第11話:【義務配信】一年後の掲示板と、色褪せない『探しています』
新宿ダンジョンの1層で、D〜Cランクの中堅冒険者たちが「Fランクのおっさんが5層のボスを超えられるわけがない」と勝手に決めつけ、初心者エリアの泥沼を這い回ったあの大捜索から、早いもので一年の月日が流れていた。
ネットを一時的に賑わせた「ジャージおじ世界1位説」は完全に風化し、世間では「クオリティが高すぎる架空の3Dクラフトゲーム動画」として処理されていた。
誠のチャンネルの平均視聴者数は【100人】前後。
映像の美しさを好む少数の作業用BGM勢だけが残る、静かな過疎チャンネルに戻っていた。
だが、1年の間に、1層やセーフティーエリアに住み着いていた浮浪者たちはとうに強制退去させられていたが、誠の「手配書」だけは、今もエントランスに残されていた。
「おい、この貼り紙、まだ残ってるぞ」
「あー、例の『ダンジョンすみっコぐらし』のおっさんか。不法滞在の罪で賞金100万円のやつだろ」
新宿ダンジョンの地上エントランスにある「ダンジョン協会・公認掲示板」。
そこには、配信画面から雑に切り抜かれた、ジャージ姿で呆然と佇む誠の画像が印刷された貼り紙が、少し色褪せた状態で今も貼られていた。
画像の上には、太い赤文字で『探しています(身柄確保:100万円)』という、さながら指名手配のような文字が躍っている。
「1年経っても見つからないって、どういうことだよ。1層から5層の初心者エリアは、この1年で何百回と捜索されたんだろ?」
「普通に考えたら、もうとっくにダンジョンのどこかで野垂れ死んでる『行方不明者』だよな。死体も見つからないのは不気味だけどよ」
中堅冒険者たちが手配書を見上げて首を傾げる。
彼らにとって、川野誠(38)は納税義務から逃げて初心者エリアの物陰に隠れ、最新のAI技術で「400層の地下都市で無双するCG動画」を偽造して配信しているだけの、ちょっと痛い行方不明のおっさんだった。
だが、どれだけ1層〜5層を血眼になって探しても手がかりすら掴めない一方で、おっさんのチャンネルを開けば、今この瞬間も、元気に『畑の様子(配信)』を生配信で見ることができるという、不気味な矛盾だけが地上に置き去りにされていた。
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