第八話 白銀の街を歩く
屋台のお姉さんに教えてもらった広場にたどり着くと、噴水がある中央付近に低い石台があった。
近づくとその上に何種類もの紙が並べられて置かれている。
店の宣伝書きや楽団の告知、そして王国が兵を募る徴募の布告までさまざまな内容の紙が置かれていた。
王都周辺の地図…。
流星群が見やすい日のお知らせ…。
「……あ、あった!」
王都リヒトニア内の地図。
一枚手に取って、そっと広げる。
思っていた以上に……王都は大きい。
地図を見ると街全体がほぼ円形の形で作られているのがわかった。
その中心に湖の中に浮かんでいるかのように…白銀に輝く巨大な城が描かれている。
そんな城を囲むように四つの区画。
それぞれにはっきりとした役割があるみたいだ。
「今いるのは……南門から入ったから…南区のこのあたり」
指でなぞりながら確認する。
南区は一般の都民が多く行き交う場所。
石造りや木造の飲食店、洋服店、雑貨屋。
市場や屋台も多く、旅人が最初に足を踏み入れる区画。
確かにここは人の声が絶えない。
「で……西区……」
地図の左側。
そこには、見慣れない記号がたくさん描かれていた。
剣、盾、杖、歯車のようなマーク。
説明を読む。
冒険者、魔導士、騎士、傭兵、旅人。
戦う者たちが集う区画。
武具店、魔導具店、宿屋、酒場。
そして様々なものを製作している工房。
……ブロムさんの工房もきっとここだ。
「東区は……居住区」
一般の人たちが暮らす、静かなエリア。
学校や教会、王立図書館、大きな公園もあるらしい。
「北区は……」
貴族と騎士の居住区。
幾重もの壁によって他の区画と区別されているのが地図で見ても一目で分かる。
そして北区にも城との間に水路があるけど、有事の時に城へ速くたどり着けるように他の区画より水辺が少ない作りになっているみたいだ。
おそらく警備も厳しく許可なく立ち入れない場所も多いんだろうな。
僕は地図を見ながらふとそんなことを想像していた。
「……王都って、ほんとに“国の中心”って感じがするなぁ」
地図を折りたたんで息をつく。
よし。
目的地が決まった!
南区から西区へ向かって歩き出す。
通りを進むにつれて、少しずつ街の空気が変わっていく。
鎧を着た人。
剣を背負った冒険者。
杖を携えた魔導士。
あ…。
大きなケースを背負った学生みたいな人もいる。
楽器……?
おそらくあれは魔導楽器のケースだ。
「……仲間かな?」
少しだけ胸があたたかくなる。
道の両脇には宿屋や酒場が増えてきた。
《鉄角亭》(てっかくてい)
《紅剣の杯》(こうけんのさかずき)
《風渡りの宿》(かぜわたりのやど)
どれもカッコいい名前のお店。
昼間なのに酒場の中から笑い声が聞こえてくる。
「夜は……すごい賑やかになりそうだなぁ」
そう思いながら歩いていると、金属を打つ音がはっきり聞こえてきた。
――カン、カン!
……工房だ。
地図をもう一度確認する。
この通りの先。
「……あ」
そこにあった。
分厚い木の扉。
無骨な看板。
《魔導楽器工房“ガルドノイズ“》
男っぽくて自然とドワーフをイメージさせる店名、ちょっとゴツくてどこか誇らしげな名前。
「ここ……ブロムさんのお店だよね」
師匠の言っていた場所。
胸の奥が少しだけ高鳴る。
長い旅の目的地。
ジニアは扉の前で立ち止まり、ゆっくり深呼吸をした。
――さて。
物語はここからだ。




