ぐと、深い蜜色の髪と王家特有の金の瞳が姿を見せる。
先ほどまで、王室席に腰掛けていたはずの我が国の第三王女が親しげに手を取り、一方的過ぎる愛を囁き続けている。
「───まずは、婚約から済ませようか! ああ、ボクが君の家に嫁入りをするから大丈夫だよ、姫君が嫁ぐってやっぱりいいよね。最初は交換日記からでも構わないさ、でも将来的には子供はたくさん作って…………ちょっと! シャルとリズは何でボクの足を引っ張って」
お付きのメイドらしき女性達に連行され、第三王女は舞台から引きずり降ろされていった。
王室席の女王たちは何ごとも無かったかのように退席し、優勝者の褒賞を与える事もなく御前試合は幕を閉じた。




