表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

■第8話:地味な少年の地道な努力。……えっ、そのマメだらけの手、嫌いじゃないわよ?

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!


魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。

どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!



【場所:神界・ネフェルの部屋】

「さあ! 今日もイケメンのプライドを粉砕する時間よ!」


女神ネフェルは、神界の特等席(モニター前)で、ポップコーンを片手にワクワクと待機していた。

王都のトップ層を壊滅させた好子が、次にどんな鼻持ちならない男を血祭りにあげるのか。すっかり「好子推し」となったネフェルの毎日の生きがいである。


「おや? 今日の好子様は、ずいぶんと寂れた場所を歩いているわね……?」


画面の中の好子は、華やかな大通りを避け、王都の隅にある古びた下町の鍛練場へと足を踏み入れていた。



【場所:王都・下町の古い鍛練場】

「……998! 999! 1000……ッ!」


夕暮れの鍛練場。

そこで一人、木剣を振るっている少年がいた。

見習い騎士のフィン。そばかす顔で、背も低く、お世辞にも「イケメン」とは呼べない、どこにでもいる平凡な少年だ。


しかし、彼の道着は汗で重く沈み、その手はマメが潰れてテーピングだらけだった。


「……ふぅ。よし、次は足捌きの反復だ」


フィンが息を整え、再び構え直そうとした時。


「……邪魔して悪いかしら」

「ひゃっ!?」


フィンは、背後からかけられた声に驚き、勢いよく振り返った。


そこには、夕日を背に受けて神々しく輝く、絶世の美女――好子が立っていた。


「あ、あ、あのっ! す、すみません! むさ苦しい所で! 今すぐどきます!」


フィンは慌てて木剣を隠し、顔を真っ赤にしてお辞儀をした。


王都の噂で「恐ろしく美しいが、冷酷無比な氷の女王」がいることは彼も知っていた。自分のような平民の小僧が視界に入れば、何を言われるかわからない。


神界のネフェルがゴクリと唾を飲む。


(ああっ、可哀想なフィン少年! 好子様に『汗臭い』とか『視界のノイズ』とか言われて泣かされちゃうのね!)

しかし。

好子は、逃げようとするフィンの前へと静かに歩み寄り、その手元――ボロボロになった木剣と、テーピングだらけの指先を見つめた。


「……あなた。さっきの素振り、重心が全くブレていなかったわね」

「えっ……?」


好子は、かつて武闘団長のガレン(筋肉ダルマ)を論破した時と同じように、鋭い目でフィンを観察した。


「踏み込みの足の角度、剣を止める時の背筋の張り。……派手さはないけれど、ごまかしの一切ない、実直で完璧な基礎の動きだったわ」

「見栄を張るためじゃなく、本当に自分を強くするために振っている剣ね」


好子は、フィンの顔を真っ直ぐに見つめた。


「あなた、名前は?」

「ふ、フィンです……! 下級騎士の見習いで……その、才能がないから、人一倍練習しないと追いつけなくて……」


フィンが恥ずかしそうに俯く。

すると、好子はふっと、氷が溶けるような「優しく、柔らかい微笑み」を浮かべた。


「才能がない? 誰がそんなこと言ったの。自分と向き合って、泥臭く研鑽を積めること自体が、何よりも得難い才能よ」


好子は、懐から最高級のシルクのハンカチを取り出すと、それをフィンの手にそっと握らせた。


「……えっ?」

「顔だけを飾って中身が空っぽな男たちに比べたら、あなたのそのマメだらけの手の方が、よっぽど価値があるわ」


好子は、フィンの頭を軽くポンと撫でた。


「自信を持ちなさい、フィン。そのまま磨き続ければ、あなたはいつか必ず『本物』になるわ」

「そのハンカチはあげる。汗を拭くのに使いなさい。……また気が向いたら、見学に来てあげるから」


好子は、それだけ言うと、夕暮れの街へと静かに歩き去っていった。


「あ……ありがとうございます……っ!!」


フィンは、好子の残り香がするハンカチを両手で握り締め、深く、深く一礼した。

彼の心に、これ以上ないほどの「最強の自己肯定感」が灯った瞬間だった。



【場所:神界・ネフェルの部屋】

「…………ズッッッッキュゥゥゥゥンッ!!」


ネフェルは、モニターの前で胸を押さえて倒れ伏していた。


「な……なによ今の……!!」

「高飛車で冷酷な女王様が……ひたむきな努力だけは認めて、ふっと見せる聖母のような微笑み……!!」


ネフェルは、床をバンバンと叩いてのたうち回った。


「いわゆる『ギャップ萌え』じゃないのォォォッ!!」

「ズルい! なにあの完璧なツンデレ(?)! ただ男をフッて回るだけじゃなくて、ちゃんと相手の本質を見てるなんて……!」


ネフェルは、好子の解像度がさらに上がり、狂喜と尊さでオーバーヒートしていた。


「ああっ……! フィン少年が羨ましい!! 私も! 私も好子様に頭ポンってされたいィィィッ!!」

「ダメよネフェル、私には神としての威厳が……いや、もうそんなのどうでもいいわ! 今すぐ地上に降りて、好子様の前でスクワット1万回してくる!!」


こうして、好子の「気まぐれな優しさ」によって、一人の見習い騎士の未来が大きく開かれ……同時に、一柱の女神の尊厳が完全に天に召されたのだった。

(第5弾・第8話・完)


本日もお読みいただき、ありがとうございました!


もし少しでも「面白い」「好子さんメンタル強すぎ!」と笑っていただけましたら、

ページ下部にある【☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけますと、毎日の執筆の大きな励みになります!

(ブックマークへのご登録も、大変嬉しいです!)


それでは、また次回の更新でお会いしましょう。

今後とも宜しくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ