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新たな運命交わるフラグP-1

窓から朝日の光が差し込む、それにより目を覚ました俺はゆっくり上半身を起こし軽く伸びをした後、横で眠る美少女に目を向ける


「こんな可愛い娘と一緒に朝を迎えられるとはな……」


そこには想いを受け止め夜を共にしたクイナが静かに寝息を立てていた

昨日のうなされていた顔が嘘のように今はとても穏やかに寝ている、そんなクイナの頭を優しく触れなでてやり


「お前が安心して寝れるように守ってやるからな」


そうつぶやきながら触れていると耳がピクピクっと動いた、だが目は閉じている。これはもしかして……そう思い耳に顔を近づけ軽く息を吹きかける


「ひゃうッ」


クイナがビクッとして目を開ける


「ハハッやっぱり起きてたか!」


「う〜〜エル様の意地悪」


「ごめんごめん、おはようクイナ」


「おはようございます、エル様」


そう言ってクイナは上半身を起こそうとして掛け布団が落ちる、まぁ夜にイチャイチャした後なので二人とも服を着ていないからクイナの綺麗な双丘が現れる、自然と俺もそちらに目がいってしまう


「キャッ」


クイナも気づき急いで隠す


「エル様……見ました?」


「うん、まぁ……と言うか夜にいっぱい見てると思うんだが」


クイナはその言葉に顔を紅くしてしまう


「ところで身体は大丈夫か?」


結構ハッスルハッスルし過ぎたかなと


「はい!大丈夫です。それどころかエル様を感じられてとても幸せです」


自分で言って恥ずかしかったのか両手を頬に持っていきふるふるしている

そんな可愛らしい仕草を見ながらクイナの手に自分の手を重ねて顔を近づけ優しくキスをする。最初はびっくりしたクイナも受け入れてくれる、数秒後口を離した後


「クイナ、今日デートしようか?」


「ふぇっ!」


キスの余韻(よいん)が残った状態で言ったのでクイナから変な声が出た


「でもエル様、今日やる事があるのでは?」


「全部を今日やらなければいけないわけじゃないから空いた時間は食事行ったりクイナの欲しい物買いに行ったりしない?」


「……はい!」


起き上がった俺たちはお互いの身体を水で拭いたあと、着替えて朝食を作る

そして食べながら


「とりあえず今日しとくのはギルドマスターに陛下の手紙を渡しに行くのと親方さんに包丁を作ってもらうことあとは食料を買うぐらいかな」


「本当に今日よろしいのですか?」


「ずっと王城にいてどこにも行けなかったしたまにはゆっくり楽しもう、クイナは行きたいところある?」


「そうですねぇ王都の神殿に行ってみたいです」


「神殿?湖の?」


「あっそちらではなく広場の近くにある女神様の神殿です」


女神様と聞いてふとあのドジっ子女神を思い出す


「どんな女神なんだ?」


「豊穣と慈愛の女神様です。人々に豊かな実りと平和を与えるとされる方で神殿内に石像がありそこで王都の民は祈りを捧げています」


割とまともそうな女神だからルナさんじゃぁないな…


「わかったギルドの後に行ってみよう」


こうして俺とクイナは朝食を食べた後、用事と合わせてデートする事になった、ちなみに今日のクイナの衣装はマーメイドで買ったワンピースの服だ…

これに麦わら帽子があったら完璧だ!こんなバカな事を考えながら最初に家から近い親方さんの店に包丁を作ってもらいに行った


「おはよう!親方さんフリスさん」


「おう!来たかエルフィン」

「いらっしゃいエルフィン君クイナちゃん」


「さっそく包丁頼みに来たよ、それとちょうどよかったフリスさん、これ」


親方の奥さんにドレッシングのレシピを渡す


「あら!ありがとう、これでこの人に野菜を食べてもらえるわ」


レシピを見たフリスさんは喜んでいるが親方はフンっと鼻を鳴らしている、まぁ文句を言わないので嫌ではないのだろう


「じゃぁクイナ、親方さんに欲しい包丁を作ってもらいな、お金はかかっていいから」


「何言ってやがるこれは祝いだから代金はいらねぇ!どうしてもって言うならさっきのレシピが代金って事にしとけ」


「ハハッわかりました!お願いします」


その後クイナが親方に頼んだ包丁は3種類になった


「夕方にはできてるだろうから取りに来てくれ」


「了解!お願いします」


「おう!」


親方の店を出たら今度は掃除屋(スイーパーズ)ギルドに向かう、中に入ると受付にうさぎの獣人のミミさんが居た


「ミミさんおはようございます」


「あっおはようございますエルフィンさん、ずいぶんと久しぶりですね」


「期間の長い依頼を受けまして」


「そうですか、それで今日はどういったご用件でしょうか?依頼の報告ですか?」


「はい、それとこれをギルドマスターに渡すように言われたんですけど」


「お預かりします、こちらどちらからですか?………あれっ」


渡した便箋(びんせん)の閉じてある封蝋(ふうろう)の刻印を見てミミさんが固まっている


「これって王家の紋章……って事は国王様から……イヤイヤさすがにそれは……でも他にないし……」


ミミさんがぶつぶつ言い始め若干混乱状態になっていた、するとそこに


「どうしたのミルミナ?あたふたして」


「センパ〜〜イ」


なんか凄い既視感があるけど、混乱状態のミミさんの所にキサラが様子を見に来た


「おはようございますキサラさん」


「あら!おはようございますエルフィンさんお久しぶりですね。今日はどういったご用件でしょうか?」


「今ミミさんが持ってる手紙をギルドマスターに渡すように言われて来たんです」


ミミさんから手紙を受け取り確認している


「マスターに確認するので少々お待ち下さい」


受付の奥に行ったキサラさんが水晶玉みたいなのに話しかけている

確認を終えたキサラさんが戻って来た


「お待たせしました。マスターがお会いになるそうなんですが出来れば二人で話したいとの事です」


「二人で、ですか」


そう言ってクイナの方を見る


「私でしたらここでお待ちしています」


「クイナ1人にするのもなぁ」


それを聞いてたミミさんが


「でしたら私が一緒にいますよ、これからちょうど休憩時間ですし…」


「ではお願いします、クイナちょっと行ってくるね」


「はい!」


キサラさんの案内で受付の横の階段を上がって二階の奥に行く、そこに少し大きめの扉があった


「失礼します、エルフィンさんをお連れしました」


「入りなさい」


中から比較的に若そうな声が聞こえる


「初めましてエルフィン君、私がギルドマスターのアルフィードだ」


「どうもよろしくお願いします」


待っていたのは長めの金髪に緑の目をしたエルフが立っていた

俺が入って挨拶するとキサラさんは部屋から出て行きマスターから


「とりあえずそこにかけてくれ」


そう言われてソファーに腰掛ける


「君の事はキサラから聞いているよ凄い人が登録に来たってね」


「自分ではどこが凄いのかわかりませんが……」


「ハハッ登録時点で王級職業(ジョブ)が三つなんてまずないからね。」


「そういうもんですか」


「君がミハエルさんの身内でなければなんの冗談だと思うだろうね」


「あれ?じいちゃん知ってるんですか?」


「もちろん、私は200年ギルドマスターをやってるからね」


200年!さすがエルフ見た目若くても年取ってるなぁ…

てことはフリスさんも…ひゃっ!!なんだ急に悪寒が……うん、触れないでおこう


「じいちゃんも凄かったんですか?」


「今の君ほどではないけれどね、あの人も君と同じ歳ぐらいに登録に来たけどその時すでに弓士と錬金術士の二つが達人級になっていた、これでも凄い事だからね」


「そうなんですか」


「そこから活躍をして英雄になったんだ」


「活躍って何したんですか」


魔物氾濫(スタンピード)の鎮圧に回復魔法と錬金術で伝染病の沈静、伝説級の魔物の討伐、錬金術による発明などあげたらキリがないけどそれでギルドランクもSS(ダブルエス)になったんだよ」


「へぇ〜」


じいちゃん色々やってんな〜こんだけやってよく俺にちょっと活躍したとか言ったもんだ


「さて本題に入ろうか、陛下からの手紙を読ませてもらって王太子の件はワール氏からの依頼という事で処理しておくよ、そしてランクに関しては君はすでに商人の護衛に盗賊の討伐、高ランクの魔物の討伐を確認しているからCランクに昇格しておくよ」


「3ランクアップもいいんですか!」


「実力を考えるとAやBでもいいんだけど実質まだ依頼は1件達成しただけだからね、一気に上げるといろいろと周りが絡んでくるし時期を見て上げさせてもらうよ」


「十分ですよありがとうございます」


「それともう1つ、君に一人で来てもらったことについてだが」


「はい、なんでしょう」


「エルフィン君は渡り人かい?」


一瞬ドキッとしたがわざわざ2人っきりになるように手配をした人だしここで嘘をつくと後々バレた時に面倒になりそう……まぁこの人なら悪いようにはしないだろう


「……そうです、よくわかりましたね」


「その歳でこれ程の実力を持っているからね、渡り人は何かしら恩恵を受けていて成長が早いらしい、まぁ半分くらいは勘だ」


「それで俺はどうなりますか?」


「あぁ済まない、渡り人だからどうこうするわけではないよ。個人的な興味みたいな物だから、ただ周りに言いふらさないでもらえると助かる」


「構いませんが理由を聞いてもいいですか?」


「渡り人は結構古い伝承や文献に出てくるんだけど先程も言ったように恩恵や特殊な能力を持ってる事が多い、それを知った者が悪い事を考えないとも限らないからね」


「なるほど、わかりました。ただ俺の所有奴隷であるクイナには話してるんですが…」


「その辺の人選は任せるよ、知ってた方がいい者もいるだろうしね。私からはこれで終わりだからさっそくランクの手続きをしようか、あまり時間を取らせるのも申し訳ないしね」


そう言って机の上にある水晶玉に話しかける、2〜3分後


「失礼します」


キサラさんが入って来た


「キサラ主任この内容でエルフィン君のランクアップを頼む」


キサラさんにメモを書いた紙を渡している


「かしこまりました」


「エルフィン君何かあったらいつでも来なさい、相談に乗るから」


「はい、ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」


一礼をして部屋を後にする


「それではランクアップの手続きをしますのでしばらくお待ち下さい」


「はい、お願いします」


手続きをする為にギルドマスターの部屋を出てクイナの待っている 1階に戻ろうと階段の近くに差し掛かった時1階がなんかざわついている音がした。そして下が見える位置に来た時


「触らないで下さい!!」


……遡ること数分前


同じ獣人というのもあってクイナとミルミナは仲良くお話をしていた


「クイナちゃん大変だったんだね」


「辛かった時期もありましたけど今はエル様のおかげで毎日が楽しいですよ」


「エルフィンさんに大切にしてもらってるよねクイナちゃんって」


「いつも気にかけてもらってとても嬉しいです」


「クイナちゃん本当にエルフィンさんが好きだねぇ〜」


「えへへっ」


クイナはテレながらも笑顔で答える、そこにキサラが来て


「ミルミナそろそろ休憩時間終わりでしょ?仕事しなさい」


「センパイ私はエルフィンさんからクイナちゃんを任されているんですよ」


「まったく、エルフィンさんとギルドマスターの話が終わるまでだからね」


「は〜い」


「クイナちゃんそろそろ終わる頃だからもうちょっと待ってね」


「はい、大丈夫です」


そんな話をしていると奥の水晶玉が光、キサラが応える


「クイナちゃん終わったみたいだからそこにいてね」


「はい!」


そしてキサラが二階に上がって行った時だった


「おい!そこの奴隷の嬢ちゃん!」


声がした方を見るとガラの悪い男が二人いた、よく見ると片方は前にギルドのカフェで絡んできた小悪党だ


「はい、なんでしょう?」


「こんな所で一人でいるなら俺たちの相手をしろ!」


「私はここでご主人様を待っているのでお断りします」


毅然(きぜん)とした態度で対応したが男達はそれが気に食わなかったらしく


「奴隷が生意気言ってんじゃねぇ!」


「兄貴こいつ前に話したガキの奴隷ですぜ」


「この女か!たしかにいい顔してるなぁ」


男二人が下衆な顔でクイナを見ている、見かねたミルミナが割り込んでくる


「ちょっとあなた達他人の所有奴隷に許可なく触れるのは違法よ!」


「うるせぇ受付嬢は黙ってろ!許可なんて後で取ればいいんだよ!」


男がクイナに向けて腕を伸ばしてくる


「触らないで下さい!!」


クイナが叫んだ時だった、男の伸ばした腕が下に向けて勢いよく下がる

そして次の瞬間


「痛え〜〜!!」


驚いたクイナがよく見ると男の手の甲にナイフが突き刺さっていた


「おい、俺の女に汚い手で触んじゃねぇよ!」


声のする方を見るとそこには


「エル様!」


「クイナ!大丈夫か?」


そう声をかけた後、二階からクイナの近くに飛び降りる。そしてよろめく事なく着地をしてクイナの前に立ち男達を牽制する。するとナイフを刺された男が


「てめぇやりやがったな」


「先に俺の女に手を出したのはお前だろうが」


クイナに少し離れるように合図を出す、クイナはミルミナがいるところまで下がった、そこにキサラさんも二階から降りてきた


「キサラさん()()()()()()許せますか」


俺が頭にきているのがわかったのか仕方ないという感じで応えてくれる


「基本掃除屋(スイーパー)同士の争いにギルドは介入しません、ただ今回はエルフィン様の奴隷に許可なく触れようとしたので正当防衛になります。それを踏まえた上なんですが殺すのは無しでお願いします、片付けが大変なので報告書も面倒ですし」


これはキサラさんもそうとう怒っているなぁ〜でも面倒事は嫌らしい

キサラさんとそんなやり取りをしていると


「このガキが!調子に乗るんじゃねぇぞ」


小悪党の兄貴分の男が手に刺さったナイフを抜き捨てて怒鳴ってくる


「うるせえよ俺達はこれから行くとこがあるんだ、邪魔だからどっか行け」


「だったら地獄に送ってやるよ!」


小悪党の兄貴分……中悪党でいいや、中悪党が怒りのまま殴りかかってくる

俺は殴りかかってくる腕を掴み勢いのまま一本背負いの要領で投げ飛ばし床に叩きつける


「グエッ」


中悪党はカエルが潰れたような声を出してそのまま気絶した


「そこのお前」


「ヒィっ!はい!」


近くにいた小悪党は青筋を立てて震えている


「とっととこのバカ連れて出て行け」


「はい!」


小悪党は中悪党を肩に担いで足早に出ていった


「クイナ怪我はないか?」


クイナが心配なので声をかける


「はい!触られる前にエル様が助けてくれたのでなんともないです」


「そうか、ならよかった」


クイナはいつものように笑顔で応えてくれる、クイナに何事もないなら他のことなんて大したことない


「キサラさんミミさんお騒がせしてすみません」


「気にしないでください。悪いのはあの男達ですから」


「そうですよエルフィンさんは悪くないです!むしろスカッとしました」


話を聞くとあの男達の素行には困ってたらしい


「ではエルフィンさんカードのランクアップをしてくるのでお待ち下さい」


キサラさんが受付の奥に入って行った、そして受付に残ったミミさんがクイナをつつき小声で


「さっきのエルフィンさんカッコよかったね!クイナちゃん目がハートになってたよ」


「ちょっっ!!もうミルミナさん!」


ニシシシっとクイナに話しかけるミミさん、それを聞いてテレ笑いするクイナを見ていた俺、何の話をしてるか分からないが仲いいなぁと思いながら眺めていた。待つこと数分でランクアップが終わったみたいで


「お待たせしました、こちらが新しいカードになります」


新しいカードは前のより材質が変わっていた、キサラさんに聞くと


「Cランクからはミスリル製のカードになります、実力を明確にする為に材質が良くなっています」


さらに裏面を見ると所有奴隷クイナの刻印の他に紋章らしきものが二つ付いている、1つは確かワールさんの商会のやつでもう1つは…


「キサラさんこの百合(ユリ)の花と龍の紋章って確か……」


聞くとキサラさんが小声で


「はい、王家の紋章です。つまり二つの紋章はワール様と国王陛下がエルフィンさんの保証人言わば後ろ盾になるという事です」


「どうしてそんな事になってるんですか?」


「それはこちらが聞きたいです。ただギルドマスターからの指示でなっていたのでおそらく手紙に書かれていたのではないかと」


国王様はまたとんでもない事を……まぁこれで貴族に絡まれてもどうにかできるからありがたく貰っとこう


「これも周りにバレると大変なので隠した方がいいですよ」


「わかりました。そうしときます」


「本日の手続きは以上になります。またのご利用お待ちしています」


「はい、ありがとうございました」


お礼を言って帰ろうとしたらキサラさんが


「あっエルフィンさん」


「はい?」


「うちの旦那が気にしていたので今度時間が空いた時に会ってやってください」


そういえばガドランとも1ヶ月ぐらい会ってなかったな


「わかりました。そうだ!これ俺達の家の場所を書いてあるのでガドランに渡して下さい」


「かしこまりました。渡しておきます」


キサラさんに家の場所を書いた紙を渡しギルドを出た


「それじゃクイナが言ってた神殿に行ってみようか?」


「はい!私もまだ行ったことがないので楽しみです」


今回もギルドで一悶着あったがクイナが気にしてないので忘れることにした

クイナが見たかった神殿は大広場の近くにある


「ここ通る時は馬車だったから見れなかったけど結構デカイな!」


「王都でしかも女神様を祀る神殿ですから」


「これ中入れるの?」


「いつでも祈りを捧げられるように夜間を除いて解放されてるそうですよ」


「じゃあ、入ってみようか」


せっかくなので神殿の中に入ってみることにした、入り口付近に綺麗なステンドグラスがあり神秘的な雰囲気になっていた。所々に精巧な彫刻が施され感動すらしていた……女神像を見るまでは!


「おうっのう」


「えっ!……ちょっ……エル様!大丈夫ですか?」


女神像を見た瞬間俺は目元を()さえうなだれた


「あぁ大丈夫……目にゴミが入っただけだから」


そう特大のゴミが……女神像がどう見てもこの世界に来るきっかけになったルナフレアさんにしか見えないのだ


「?そうですか、あの…ハンカチどうぞ」


「あぁ、ありがとう」


クイナの優しさに涙が出てくる


「えぇとエル様、女神様に祈りを捧げてもいいですか?」


「うん…いいよ…」


精神が安定してきたのでクイナに習って祈りを捧げる


(ルナさんあなたのおかげで波乱万丈に楽しく生きてます)


「それはよかったですぅ」


皮肉った祈りをしたらなんだか聞き覚えのある声が聞こえた

目を開けるとそこにはこの世界に来る前の花畑があり目の前には女神ルナフレアさんが立っていた


「はっ!?なんで俺ここにいるの!俺死んだの?!」


「いえいえ〜あなたの声が聞こえたので意識だけこちらにお呼びしました」


初めて会った時と同じようにのほほんっとした感じで話す


「それにしても驚きましたいきなり貴方の声が聞こえたので…」


「えっ?普通は聞こえないんですか?」


「そりゃそうですよ、祈りの声が全部聞こえたら私頭パンクしちゃいます」


あぁ確かに王都だけでも数千人が祈りを捧げているもんなぁ……ん?


「だったらなんで俺の声は聞こえたんですか?」


「それはですねぇ多分これが原因だと思いますよぉ」


俺の腕を指差しながら言ってくる


「もしかしてこの腕輪ですか?」


「えぇそれが媒介になって声が届いたんだと思いますよ」


「これ貰い物なんですけど凄い物なんですか」


じいちゃんは宝弓とは言っていたから凄い物ではあるんだろうけど……


「そうですね、元々は私達が作ったものですから」


「…………ハイ?」


今なんかとんでもない事言った?


「数千年前に人々が邪龍と戦う時に祈りを捧げた者達に送った対抗する為の武器それがその弓です」


「えっ神が作ったものだから声が届いたと?」


「それもありますがその弓の弦には私の髪が織り込まれているんです」


「そういえばじいちゃんもそんな事言ってた、でもなんで名前が星の女神(スタービーナス)なんです?ルナさん豊穣と慈愛の女神なんでしょ?」


「それは弓に使われている金属が由来ですね」


「金属?」


「この弓には神の金属オリハルコンと暗黒物質ダークマターの融合合金【銀河】を使って作られています」


何その光と闇の金属融合させましたってそんなの可能なの?


「そのふたつ反発属性じゃないんですか?」


「鍛治を司る神がせっかくだから最高の武器を作ってやる!っとものすごいやる気を出してましたので」


「やる気出してできるもんなんですか?」


「相当苦労したようですよ。出来上がった時は燃え尽きて真っ白になってましたから」


どこぞのボクサーみたいになってるじゃねえか!


「黒神金属【銀河】に耐えられる弦も考えた末、高純度ミスリルに私の髪を織り交ぜた物が1番よかったので今の形になりました」


なんか聞くだけでとんでもぶっ飛び武器になってないか?


「ちなみにその弓は破壊不可になってます。私達神でも作った本人にも壊す事はできません」


「神でも壊せないってどう言う事?」


「出来上がった時にそれぞれの物質の遡上効果で性能が跳ね上がりとんでもない事なりました。お手上げ状態です。まあ困ることは無いのでいいですけど……作った本人は狂喜乱舞してましたが」


作った本人さえ想定外の性能になってしまったわけか〜いいものが出来たら嬉しいわな狂喜乱舞は置いといて


「そんな物を俺が持ってていいんですか?」


「悪用さえしなければ問題ないです。悪用使用ものなら天罰が下りますけど」


「怖ぇなぁおい!まぁそのつもりはないけど…それにじいちゃんの形見だし」


「えぇ、ですので気にせずお使い下さい」


「は〜い、そうだ!ルナさんもう1つ聞きたいんですけど」


「ハイ、なんでしょう」


そうこれだけはちゃんと聞いておきたい


「俺の運の上がる能力(スキル)ってどうなっているんですか」


この世界に送られてすぐに死にかけた、じいちゃんに会わなければ確実に死んでたのでちゃんと説明して欲しい


「え?付けましたよ。ちゃんと」


「はい?俺、こっち来てすぐに死にかけたんですけど」


「でも五体満足で生きてますよね?」


「確かに生きてますけど……何つけたんです?ギルドで何も出なかったですよ」


「人が作った物ぐらいで神が与えた能力(スキル)がわかるわけないじゃないですか」


ルナさんが誇らしげにドヤ顔している


「それだと確認の仕様がないじゃないですか!」


そう言うとルナさんが何言ってんのって顔で見てくる


「あなたには固有能力(ユニークスキル)があるじゃないですか」


固有能力(ユニークスキル)って………あっ」


そういえば自分自身にかけて見た事がなかった


検索(サーチ)ステータス」


俺自身に検索(サーチ)をかけて見たするとルナさんが


「あっこれですこれ」


「……天運?」


目の前に表示された画面に職業(ジョブ)能力(スキル)そして恩恵などが表示される


「てかいつも頭の中に表示されるのにこんなの初めてですよ」


「だって私も見るのにこの方がいいでしょ?これオンオフで出来るようにしとくから」


「有難うございます!ってそれはそれとしてこの天運ってなんですか?」


「あなたの助けを必要とする運命(フラグ)を引き寄せる物です」


「引き寄せる?」


「孤独を感じている者、苦痛を受けている者、悲愴感に陥っている者そういった者達と出会いそれを助ける事であなたにとって大切な絆にりあなたが困った時に助けてくれる様になります」


「じゃぁ今の人間関係はこの天運の効果って事?」


「好感度が上がり絆は多少強くなりますが天運はあくまで運命を引き寄せるものですので今のあなたの人間関係はあなた自身の行動により築き上げた結果になります」


「そうですか…」


よかった…クイナ達との関係が能力による物とか言われたら本気で落ち込むとこだった…

引き続きステータス表示を見渡す


職業(ジョブ)〕弓士︰王級/回復術士︰王級/錬金術士︰王級/短剣士︰達人級

固有能力(ユニークスキル)〕万能回復能力/検索能力/完全防犯能力

希少能力(レアスキル)〕言語解読能力/成長促進/収納/全能力適性/記憶力強化

〔恩恵〕天運/女神の加護/神弓の主


「あっ職業(ジョブ)に短剣士が増えてる…カード作る時はなかったのに…なんで?神弓の主?」


俺が頭の上に?マークを出してるとルナさんが


「神弓の主は星の女神(スタービーナス)の所有者でステータス補正がプラスされます。短剣士については短剣を使った戦闘をしませんでした?」


「中悪党にナイフを使ったけど投げただけですよ?」


「投げて正確に当てるのには実力がいりますから…それにギルドにあるカードを作る時の能力を読み取る魔法具は最近の実績が反映させるみたいですよ?もう一度読み取って見たら出てると思います。」


「でも昔からナイフは使ってたんですけどねぇ」


「それはあなたのナイフを使った本来の()()()()が特殊だからでしょう、あんなの誰も思いつきませんよ」


そう今回はただ投げただけ、思い付きで考えたやり方が思いのほか使いやすかったので近接戦闘はナイフを使った変わった戦い方をしている


「なので短剣士として認識するか微妙だったのでしょう…当てはまる職業(ジョブ)もないですし」


「そうっすか……」


「また何かありましたら神殿で祈って頂ければ声が届くはずですのでいらして下さい」


「わかりました。そん時はよろしくお願いします」


「では現世に戻しますね。そうそう近いうちに新たな運命(フラグ)と出逢うみたいですから頑張って下さいませ。それではお元気で〜〜」


「なっ!!そんな重要な事さらっと!ちょっ!」


相変わらずの天然なのか問い質す前に意識が遠のいていく

目を開けると来ていた神殿の風景に戻っていた

ふぅぅっとため息をつくと


「あっエル様」


クイナが声をかけて来た


「ん?どうした?」


「いえ、エル様は信心深いんですね」


「えっなんで?」


祈りを捧げただけで信心深いなら皆そうだと思うけど


「だって30分近くお祈りしてましたよ?」


「30分!?」


俺の感覚だと向こうに5分ぐらいしかいなかったはずだけど………


「なので…あちら…」


そう言ってクイナがある方向を向くとそこには司祭さん達がいて感心したようにこちらを見ていた


「うわぁ俺目立ってた?」


「えぇっと…その…はい」


クイナが困ったようにしながらも答えてくれた。


「……とりあえず出ようか」


「あっはい」


なんか居ずらいので退散することにした。そのまま出るのもなんなので近くに居たシスターらしき人にお布施を渡して神殿を出た。なっちまったもんはしょうがない気持ちを切り替えよう


「クイナ悪かったな時間をとって」


「いえ、そんな事ないですよ」


にしてもルナさん気になること言ってたな、新たな運命(フラグ)との出会いねぇ…何も悪くなくて困った人がいたら助けるけど…何が起こるかわからん以上まぁなるようにしかならんか


「これからどうしようか?お昼にはまだ早いかな、先に食料品買いに行く?遅くなるといい品がなくなりそうだし…」


「私は構いませんよ?確かに早い方が鮮度のいい物が残っているでしょうし」


「それじゃぁ市場に行こうか」


市場は大広場から商店通りに向けて並んでいる、野菜や果物、精肉なかには鮮魚も少ないが商売していた。とりあえず3日分程を目安に買っていく、そして果物店に来た時クイナが


「昨日飲んだ果物のジュースとても美味しかったです」


「作り方教えようか?」


「本当ですか!?なら今度は私が作って差し上げます」


「それは楽しみだ」


フルーツジュースを作るため果物を3、4種類買いクイナに作り方を教える約束をする


「買い物はこれぐらいでいいかな、ちょうどいい時間だしお昼を食べに行こうか」


「はい!」


いい店がないか探すとちょっと高そうだかオシャレなお店を見つけた


「クイナあそこの店にしようか?」


「うわぁとてもオシャレなお店ですね。私が入ってもいいのでしょうか?」


そう言いながら自分の首に付いている奴隷の輪に触れる


「まぁ大丈夫だよ、何か言われたら対処すればいいよ」


「……はい」


クイナは若干不安そうな顔を浮かべながらあとを着いてくる。お店の中は高級レストランの様になっていた、そして中に入るとスタッフらしき人が来て


「いらっしゃいませ」


「2人なんだけどいいかな?」


スタッフがクイナの方を見た後


「少々お待ち下さいませ」


スタッフが奥に入っていた


「エル様…やっぱり私がいるとダメなんじゃ……」


「大丈夫、大丈夫任せて」


クイナが耳を下げ不安そうな顔をする…その時奥から最初と別のスタッフが出てきて


「申し訳ございませんお客様、当店は奴隷同伴の入店はお断りしております」


それを聞いてクイナが下を向いてしまった、まぁこの展開は予想出来たので次の行動に移る


「そこをどうにか出来ませんかねぇ」


そう言いながら出てきたスタッフの手に金貨を2枚握らせる、もちろんクイナから見えないように……するとスタッフが


「……そうですね、では個室をご用意しますのでそちらでもよろしいですか?」


「えぇ構いませんよ。このお店のオススメをお願いします。もちろん彼女にも同じ料理をお願いします」


「かしこまりました。では個室に御案内致します」


その様子にクイナは目をパチクリさせながら見ていた。そして個室に案内され料理が来るまで2人で待つ


「エル様、何かしたんですか?」


「別に頼んだだけだよ?」


すっとぼけな感じでなんの事やらと言い返す


「……エル様、有難うございます…」


「ん?さてどんな料理が出てくるかな」


クイナには何かしたんだろうというのはバレてるようだが心配させない為あくまでしらを切る

出された料理は盛り付けも綺麗で味もとても美味しかった。クイナも顔がほころんでいた。料理を堪能し会計を済ませる、代金は少々高めだったが所持金からしたら大した事ない。

代金を支払い出ようとした時だった、金貨を渡したスタッフが来て


「お客様、こちらを」


そう言いつつワッペンの様な物を渡してきた


「次回御来店の際にはこちらをお見せ下さい。個室へ御案内させて頂きます」


VIPカードみたいな物か?これがあれば止められずに食事ができるということか


「また美味しい料理を食べに来させて頂きます」


「御来店お待ちしております」


スタッフが礼儀正しい挨拶でお見送りしてきた。完全に羽振りのいい客と認識したな。料理は美味しかったし威圧的な態度を取らなかったいい店だからまた来よ


「クイナまた来ような、これさえあれば何も言われないし」


「私、エル様といられてとても幸せです」


クイナはそう言いながら腕にしがみついてきた。……胸…柔ら……!


「せっかくだしこのまま歩くか」


「……ハイ!」


幸せいっぱいの笑顔で返事が返って来る、その後アクセサリーや小物を扱う店や花屋を周りクイナに似合いそうな物を買ってやる。

そしてある店の近くに来た時


「クイナ、久しぶりにあの店に行ってみよう」


「えっあそこって……」


クイナを伴ってある店に入る


「おネエさんいる〜?」


「はぁ〜い!いらっしゃいませ〜」


そう1度見たら忘れられないあの店長がいる店だ…


「あぁ〜ら〜!エルフィンちゃんとクイナちゃん久しぶり!いらっしゃい!」


服屋マーメイドの店長エリザベスである


「お久しぶりです。前回から結構たったので新しい服が入ったか見に来ました」


「うふっ!あるわよ〜」


エリザベス店長は手を鳴らす、すると前回と同じ女性スタッフ2名が現れる


「さぁあなた達!メイクアップよ」


その合図と共に女性スタッフはクイナの両脇を捕まえ奥に連れて行く


「……エル様、行ってきます……」


クイナは半分あきらめ顔で連れていかれる。それを手を振りながら見送る


「それじゃぁ〜エルフィンちゃん!準備が終わるまで前と同じとこで待っててね」


「了〜解」


こうして前と同じ様にクイナを待つ、すると裏の方で


「これ大胆すぎませんか!?」


「そんな事ないわよ!クイナちゃんとご主人様、仲は良いみたいだもん!腕を組んで入ってくるぐらいだしね!」


「エル様には大変可愛がっていただいています。昨夜も…」


「キャ〜〜!だったらこれ着てさらに可愛がってもらいましょ!」


なんか裏で声が聞こえる……前にもこんな場面があった様な……そう思っているとクイナが顔を出し


「エル様…見て頂いてもいいですか?」


「?あぁいいよ」


クイナの顔が随分紅かったっと思った瞬間


「うわ〜おう!!」


クイナが黒の半透明なキャミソールで出てきた!なんか色々丸見えである


「えっと……その……どうですか?」


「…最高……とても綺麗だよ…」


その言葉にクイナは顔を紅くし照れながら


「ありがとうございます……」


後ろで女性スタッフがハイタッチしながら喜んでいる


「クイナ他にも普段着でいい服があったら選んで来な」


「はい」


クイナも恥ずかしかったのか裏の試着室に入っていった


「……おネェ様」


「黒の他に白と薄紫色があるわよ」


「3色全部で……」


「はぁい」


その後は前回同様のファッションショーである


「これは大昔の文献に出てきた服を近年の色合いにした服です」


「……なんか…浴衣に似てない?」


祭りを思い出すな…


「続いてこちら、普段着には目立ちますがパーティーには打って付けな服です」


「なんだっけ?着物ドレスって感じか?」


着物とドレスを合わせた服で上半分が着物、下半分がドレスみたいになっているが変じゃなく普通に綺麗だ


「クイナがお姫様になった」


「えへへっ」


クイナも満更でもなく楽しんでいる


「こちらは水龍様の神殿にいらっしゃる龍巫女様の服を意識して作った服です。ちゃんと水龍様の神殿から許可を得た服です」


「なんだっけ…ハ○○ラさんって言うんだったっけ」


明治時代の服だったよな、えらい日本の服が多いが昔来た渡り人が残した物か?

その後も5、6着程試着をした


「クイナ、欲しい服はあったかい?」


「どれも素敵で迷います」


着た服をクイナが眺めていた、迷うんだったら…


「おネェ様、これ全部下さい」


「えぇ!」


クイナは驚きの声を上げた


「エル様全部だとかなりの金額になるのでは!」


「でもクイナはどれも気に入ったんだろ?だったら買っちゃおう」


女性スタッフが合計金額を提示する


「こちらの金額になります」


前回よりちょっと高いぐらいか…


「エル様、前もかなりの金額を買ってもらったのに……」


なんか申し訳なさそうなクイナの耳に近づいて小声で


「せっかくのクイナとの初デートだから記念にね」


そう言いながらクイナの髪に花の形をした銀細工の髪飾りをつけてやる。そして後ろの鏡へ誘導する


「ふぁ〜綺麗な髪飾り…」


実はクイナの着替えを待っている間におネェ様に用意してもらった


「気に入ってくれたかな?」


「ハイ!とても!」


そう言いながら抱き着いてきた


「ならよかった。今日はデートなんだから細かいことは気にせず楽しもう」


クイナの頭を撫でながら優しく諭す。それを見ていたおネェ様は「仲がよろしい事ねぇ」とにこやかに見ていた。

代金を払い服をアイテム鞄に入れおネェ様に新作が入る頃にまた来ますと言って店を後にした


「クイナも着替えで疲れたろ?どっかでお茶でもしようか」


「はい、実はちょっと休憩したいところでした」


てへって感じでクイナは伝えてくる

ちょうどいい喫茶店があったのでそこで休憩することにした、ここは奴隷を連れてても特に何も言われなかったのでのんびりできた、100%フルーツジュースとスイーツを注文してゆったりとした時間を満喫した。この世界のスイーツはただ甘い系なのでそのうちカスタードクリームやプリンなんか作ってみるかな…

その後大広場にある噴水前のベンチでクイナとのおしゃべりタイムをした。

そして夕方になろうとしていた


「今日1日とても楽しかったです!エル様」


それはもういい笑顔で感想を言われ俺も嬉しくなる


「また時間を見つけてデートしようか」


「ハイ!」


クイナから元気のいい返事があり、喜んでくれて満足な気分になる…

そう思った時だった、クイナがある方向を見た状態で止まる


「?どうしたクイナ…」


「………ウソ……」


そうつぶやいた瞬間クイナが走り去って行く


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