第32話 教会①
「シルバー、着いたぞ」
「ほわぁ!」
馬車が止まり。兄様に抱えられながら、馬車を降りる。すると白くて大きな教会が僕たちを出迎えた。立派な建物に思わず驚きの声を上げる。この大きな教会はゲーム内で、ヒロインが邪神竜と神聖竜について話を受ける場所だ。
ゲーム内で登場した場所に訪れることが出来て、より一層気持ちが高揚する。
「ふふふ、シルバーは御機嫌ね」
「本当に、緊張しないとは凄いね」
僕のはしゃぐ反応を見て、両親が優しく微笑む。
「あぅぅ……」
急に恥ずかしくなり、兄様の肩に顔を埋める。両親は素直な感想を伝えただけだが、僕には前世で大人だった記憶がある。幼児の体に引き摺られて、はしゃいでしまったのが恥ずかしいのだ。
「あらあら? シルバー? 可愛いお顔を隠してしまうの?」
「ほら、あちらに神聖竜様の像があるよ?」
母様と父様は俺が顔を隠すと、不思議そうに声をかける。大変申し訳ないが、今は幼児として浮かれてしまった恥ずかしさに打ち震えているに忙しい。
「むぅ……」
「大丈夫だ。シルバー」
恥ずかしさから未だ顔を上げることは出来ない。だが、母様と父様を無視するのは心が痛む。如何したものかと考えていると、兄様が僕の背中を優しく撫でた。
「う?」
兄様が『大丈夫』だと言うなど、大丈夫なのだろうが何をするのか気になる。
「母上、父上。シルバーが初めて教会を訪れ、楽しそうにしているのが大変可愛いのは分かりますが……。シルバーは幼いながらも、個人としても王族としても責任感があります。ですからシルバーは、少しはしゃいだことを自身で反省しているのです。少しお待ちください」
何をするのだろうと思っていると、兄様は母様と父様に対して僕が反省中だと伝えてくれた。本当に兄様は僕のことを分かってくれている。
「まあ! そうだったのですね。ふふっ、ブラックの言う通りですね」
「そうだね。シルバーの反応が可愛くてついつい……。ブラックは本当にシルバーのことを見てくれているね」
母様と父様の優しい声に、僕は少し顔を上げた。すると、母様と父様が楽しそうに笑う様子が見える。そして父様が兄様の頭を撫でた。
「い、いえ……私は……シルバーのお兄なので当然のことです……」
兄様は頬を少し赤くすると、僕の兄であるから当たり前だと伝える。如何やら、頭を撫でられて照れているようだ。貴重な兄様の表情である。
「にぃ! いこぉ!」
褒められることは良いことだ。現に兄様はとても良い子である。何よりも優しい。そして僕のことを気にかけてくれているし、気持ちも代弁してくれているのだ。もっと褒められるべきである。僕は珍しい状況に便乗することにした。短い手を伸ばして兄様を撫でる。腕が短く頬を撫でる形になってしまったが仕方がない。
「シ、シルバー。……ありがとう」
「あぃ!」
兄様は少し赤い瞳を見開くと、短くお礼を告げる。それに僕は元気に返事をした。母様と父様も優しく微笑んでいる。優しい空間だ。
「皆様、お待たせしました」
司祭の服を着た数人の男性たちが、現れた。




