第31話 馬車
連載再開しました。
「わぁ! きゃあ!」
僕は馬車の外の景色に、歓喜の声を上げる。
「ふふっ、楽しいか?」
「あい!!」
俺を抱えた兄様が優しく笑う。子どものように、窓の外の景色を見てはしゃぐのは、少々恥ずかしい。だが、今の僕は幼児であるから仕方がないのだ。兄様を見上げると、僕は元気よく返事をした。
「シルバーは城の外に出るのは初めてだからね。珍しく仕方がないんだよ」
「ええ、そうですね」
向かい側に座っている父様と母様が微笑む。今日は家族での初めてのお出かけである。父様が言う通り、僕は生まれてからお城を出たことがない。乙女ゲームの舞台である王都の街並みを見ることが出来て、僕はとても楽しいのだ。だが、僕が大興奮しているのは、単にゲームの風景を見ることが出来ているからではない。
「むぅ……いゆ! しょ!」
僕が大興奮している理由は家族でお出かけが出来ているからだ。僕は頬を膨らませると、父様と母様、兄様とのお出かけが出来ているからだと主張をする。未だに難しい言葉は喋ることが出来ない為、家族の顔を見回して両手をぎゅっと握る。多分これで意味は伝わる筈だ。
この世界に転生してから、初めて家族のお出かけだ。楽しみで興奮しない方が、無理がある。
「そうだな。シルバーは、家族で出かけられるのが嬉しいのだな」
「あい!!」
予想した通り兄様は、僕の伝えたいところを汲み取ってくれた。肯定するように、兄様を見上げる。
「そうか! シルバーは家族で出かけるのが嬉しいのか! 私も皆で出かけられるは嬉しいよ!」
「ええ、私もですわ。家族で出かけられるのは楽しいですね」
父様と母様も、俺の主張に賛同してくれた。笑顔の両親を見ると、僕も嬉しくなる。今日まで、家族で王城を出て過ごすことなかった。前世一般人だった僕にはわからないが、王族においては、家族一緒に出かけることは珍しいことなのかもしれない。
出来れば、一緒に出かけられる機会が増えたら嬉しいと思う。
「シルバー。馬車には酔ってなさそうだが、体調は大丈夫か? 緊張はしていないか?」
「う? あい!」
兄様を気遣うように、体調を訊ねる。僕は家族とお出かけ出来ることに、大興奮するぐらいに体調は良好であり、万全である。僕は両手を上げると、兄様に元気アピールをした。
今日は家族のお出かけである。その出かけている理由は、僕の魔力を測定することだ。以前の僕が使用した魔法のこともあり、魔力の測定をすることになった。向かっているのは、教会である。
初めての外出と、魔力の測定をするということから、兄様が僕のことを心配してくれているのだ。本当に優しい兄様である。
「それなら良い。何か体調に問題があれば些細なことでも、直ぐに私に言え。いいな? シルバー?」
「にぃ! あい!」
真剣な表情で兄様が、これからの注意事項を伝えられた。兄様の気遣いに元気良く返事をする。
「良い子だ」
穏やかな笑みを浮かべると、兄様は僕の頭を撫でた。




