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幼女兄貴(SSSランク)と僕とダンジョン ~十年磨いた水魔法で、誰も思いつかなかった勝ち方をします~  作者: 葦原エイ
第一章 幼女兄貴救出編

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7部屋目 無茶だけど乗る

 SNSに、応援してくれた方々への感謝コメントをアップし、マスコミ対応をミツオさんに一任した僕は、翌朝、マンション前にメンバーの5人で集まった。


「リスナーの皆さん、おはようございます」


 今日の配信は、Qの【勿忘草】と、猪尾さんの【向日葵】の2体で行っている。



※:おっは~! >薫子様

※:本日はアリスの衣装でおめかしか

※:薫子様 イン ワンダーランド

※:1カメ、2カメ精霊助かる〜



「ムムッ!? おいらも負けねーぞ!」


 深紅の妖精【鳳仙花(ほうせんか)】が、シュルルッと宙を舞った。


「おいらは令嬢様をアピールだいっ!」

「オ~ホホホ! アリスちゃんを手玉に取る、赤のクイーンよ〜!」


 女王様がバッと羽根扇子を広げるや、背後の【鳳仙花】が「イェーイ!」と大の字ジャンプで《自爆》した。



※:雑に処すなやヘッポコw

※:爆発オチなんてサイテー

※:なんで【鳳仙花】すぐ4んでしまうん?

※:ア、アストラルに還ったダケだから(震え声



「シィポン……。動きやすさも考えなさいよ」

「えーっ? でも今日はクイズだけだしー」


 銀髪ウィッグなしの白いシスター服を着た猪尾さんは、呆れた視線をQ次郎へと向けた。


「ま、ナメクジさんほどじゃないけど」

「おいおい、くるみ。俺の羽織袴は機動性にも配慮したぜ?」



※:ほぉ〜? ほざきおるわ(紫色の羽織袴をガン見

※:北九州の成人式かよテメーは!

※:配慮とはいったい……うごごごご



「ん~む。まあ、緊張するよりは良かろ」


 水色のスモック姿のジニーは、ひょいと白帽を被った。そこには「決勝版」と書かれている。



※:キャー! ジニーちゃーん!

※:はたらくジニーさんで草



「くふ。このワシがお主らに、21才の頭脳労働を見せてくれるわ」


 どうみても園児な幼女は、右目をチョキで挟み、左ほほに人差し指を当ててみせた。


「さて、490の日本バージョンじゃが。巨石のボードから平仮名の文字タイルを集めたのち、天秤に入れて答えるようじゃのお、薫?」

「うん。千桜さんたちのチャレンジも改めて確認したよ。番人との戦い、惜しかったね」

「ぴゃっ!? う、うん。えへへ……」



※:なーに照れとんねんw

※:カァー、見んね! 卑しか悪役令嬢ばい

※:開幕ヘッポコ、助かる~



「して、ワシの見立てじゃが。答える時間が10秒掛かるごとに、文字を2コずつ制限するルール……。これは、焦らぬことが肝要じゃ」


 幼女は、余裕たっぷりに伊達メガネをかけた。


「日本語は、他の主要言語よりもタイルが多いじゃろ? 今までの挑戦者は、リタイアがチラつく所為(せい)か、どうしても慌ててしもうたが、落ち着き払えばお茶の子さいさい、茶番も茶番。ヘソで茶を沸かすユルさよの」



※:茶色だけにね! って、ヤカましいわw

※:ほんまジニーさんはお茶目やでぇ

※:まあ70個ぐらいあるしな >タイル

※:こんぐらいのプレッシャーは日常茶飯事よ



 僕らは千桜さんのパイロットでエレベーターに乗ると、ピラミッド内部の雰囲気が漂う490へと転移した。

 部屋についたら、何はともあれ案内板の確認である。



――――――――――――――――――――


 490 オシリスの謎


・1人で1問解け、慎重に。

・2人で2問解け、のびやかに。

・3人で3問解け、優雅に。

・4人で4問解け、にぎやかに。



――――――――――――――――――――



 ――すごく自由だよね、後半の文言。


 僕は、隣に立つ黄色い看板にも目をやった。



――――――――――――――――――――


    オシリスの謎・基本ルール


・タイルを羽根の上皿に入れて答えよ。

・人数分の問題を解けばクリアとなる。


◆天秤に乗ったパイロットは、1回だけ、

「1問解答扱い」か「他メンバー全員の帰

還」のいずれかが選択可能となる。

なお、そのパイロットは、番人と戦うまで

降りられず、この部屋で死んだら強制リタ

イアとなる。


――――――――――――――――――――



 ――乗ったパイロットは、途中で逃げられない。

 そこで死ねば強制リタイア。

 千桜さんには、できる限り乗らせたくないな。


 異世界つっぱり棒(ゲートストッパー)でエレベーターを開け放しにした僕らは、荘厳な石造りの部屋へと足を踏み入れた。

 20m四方の空間の中央には、人が乗れるほど巨大な天秤が鎮座ましましている。向かって左側の上皿には羽根の絵が、右側には心臓の絵が描かれていた。心臓の上皿には、飛行機のタラップのように、昇るための石階段もセットされている。


「やあ、おはよう」


 天秤の前では、緑色の肌をした上半身裸の青年が出迎えてくれた。


「4月に来るとは珍しいな。日本の挑戦者は3月が多いから」

「急用が出来ましたので」

「ああ、知ってる。君の睡蓮が美味しそうに食べてたものな」



※:やっぱ視てたよ、この冥府の神w

※:「緑はイヤらしいですぞ!」

※:でぇじょうぶだ、こっちにもナメクジがいる

※:ナ×ック星人VSナメクジ、ふぁい!(瞬コロ



 青年は胸を叩いた。


「予はオシリス。冥界では死者の心臓を天秤に乗せ、その善し悪しを判断している」

「魂の計量、プシコスタジーですね」

「おや、予習かい? 感心だ」



※:マアトの羽と重さを比較するんやで

※:あるいは女神像とやぞ

※:↑ずいぶん勉強したな…まるでエジプト博士だ

※:日本で言うと閻魔様か



「では始めるとするか。君らは答えの単語を文字タイルで作り、羽根の上皿に投げ入れてくれ」

「最後の問題は、番人を倒すのもセットですよね?」

「ああ。上皿に入れたタイルの数が多いほど、番人は力をセーブするな」

「1つも入れていなければ、本来の力だとか」

「その通りだ」


 ――クイズでタイルを稼ぐほど、最後の戦いが楽になる。よし、今までの人たちと同じだ。


 問題を解くことと番人戦は、別々じゃない。


「それでは次に、審判を呼ぼう」


 オシリス神が指を弾くと、天秤の真ん中に木製の机一式が現れた。


「席にいる彼はトート。予が問題を出すさい、判定まで行ってはお手盛りだからな。こうして審判を頼んでいる」

「いや、いねえぞ?」

「え」


 Qの指摘にオシリスが振り向いた。


 誰もいない。


「あれ? おーい、トート?」



※:おらへんで草

※:机がトート神やったか?(すっとぼけ



「え、嘘。マジ?」

「マジです、オシリス」

「いるじゃん!」



※:後ろから、ぬ゛っ!w

※:この動きは…トキ!(テーレッテー



 朱鷺(とき)の頭に成人男性の体をした神、トート。冥界では書記係をしていて、書物の管理者とも呼ばれる。


「私は翻訳も担っています。言葉が通じない場合、そもそもオシリスの問題が分からないので。それは、本質ではありません」

「予をオドかすのも、本質じゃないよなあ!?」



※:冥府の神のバックを取る、悪知恵の神よw

※:これ絶対サスペンスで最初にやられるヤツー

※:「お」まえは「しりす」ぎた



「閑話休題(かんわきゅうだい)。あなた達が問題に答えるさい、オシリスと私も答えを提示します」

「マイペースだな……、トート」

「審判なのでね、オシリス」


 トート神はふわりと浮いた。


「私の答えが、文字数の基準になります」


 背中の巨大なパフォーマンス筆を机の脇に置いて着席する。


「あなた達の答えが、私の文字数以上なら、上皿にタイルを5つ追加します。さらに、用意されている100問の題名を見て、次の問題を選べます」


 ――番人を弱くできるうえに、次の問題まで選べるのか。


「では、僕らの答えがトート様の文字数に届かなかったら?」

「次の問題を選ぶのはオシリスです。ただし、彼も私の文字数に届かなければ、選べる問題が限られます。なお、オシリスが選ぶ場合に、タイルの変動はありません」


 ――オシリス神に選ばせると、得意な問題をぶつけてくるだろう。

 ここで主導権は渡したくない。


「おおっと、予としたことが。肝心のタイル紹介がまだだったな」


 オシリス神は、黄金のスカラベが意匠された右手の小指の指輪(ピンキーリング)をなでた。


「今日はサービスだ。文字に加えて、数字も用意しよう」

「あ、ありがとうございます」


 やった、使えるタイルが10増える!


 オシリス神が再び指を鳴らすと、天秤の両脇に巨石がせり上がってきた。向かって右が、たまに出てくる数字タイルで、左の羽根側が、いつもの日本語タイルだろう。


「――あれ?」

「どうした、相棒?」

「なんか、左の石に文字が彫られてるような……」

「んー、どれどれ? 最初は……Aかァ?」

「筆記体ね」


 猪尾さんが、心底イヤそうに吐き捨てた。


「しっかり綴(つづ)られてるわ。『アルファベット』って」

「だよね、コレ。まさか……?」

「フッフッフッフ」


 オシリスは、カールした顎髭(あごひげ)の先端を優雅に擦(さす)っていた。


「最近は日本語が続いたのでな。たまには、英語のアルファベットも乙(おつ)だろう?」



※:うーわ! コイツやりやがった!

※:難易度デレかと思ったら鬼かよォ!?

※:待って、ジニーさんがピカソにw



「――え、えげれす語?」

「うわっととと……。お、お兄さん(・・・・)」


 千桜さんが、フラつく幼女を支えた。


「あの、『マンション内は自動翻訳だから、英語は捨てた』とかいうウワサ……、さすがに嘘ですよね? お兄さんはムリでも、ジ(・)ニ(・)ー(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)なら大丈夫ですよね、ね!?」

「ワ、ワシ……」


 震える手でメガネを外したジニーは、ギュッと目をつぶった。


「にほんごしか、わからん……! だってワシ、よんさいじゃから……!」



※:ジ、ジニキー!(号泣)

※:令嬢も崩れおちたァーッ!

※:おいたわしや、兄上……

※:英語はお茶濁してたし残当



(あー、君たち)


 オシリス神から【精神感応(テレパシー)】がきた。


(わざわざタイルを変えた本当(・・)の理由、察しがつくよね?)

(んぐっ……、ワシが精霊じゃからか)

(そう。予が問題を出すのは、答えを通じて、人(・)間(・)の生きてきた軌跡が見たいからだ。なのに、【牡丹一華(アネモネ)】の君が、人間のフリまでして頭数に入る? 相当ズルいよね)

(おーっと、オシリスさんよ)


 Qが手で制した。


(精霊だの人間だので分けるのは、そりゃもう差別だぜ。これだけ喋れて意思もあるなら、人間カウントでいいだろ?)

(――君は、Q次郎だったかな)

(おうよ。あとなァ、ジニーは英語じゃ戦力外だ。実質4人で5問なら、制裁としても十分すぎンだろ)

(ふむ、実にお喋りだね)

(お誉(ほ)めの言葉ありがとよ)

(神にも臆さず、大した強弁だ。――褒美に、ジニーが精霊だと暴露してやろう。この場でな)

(ゲッ!)


 Qはスグにひれ伏した。


「マジすんませんっした、オシリス様!」

「――君、変わり身早いね」

「薫、汐音、くるみ! おめーらも頭下げろ!」

「誰のせいよ」

「くるみ下げろ!」


 一同そろって頭を垂れると、オシリス神はため息を吐いた。


「まあ、盤外戦術は予の本意ではない。全力の叡智(えいち)を見たいダケだよ。本来、日本語の話者にアルファベットなど邪道だからな。――ああ、これは本心だぞ? フッフッフッフ……」



※:なにワロてんねんw

※:絶対ウソで草

※:い、一部視聴者にも刺さるのヤメロ(ドキドキ



「おお、そうだ。叡智を楽しめるよう、制限時間にも趣向を凝らそうか」


 指をパチンと鳴らすや、周囲の壁に等間隔で巨大なオブジェ群が出現した。砂時計に似ているが、中身は水で、合計42個。


「くびれのことを蜂の腰(オリフィス)と言うのだが、水時計のここを大きく広げて、1(・)秒(・)ずつにするのはどうだろう?」

「ええっ!?」

「おや薫、なぜ驚く? 予からの謎は、まだ始まっていないんだ。つまり君らは、不服ならいつでも帰れるんだぞ? 無傷でな」

「うぐっ……」



※:ロコツに足下を見てる……イヤらしい

※:別ルートで再走だろ

※:うがぁー、でも他の部屋もキッツいぞー・・・って、令嬢!?

※:オイオイ!!のぼってるー!!!!!



「――千桜さん!?」

「菊知くん、分かったわ……。理不尽なルールをはねのける方法が」


 階段を昇りきったお嬢様が、ガシャンと心臓の上皿に飛び移る。


「さっさと乗っちゃえば良かったのよ」

「千桜さん!!」


 アッサリ行ったため、却って止められなかった。


「ム……ムチャだ! 今の1秒ルールが!!」

「いいえ、菊知くん。さっきのは『どうだろう?』でしょう? まだ提案よ」


 千桜さんは、天秤の真ん中へ顔を向けた。


「ですよね、トート様?」

「ええ。変更は認めていません。制限は従来どおり、10秒ごとです」


 ――セーフだった。


 けれども、心臓の上皿からはもう降りられない。


「前に来たときも、トート様は公平だったわ」


 千桜さんはほほえんだ。


「だから、そこは信じてたの」

「千桜さん……」

「無傷で帰れるうちは、オシリスも『嫌なら帰れ』って言えるわ。でも、ここで引き返したら、もう間に合わないでしょう?」


 親指をグッと立てる。


「だから、あたしは乗ったの。あたしの意志でね」


 不敵に笑った千桜さんは、一転、オシリスを冷ややかに見下ろした。


「ねえ、神様。人間の生きてきた軌跡をご所望? なら、とくとご照覧あれ」


 立てていた親指を、くるっと下に向ける。


「選ぶわ。『1問解答扱い』」

「――いいだろう」

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