表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーム史上最強最悪の悪役皇太子の弟に転生したので、兄様の悪役化を断固阻止します!  作者: 星雷はやと@書籍化作業中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/30

第22話 練習①

 

「うぅ……くぅ……」


 麗らかな昼下がり。僕は自分の部屋にて、ローテーブルに掴まりながら唸り声を上げる。何処か体調が悪い訳ではない。僕は今後のことに関して、此処で頑張らなくてはならないのだ。


「シルバー殿下、もう少しです!」

「頑張ってください!」


 僕の前後から、メイドさんたちも応援をしてくれている。


「むぅ……くぅ……あぅ!」


 声援に答えるように、僕は両足に力を入れる。そして掴んでいたソファーテーブルの淵を、そっと離した。すると体が、ぐらぐらと揺れる。上半身と下半身のバランスが取ることが出来ずに、後方へと倒れた。


「シルバー殿下っ!」

「うぁ……」


 咄嗟に後方で控えていたメイドさんが、僕の背中を受け止めてくれた。そのおかげで後頭部を強打することなく済んだ。ほっと息を吐く。そういえば以前もこの様なことがあった。あの時、神聖竜が助けてくれたのだ。体が小さく幼いと不便である。


「御無事ですか!? シルバー殿下?」

「何処か痛むところはございませんか!?」

「あぃ!」


 メイドさん達が焦った表情で、僕に怪我がないか尋ねる。助けてもらえたので、大丈夫だという意味を込めて元気良く返事をした。

 僕が先程から唸り声を上げていたのは、自身の力で立ち上がり歩く練習のためである。


「御無事で良かったです」

「本当に、殿下に怪我が無くて良かったわ」


 僕の返事を聞くと、二人のメイドさんたちは胸を撫で下ろした。僕が怪我をすると、メイドさんたちが怒られてしまうのだ。前世での小さい頃はよく転んでいたが、この世界では第二皇子という立場である。安全確保に余念がないのだ。

 父親と母様は優しいから、少しぐらいの怪我では怒るとは思えない。成長には多少の怪我は必要だ。しかし、先程のように頭を強く打つなどの怪我は確かに危険である。助けてもらえたことに感謝をする。


「むぅ!」


 メイドさんの膝の上から立ち上がり、再び自分で歩く練習をする。何故、歩く練習をしているかといえば、答えは簡単だ。邪神竜の復活を目論む悪しき者たちから、兄様を守る為である。

 神聖竜を除けば、兄様が悪しき者たちに狙われていることを知るのは僕だけだ。つまり僕が率先して兄様を守らなければならない。これは義務ではなく、単に優しい兄様を守りたいという個人的な気持ちからだ。加えてゲーム内で見たブラックのような、残虐性で冷酷非道な乙女ゲーム史上最強最悪の悪役皇太子になって欲しくない。


 本来であれば兄様に危険が迫っていることを、父様と母様に報告するべきである。


 だが僕は幼児だ。説明をしようにも字を書くことも、未だに上手く言葉を喋ることが出来ない。ある程度難しい話しを出来るようになるのは、三歳頃だろう。それまで神聖竜以外の協力を得ることは難しいのだ。邪神竜を封じた神聖竜の協力は、大変心強い。

 しかし兄様に悪しき者たちが危害を加えようとした際に、僕がその場に居なければ意味がないのだ。神聖竜の力を行使することが出来るのは『愛し子』である僕だけである。兄様の危機に駆け付けることが出来なければ、神聖竜の力も使うことが出来ない。

 更に言えば、先日の誕生パーティーで神聖竜の力を行使した。初めての魔法と幼児の体である為、仕方がないことかもしれないが疲れて寝てしまったのだ。一回魔法を発動しただけで寝ていたら、悪しき者たちが複数人来た場合は対処しきれない。

 つまり、この自分の足である歩ける為の練習は二つの意味を持つ。行動範囲の拡大により兄様を守る確率を上げること、魔法の行使に必要な体力の向上である。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ