ルシア・ダズ・メッチャツオイの娘
りりあは空を見上げてほうっと息を吐いた。
りりあの吐いた息は白く色づいて、空気の中に溶けていった。
「おかーさん!息白いよ!!」
りりあは私に笑顔で言ってきた。
私はそんな娘の元気な姿に思わず笑みをこぼした。
そして、しゃがんでりりあの首に巻いてあるマフラーを整えた。
「寒いからね、ちゃんとあったかくしようね」
「うん!」
りりあは返事をしてすぐに私に抱きついた。
「りりあ?」
「こーしたら二人共あったかい!」
――ほら!こうしたらあったかいよ!
「……そうね」
今一瞬、妹の姿をりりあに重ねてしまった。
幼い頃、私の妹でりりあの本当の母がそうやって抱きついてきた。
本当にあの子に似てる……。
私はりりあの小さな背中を抱きしめ返しながら、少しだけ力を緩めた。
強く抱きしめすぎると、私の動揺が伝わってしまいそうだったから。
「……りりあ、苦しくない?」
「だいじょーぶ!あったかい!」
その言葉に、胸の奥がちくりとした。
昔も、まったく同じことを言われた。
雪が降り始めた帰り道。
手袋も持たずに雪景色へ飛び出した妹は、冷え切った手で私の腕にしがみついてきた。
叱られると分かっていながら、どうしても外の景色を見たかったのだと、あとで照れたように笑っていた。
――おねーちゃんあったかーい!!
思い出すと、目頭がいつも熱くなる。
「おかーさん、どうしたの?」
りりあが不思議そうに私を見上げる。
はっとして、私は首を横に振った。
「ううん、なんでもないよ。さ、そろそろ行こうか」
「うん!」
りりあは私の手をぎゅっと握った。
その手は小さくて、でも確かに生きていて、あたたかい。
この子は、妹じゃない。
妹の代わりでもない。
分かっている。
分かっているはずなのに……。
それでも時々、こうして重なってしまう。
「……ごめんね」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からないまま、私は小さくつぶやいた。
「なにが?」
「なんでもないよ」
りりあは首をかしげたあと、にこっと笑った。
もう二度と会えない妹を、この子と重ねるのはいけないことだろうか。
冬の空は高く澄んでいて、白い息はさっきよりも少しだけ早く消えていった。
◇◆◇
目の前で雪にはしゃぐりりあの生まれ変わりの姿を見て、私は昔のことを思い出していた。
「りりあ」
私はりりあに歩み寄った。
りりあが私の声に反応して振り返ったところを、私は抱きしめた。
「お、お母さん?」
「…………ほら、こうするとあったかいでしょ?」
りりあはしばらく固まってしまったが、すぐに震えた声で「……うん」と返事をして、私を抱きしめ返した。




