第十六話 星の下、歌う者は剣を取る
王都の夜は思ったより冷えた。
酔いで火照った頬に、石畳を渡る涼しい風がやけに身にしみる。
「ウルバさむくない?」
「今さらかよ、ジニ姉。酒入って温まってるから大丈夫だろ?」
「まぁそうだけどさぁ~、飲みすぎて少し気持ち悪いし寒くなってきたよぉ」
僕は頭がふわ~っとしながらふらふら歩きつつ、ウルバと一緒に西区の宿屋を片っ端から当たっていく。
――満室です。
――申し訳ございません、本日空きはありません。
――予約で埋まっております。
三軒目、四軒目。
どこも同じ返事だった。
「……まさかさぁ…」
「……あぁ」
広場の噴水近くにあった石のベンチに腰を下ろす。
顎に手を当て僕たちは同時に夜空を見上げた。
「王都に来て野宿……?」
「ははは、吟遊詩人らしくていいじゃん。星付きの寝床だぞ」
少し絶望を感じながらも、野宿なんて大したことじゃない。
そんな風に考えているウルバの言葉を聞いて、それも悪くないなって思えた。
でも、こやつ…どこまで器が広いんだ!って笑おうとした、そのとき。
――きゃー!!!
遠くではっきりと女性の悲鳴が響いた。
「……っ!」
ウルバが即座に立ち上がる。
「あっちか!?行くぞ!」
「え?ちょ!!うっ……!」
僕は急に反応して立ち上がってしまった反動で一瞬えずきながらも慌てて後を追った。
「まっ……まっでぇぇぇ~……!酔ってるの忘れないでぇぇ……!」
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路地を曲がった先。
月明かりの下で二十代に見える女性が壁際に追い詰められていた。
男が四人。酒と欲に濁った目。
ウルバは迷わず女性の前に立つ。
軽口も冗談もない、低くて鋭い声。
「……下がれ」
剣の柄に手をかけ、
一歩、前へ。
「この人から離れろ」
男たちの一人が鼻で笑う。
「なんだぁ?ガキが英雄気取りかよ」
男の一人が何かを持っているのが見えた。
月明かりでキラっと何かが光って…ナイフだ!
「ジニ姉!」
ウルバは視線を外さず叫ぶ。
「この姉ちゃん連れて逃げろ!南門だ!衛兵がいる!途中巡回してる衛兵もいるかもしれねぇ!」
「で、でも……!」
「いいから!」
その瞬間。
「行かせるかよ!!」
男がナイフを突き出し、別の男が横から殴りかかる。
ウルバは一歩引きながら抜刀した剣でナイフに応戦しつつ横からの攻撃を避けた後、そのまま殴りかかってきた男に回し蹴りを喰らわす。
「――今だ!」
「すぐ戻って…くるから…ね!」
僕は片手で自分の口元を押さえ、もう片方で女性の手を強く握る。
「だ、だいじょぶ!ついてきて!」
夜の王都を全力で駆け出した。
背後では金属音と怒号が何度も重なっていた。
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