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第二十話 勇者召喚

この日、ルナティアは王宮に赴くことになっている。

学校に登校して、授業を受けてからに王宮に向かうのだ。

迎えはルナティアの護衛兼公爵家の用心棒として雇われている剣士のディアナ・マトランディスが車に乗って来てくれた。

「お嬢様。

私も国王陛下に呼ばれていまして。

一緒に立ち会いますね。」


「え?そうなの?

わかったわ。」

勇者召喚ともなれば、国の確固たる冒険者も集められても不思議では無い。


王宮に到着すると、早速国王が待つ謁見の間に入っていく。

「ルナティア・シルブラット参りました。」

国王は玉座に座っていて、既に複数の側近も揃って並んでいる。


「ルナティアよ。待っていたぞ。

来週にも勇者召喚が成される。

例の如く、召喚の間に異世界より転生されてくるとのことだ。

ルナティアにはその勇者の世話役を命じる。

この国と勇者との接点はルナティアが窓口となって行って貰う。

特に何かをすると言うものでは無いが、ある程度の決定権は其方に与える故、気負わずやってくれていい。

勇者には諸国訪問や遠征にも出てもらう事になるだろう。

勇者と常に行動する事が大きな仕事となろう。

心しておく様に。」


「心して承りました。

ルナティア。

勇者様の為、国の為、誠心誠意尽くして参ります。」

ルナティアは跪き頭を下げた。


「ルナティアよ。それとだな。

本来であれば、勇者の世話役には若い魔導士を付ける慣わしだが、ルナティアはまだ見習いの身故。

今回は特例として、星峯魔導士の称号を授与する事を魔導士協会とも話して決定した。

魔族討伐により、恐らくルナティアの実力はこの称号に値すると言う満場一致の意見だ。

有り難く受け取ってくれ。」


「わ、私が星峯魔導士ですか?

も、勿体無いご配慮有り難くお受けいたします。」

星峯魔導士と言えば、準魔導士、正魔導士、騎将魔導士の上位である星峯、水峯、緑峯、炎峯の四大筆頭魔導士の一つだ。

いきなりの大抜擢である事は誰にでも理解できる。

「それとディアナよ。

お前には勇者の戦闘指南役を命じる。

ルナティア同様、心してかかってくれ。」


「御意。」

ディアナも跪き頭を下げた。


謁見は終わって2人は車に乗り込んだ。

「お嬢様。

勇者の世話役とはハズレを引きましたね。

でも、星峯魔導士の称号を貰うとなれば、ハズレとは言えないかもしれませんけどね。」


「言わないでよ。

星峯魔導士なんて荷が重いわよ。

この国で4人しか居ない魔導士の称号よ。

丁度空いていたみたいだけど。

う〜!どうしよう!」


「まあまあ、貰えるものは貰っておけば良いと思いますけどね。」


「簡単に言ってくれるわね。

四大筆頭魔導士なんて重圧でしか無いわ。

それも頭を悩ませる所だけど、勇者様の世話役は緊張するわね。

ディアナは知らないけど、私は異世界の男性が怖いわ。そう思わない?」


「ハハハ、そうですね。

ルナティア様の可愛らしさに異世界の勇者様もメロメロかもしれませんよ?」


「もう!揶揄わないでよ。

ふ〜んだ!

ディアナなんて嫌いよ!」


「ハハハ、まあまあそう言わずに。

私もお手伝い致しますから。」

それからも2人は異世界の勇者について話が盛り上がった。

屋敷に戻ってから、母親であるセシリアとリビングで今日の事を話していた。


「お母様。

私、星峯魔導士に任命されましたの。

不安で仕方ないの。

それに勇者様の世話役なんて務まるのかしら?」


「あら、それは凄いことになったわね。

星峯魔導士と言うのは、お父様より偉いのかしら?」


「お母様。

お父様はもっともっと上の雲の上ほどの役職ですよ。

そんな事より勇者様の事です!

私に世話役なんてって話ですよ!」


「あらあら、勇者様のお世話を仰せつかったのね。

凄い事よ。

だってお父様も経験した事ないし、私もない事ですもの。

それは名誉な事なのよ。

きっとね。」


「名誉ではあると思いますけど。

異世界の男性なんて、少し怖くて。」


「そうね。

ルナティアはまだ男性とのお付き合いも無いものね。

そうだわ!

パーティを開きましょ!

今回の陛下からの勇者世話役という大役を仰せつかった事はお祝いしなくちゃ!

そして、貴族の若い男性も招けば、少しは男性の扱いも慣れるかもしれないわよ?」


「お母様。

それは名案です!」

2人の話は盛り上がっていた。

それを側でディアナは呆れた顔で眺めている。


「セシリア様もルナティア様もちょっと宜しいですか?」

2人が楽しそうに話をしている会話を打ち消す様にディアナは微笑んで言葉を発した。


それから1週間が過ぎて勇者召喚が成される日がやって来た。

ルナティアは朝から禊を行い、礼拝をした。

いつもの変わらない一日が始まろうとしていた。

ただ違うのは学校では無く、王宮に向かって屋敷を出発している事だ。

召喚の間に入ると既に大勢の人達が集まっていた。


「ルナティア様。

私共は勇者様の世話役であられるルナティアを補佐する騎士団ルーベルト・アラレロッサ。」

「ルナティア様。

お初にお目にかかります。

同じく騎士団サラ・カラーナと申します。」

1人は男性、そしてもう1人は女性のまだ若い騎士がルナティアの前に歩み寄って話しかけて来た。

「そうでしたか。

お勤めご苦労様です。」

2人に案内されて召喚の間の真ん中あたりにディアナと共にルナティアは移動した。

「それでは勇者召喚の儀を行います。」

部屋の中央には大きな魔法陣、いわゆる召喚陣と呼ばれるものが床に記されている。

声の主は時読みの巫女マステーナである。

そして、召喚陣に記された文字や線が光り始めた。

部屋中が光包まれると1人の男性が立っていた。

その男性は見た事もない服を着ていて、ルナティアもドキドキしながら見守っている。


「あのお方が勇者様…。」

その男性の姿に暫く見惚れていた。


「大層なお出迎えだな…。」

皆が注視する中その男性は周りを見渡して呟く様に声を挙げた。


「勇者殿。

お待ちしておりました。

私は時読みの巫女マステーナと申します。

あなたの出現を神より天言を聞くものです。

そして、国王陛下よりお話が御座います。」

勇者の男性はマステーナの顔を見て怪訝そうな表情で話を聞いている。


「勇者殿。

わしはラスタナル王国54代国王ラストラル・アスベルリアである。

突然の事で戸惑っておるとは思うが、回りくどい事を言っても仕方がないので、率直に伝える。

其方は神より召喚された勇者としてこの世界に復活を企み、世界を混沌に陥れ兼ねない存在である魔王討伐を行う為に召喚された。

それは理解しておるかな?」


「ああ、理解はしている。

女神の話だと俺は現世で死んだ。

生まれ変わる代わりに肉体と使命を与えられた。

だが、勝手なものだな。

この世界の人間では魔王は倒す事が出来ないのか?

自分達の尻に害を他の世界の人間にさせるとはお笑いだ。」

対面による勇者と国王は仲良くとはいかない話になっている。


「勇者様はあまりこの世界の事をよく思っていないのね。」

その様子を遠目に見ながら不安そうな顔をしている。

「勇者殿は戸惑っているのでしょう。」

ルナティアの後ろに居たルーベルトが耳元で他には聞こえない様に呟いた。


「ルナティア。

こちらへ。」


「はい。」

国王は周りを見渡してルナティアを見つけると声を掛けた。


「勇者殿。

いろいろ思う事はあるであろうが、先ずはこのルナティアが其方の身の回りの世話役として務める。

何なりとルナティアに相談されるが良い。

では、ルナティアよ。

勇者殿お部屋へ案内してやってくれ。」


「はい。

陛下。

勇者様。

今ご紹介に預かりました、ルナティア・シルブラットと申します。

先ずはお部屋をご用意しておりますので、そこでお休みください。

その後の予定については私の方からお伝え致します。」


「……。わかった。

俺の名前はステイル・マクランだ。

よろしく頼む。」


「はい。

それではこちらです。」

ルナティアとディアナ、2人の騎士と共に勇者は国が事前に用意した部屋に向かった。

召喚の間に居る者達は何処と無く冷たい視線を送っている。

それに何となく勇者も気付いている様にルナティアは感じ取った。


「なぁ!俺は歓迎されていない様に感じるのは気のせいか?」


「ステイル様。

通路では誰に聞かれているかわかりませんので、部屋に着きましたら、お話をさせて頂きます。」


そうしている間にも部屋に到着した。

部屋にルナティアとディアナとステイルが入り、入り口に2人の騎士が立ってドアを閉めた。


「はぁ〜、お疲れになったでしょ?

あの召喚の間の空気は耐えられませんでしたよ。

ステイル様も楽になさってくださいね。

改めまして、ルナティアと申します。」

勇者は部屋にあった椅子に座ると気の抜けた様な声を出してルナティアは笑顔を見せた。

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