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事故物件404号室  作者: ゆずさくら


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4/22

指令

 ヒナとノリは学校では相変わらず無視され続けた。

 だが、放課後、学校から離れれば充実した生活が待っていた。

 失踪した配信者『朔夜(さくや)』の行動を探ることだった。

 それがシャカウラ配信者のカゲトキに言われた、彼らに『やれそうなこと』だった。

「『朔夜の心霊踏査チャンネル』で次に配信するネタとして、事故物件に住む、をやっていたんだ。だから朔夜は『事故物件』に住んでいた。そこで何か事件に巻き込まれた」

 それを含め、いくつかのヒントはカゲトキからもらっていた。

 ネットを通じて調べられることは、カゲトキが。

 実際に歩いて人に会い、聞き出すのはヒナとノリがやることになっていた。

 ヒナとノリはカゲトキが調べた住所付近で聞き込みをした。

「行方不明の兄がいて、この近所で見たっていうSNS情報を見つけて来たんです」

 二人は、犬を連れているとか『自転車』に乗っている『地元の人』っぽい人に尋ねていく。

 二人が放課後を使い二、三日調べると、建物が絞り込めた。

 特定できた建物の監視カメラを、カゲトキがハッキングする。

 時間的に消えかけた映像の中から、いくつか朔夜のものがあった。

 映像からフロアが特定された。

 今度はノリが宅配便業者のふりをして、人が出てこない部屋を特定した。

 ネットを通じてカゲトキと対話する。

「404号室」

 ノリは言う。

「部屋に入れば、手がかりが何か残ってるかも」

「やってもらうかどうかは、俺が判断する」

「なんだよ、これで終わりかよ?」

 カゲトキは顔を伏せぎみにし、隠れていない左目でじっとカメラを見ている。

「どんな事故物件なのか調べて。ネットも調べるけど、手分けした方が早いだろ」

「わかった!」

 ヒナとノリは、放課後は現地に行き、夜はネットを探した。

 カゲトキの調査もあわせていくと、何故事故物件なのか、何故、朔夜がそこを配信ネタに選んだのかが見えてきた。



 三浦直樹は、404号室を借り川村瑞希と住んでいた。

 二人は結婚していて、夫婦仲も良かった。

 だが、二人で米国を旅行していた際に、妻の川村に何かが起こった。

 妻の死にショックを受けた三浦は『エンバーミング』をして妻の遺体を国内に持ち帰った。

 ……だが、遺体が消えた。

 遺体が消えて、警察から取り調べも受けた。

 三浦の言うことは支離滅裂だった。

 近所でも異常行動をすると噂がたつと、三浦は出歩かなくなってしまった。

 隣室から異臭がすると苦情が入って、404号室に強制的に入室すると、そこで三浦の首吊り遺体が発見される。



 ノリの報告を受けると、カゲトキが言う。

「結局、妻である川村の死体は見つかっていないのか」

「エンバーミングってなんだ?」

 ノリの質問に、カゲトキが答える。

「遺体が腐敗しないように処理をすることだ。よその国から死体を運ぶんだから剥製みたいに処理したんだろう」

「そんなことまでして遺体を……」

「考えてみろ。もし外国でヒナが死んだらどうする?」

 ノリはタブレットの前で、ヒナの顔を振り返る。

「……」

「三浦は妻の遺体をどうしたんだろうか。生き返るとでも思っているのだろうか」

 ヒナが言う。

「川村さんの死因もよく分かっていないんです」

「消えた妻の遺体と、首を吊った夫。この部屋は事故物件と呼ぶにはエグすぎる」

 そうノリが言うと、カゲトキが返した。

「朔夜の失踪も加わっているわけだから、部屋に呪術的な何かが施されているとしても不思議はない。今すぐ部屋を調査したいぐらいだ」

「やろう。俺が中に入りますよ」

「私も部屋に入って調べたい。死んだ姿のままどこかに消えてしまっている川村さんがかわいそうだよ」

 カゲトキは手で顎に触れながら、考える。

「俺の言うことを守る条件で、事故物件を探るか?」

「やるよ! やりたい。やらせてくれ!」

「私も覚悟はできています」

 カゲトキはPCに何かを打ち込んで、二人に送った。

 二人はそれを読んでいく。

 部屋に泊まらないこと。

 入る前、出る前にはカゲトキに連絡を入れること。

 八時間以上、部屋にとどまらないこと。

 それらは危険な目に合わないための制約事項だと思うのだが、過剰な項目もあった。

 ヒナがたずねる。

「この部屋にいる間は『ガスマスク』をはずさないこと、とありますが……」

「ガスマスクはこっちから送る。守れないなら行かせない。理由は聞くな」

「……ガスマスクなんかしてウロウロしてたら怪しまれるんじゃ?」

 文字のメッセージがカゲトキから届く。

 どうやらガスマスクをつけろと言うのは、米国で流行っている病に起因するものだと言う。

「詳細は調べればわかる。どうしても知りたければ自分で調べてみろ。こんな風に最悪の事態を考えず、迂闊に部屋に入れば、夫の三浦か、朔夜のようになりかねない」

「わ、わかりました」

 ノリが答える間に、横でヒナがタブレットで調べる。

 ノリは横目でその内容を見た。

 米国の感染症の種類の多さと、危険な症例を見て吐き気がしてくる。

「必要なものが届いたら、最後にカードとパスコードを送る。それで事故物件の中に入れるはずだ」

 二人は返事をすると、カゲトキとの接続が切れた。

「大丈夫かな」

 ノリは一歩前に出て振り返ると、ヒナの肩に手を置いた。

「ヒナ、心配するな。俺たちは中学生だ。無敵なんだ」

 軽く体を揺すられると、ヒナは笑ってしまった。

「何も考えてないでしょ」

「バレたか」

 二人は『必死に』笑った。




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