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【書籍14巻発売!・コミカライズ全2巻】魔界帰りの劣等能力者  作者: たすろう
劣等能力者の受難

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トーナメント戦④


「時間になります! 合図をお願いします! すべての試合が開始になりました!」


 四天寺家の司会者からマイクでそう発表されると、広大な敷地内に鳴り響く銅鑼が鳴り響いた。

 それに合わせたように観覧席から歓声が上がった。

 観覧席の数は多く、それに伴い想像以上に人が多い。


「おいおい! 司会者とか……総合格闘技の試合じゃないんだから。しかもこんなに派手にやっちゃっていいのか? 入家の大祭って四天寺家の秘事じゃないのかよ?」


 一悟が呆れるように突っ込みを入れると、ニイナと静香もこれには賛同する。


「そ、そうですよね。私も神事のように……とは言いませんが、もっと厳かに進行するものだと思ってました。しかも、この観覧者の数……これってトーナメント戦に敗退した人たちも、その付き添いの方々もいますよね。どうやら今回参加した人たちやその関係者は最後まで見ていってもよいということですか……」


「なんか意外とフランクな感じだよね」


 そのニイナの横では茉莉がマリオンから霊力の扱いについてレクチャーを受けている。


「そうです! いいですよ茉莉さん。すごいです、筋がいいです! 今、少しですが霊力が循環しました。これを続けてください」


「ふう……ありがとう! マリオンさん。ほんの少しだけ自分の中に電気のようなものを感じたわ。これを続けていけば……」


「はい、スキルの発動に繋がりますよ。じゃあ、試合を観戦しましょう」


「ええ、またよろしくね、マリオンさん。えーと、たしか祐人は第8試合の会場だから……それにしてもちょっと客が多いわね。何なのかしら、マリオンさん、これ?」


「そう言われれば……そうですねぇ」


 と言いつつも、今、茉莉は自分の中にある霊力の欠片のようなものを感じて、充足した気分になった。

 そして、もう一度、自分の中にある霊力を感じ取ろうと精神を集中する。

 すると茉莉を中心にまだ微弱ではあるが霊力の領域ができあがっていく。


(これを続けて、そのハクタクっていう力を振るえれば、私もみんなの役に立てる……もちろん祐人にも)


 そこに横から呆れるような一悟と静香の会話が茉莉の耳に入る。


「一体……何を考えてんだよ、四天寺家は。これじゃ本当にただのお嫁さん争奪戦のお祭りじゃねーか。しかも、まるでテレビでやるような」


「あ! 私も感じた! それもさ、これってなんだか、編集済みっていうか、やらせ感すらない? だって……妙に堂杜君の第8試合の会場ばかりメインで映してない?」


「そう言われてみれば……あ! 祐人が映った!」


「え!? え!? 堂杜君! 頑張れぇ!」


 この観客席のような状態を同じく怪訝そうに見渡していた茉莉は一悟の発言にピクッと眉を動かす。

 この瞬間、茉莉の中で急激に心と頭がクリアになっていくような感覚を覚えた。


「あ……これは……まさか!」


 茉莉はハッとするように声を漏らし、今になって、ずっと感じていた違和感の所在が何だったのかを理解したような顔になった。

 疑問と状況、そして、それぞれの人の考えのベクトルが僅かであるが見えたような気がしたのだ。


「どうしたんですか? 茉莉さん」


 マリオンは横にいる茉莉の様子に首を傾げた。


「マ、マリオンさん、ニイナさん……もしかしたら私たちは……してやられた、かもしれないわ」


「……え? それは……どういう?」


「これは……入家の大祭なんていう大層な名前と……今、思えば嘘か本当かも分からない過去の四天寺家にまつわる悲劇に気をとられて……。何であの時、気づかなかったのかしら!」


「ど、どうしたんですか? 茉莉さん。それに……一体、誰に、してやられるんですか?」


 ニイナもマリオンも、茉莉が突然、顔を青くしながら震えだしたことに驚く。


「もし……そうなら、なんていうキツネっぷり。ハッ! 待って! まずいわ! ということは……祐人が圧倒的な勝ち方をするというニイナさんの作戦は相手の思うつぼよ!」


「お、落ち着いて、茉莉さん」


「そ、そうです。何を言っているんですか? 私の作戦が誰の思うつぼなんです?」


 茉莉はマリオンとニイナに深刻な表情を見せながら、口を開いた。


「……朱音さんよ」


「「……え?」」


「あ、あの人は……鼻から真剣に入家の大祭なんてする気はないのよ! 狙いは祐人だけよ! 祐人と瑞穂さんをくっつけて四天寺家の人間にしようとしてるのよ!」


「「ええーーーー!!」」


「だから、こんなに派手にしてのよ。沢山の人を招いたのもそのため。朱音さんはここで見せつける気なの。祐人の実力を知っているから」


「それは……で、でも入家の大祭は四天寺の秘事のはず……」


「その秘事すら利用して朱音さんは内外に祐人が瑞穂さんに相応しいと知らしめる気なのよ! 秘事どころか宣伝するつもりだわ、祐人は四天寺が目をつけている、誰も手を出すなって。おそらくだけど……すでにこの外でも、そのように伝わるように動いているわ、きっと! このやたら大きいモニターだって、ここにいる全員に祐人を見せつけて、祐人を知った人たちを広告塔にするつもりかも!」


「ええーー!! じゃ、じゃあ、堂杜さんが私たちの作戦通りに圧倒的な勝利をしていったら……?」


「もう、色々動いているはずだから、流石は四天寺、あの四天寺が囲いこむだけはあるってものすごいスピードで世界中に伝わるわ! さらにはそれだけの有望な能力者がいたとはと、驚かせるの。それが……四天寺家の婿、堂杜祐人かって!」


「瑞穂さんもこのことを知ってるんですか?」


「いえ、多分、瑞穂さんは知らないと思うわ。瑞穂さんはまっすぐな人だからこんなことを思いつきもしないと思う。むしろ……瑞穂さんは知らないうちに朱音さんの手のひらの上に置かれているんだと……」


 みるみるマリオンとニイナの顔が引きつっていく。

 特にマリオンはこの四天寺家に身を寄せていて、朱音とは普段から言葉を交わしている。そのため、朱音の性格は何となく分かってきていた。


「どどど、どうしましょう! 茉莉さん。祐人さんが! 祐人さんが!」


「お、恐ろしい人……! ハッ! 堂杜さんに連絡をして作戦を中止しなくちゃ! なるべく運良く勝ったみたいに……」


 珍しく狼狽えたようにするニイナ。


「で、でも、試合が始まっちゃっています。今から連絡なんて」


 マリオンの言う通り、すでに連絡する術はない。

 呆然と三人の少女が四天寺家の人間たちが座る席の方に目を移すと……偶然かこちらを見ていた朱音と目が合った。

 距離はあったが、三人には朱音の表情がしっかりと確認できる。

 すると、その朱音が……、


 ニッコリと…………笑った。


「「「!」」」


 この笑顔から……何かが三人の少女に伝わってきた。


「あんの人はぁぁぁぁ!!!」

「あ、朱音さん……」

「女狐めぇぇぇ!」


 この少女たちが声を上げた直後……

 突如、観覧席全体がシーンと静まりかえった。


「……え? なに?」


 茉莉たちは周囲の様子の急激な変化に驚き、一体、どうしたのかと首を振り全体を見渡す。

 観覧席に座っている人間たちは一様に体が固まったかのように大型モニターを見つめて動きもしなかった。

 そして……横から一悟と静香の驚きの声が上がる。


「おおお!! 祐人、すげえぇぇぇぞ!! どうやった!? むしろピンチだと思ったら、いきなり! なんだよ、なんだよ、今の技は!?」


「堂杜君! 凄すぎ!」


 観覧席からも怒涛の歓声が沸き上がった。


「「「え?」」」


 慌てて茉莉たちは各試合の様子を映し出しているモニターに視線を移す。


「おーっと!! なんと、なんとぉぉ!! 第八試合、早くも決着がつきましたぁぁぁぁ!! 堂杜様、強い! なんという強さ! たった一撃で決めてしまったぁぁ! それにしても今のは!? まるで分身したかのように3人の堂杜様が現れて、対戦者バガトル様を同時に三方向から襲い掛かったように見えました!」


 これ見よがしに四天寺家の司会者がマイクを通して大きな声を張り上げた。


「「「……!」」」


 茉莉たちが口を広げて……固まっている。

 その三人の美少女たちの表情はすべて「祐人……やっちゃった」というもの。


「あ、ここで情報です。堂杜様は瑞穂様と同期で年齢も同じだそうです。いや、もし堂杜様が勝ち上がってきたら、お似合いな二人ですねぇ。それにこのお二方は何度か仕事も一緒にこなされておりまして……」


 何故か司会者から不必要とも思える二人の出会いからの馴れ初めが語られだした。

 さすがにこれには一悟と静香もはずっこけた。


「おい……そんなことまで言うか? なんなんだ?」


「本当ね、思わず吹き出しちゃったよ! なに? この安い公開お見合いみたいなのは」


「なあ、みんな、これは一体、何なんだ……え!?」


 一悟が覗きこんだ先には、ズーン……と肩を大きく落とした少女たちが3人並んでおり、首を傾げて静香に振り返ると、静香も同じく首を捻ったのだった。





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