第十四話 肉かウインナーか…それが問題だ
少し落ち着いた路地の端で僕たちは立ち止まった。
「よし、まずは身支度だな」
ウルバがそう言ってヴァイオリンケースを開いた。
僕もバックパックから再び音猫ちゃんを取り出して、きめ細かな革布で弦とボディを丁寧に拭いていく。
今日一日、街の音も風も、たくさん吸い込んだ。
「……おつかれさま♪」
小さくそう言いながら音猫ちゃんをケースにしまう。
ウルバはヴァイオリンを拭きながら僕に一言。
「いい仕事したな、相棒!」
……相棒。
なんか照れる。
僕のしっぽが無意識に少しゆらゆら揺れているのがわかった。
身支度を整えたあと、僕たちは西区にある酒場が並ぶ通りへ向かった。
夕暮れ時で、通りはもうにぎやかだ。
肉を焼く匂い。
香草と油の混じった香り。
樽を叩く音と笑い声。
「……ここ、やばい…空気がすでに楽しい~!」
「だろ?」
ウルバが目を輝かせながらなぜかドヤ顔で言う。
「で、どこ行く?」
「決まってるよ~!」
僕は即答した。
「お肉が美味しい店!」
「…は?」
ウルバも即返す。
「酒とウインナーだろ!」
「いやいや…リヒトニアに来て最初の宴だよ?絶対肉でしょ!肉汁滴る大きなステーキ!!」
「分かってねぇなぁジニ姉は。酒に合うのはウインナーなんだって!」
「お肉の脂と噛み応えこそ正義だよ!」
「なんだと〜!?」
通りの真ん中で軽くにらみ合う。
……全然決まらないし、夕食のメニューを譲る気もない!
ついに僕たちは本気モードに入った。
「いい?お肉はね?焼いた瞬間の香りからすでに美味しいの!もちろん外は香ばしくて、中はじゅわっとしてて――」
「待て待て!ウインナーはな噛んだ瞬間の“パリッ”が命なんだ。そこから溢れる肉汁と酒の相性これはもう芸術だ!」
「でもお肉は部位ごとに違う楽しみがあって――」
「ウインナーだってスパイスで無限に変わる!」
……。
説明し合った結果。
ぐぅぅぅ~。
「……どっちも」
「……うまそうだな」
僕たちは同時に顔をしかめながら苦笑いする。
「やばい」
「決められねぇ」
頭を抱えた、そのとき。
「おう、坊主ども」
低くて渋い声がした。
振り向くと、いかつい冒険者風のおじさんが通りの壁にもたれながら立っている。
傷だらけの鎧。
太い腕。
でも目はどこか優しい。
「通りの奥の店行け」
「え?」
「肉もウインナーはもちろん、魚も酒も全部…うまいぞ!!」
「……まじで?」
「保証する」
僕とウルバは顔を見合わせて、
「おぉぉ……!」
「ありがとう、おっちゃん!」
ウルバが勢いよく言う。
「でもさ、ずっと俺たち見てたんなら、もっと早くに言ってくれよ!」
おじさんは豪快に笑った。
「悪い悪い。面白くてついな」
少しだけ他愛ない話をする。
どこから来たのか。
演奏してたのよかったぞ、とか。
「じゃあな、若いの」
「またね!ありがとう!」
手を振って僕たちは通りの端へ向かう。
そこにあったのは――
木製の看板。
炭火の匂い。
店の名は…《鉄角亭》
「……ここだな」
「うん」
二人で顔を見合わせて同時に大声で宣言する。
「今夜は宴だぁ〜!」
扉を押し開けると中から熱気と笑い声が溢れてきた。
今夜はきっと長くなる。
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