エピローグ
本日3話目、これで完結します。
別視点、本編では登場しなかったあの方です。
小高い丘の上。
馬車に隠れるように、男性が立っていた。
視線は街道を向いている。今、そこをひとり、猛烈な速度で走り出した。
すぐにふたり、同じように追いかけていく。その前方には森がある。
魔獣が潜み、普通の民間人には分け入ることもためらう場所へ、何の躊躇もなく突っ込んでいくのは冒険者なのだろう。身に着けた武器や防具からもそれはうかがえる。
男性はその先頭を行く人影を見つめていた。
ひっそりと後ろに影が立つ。一分の隙もなく整えられたその立ち姿は高位貴族に仕える執事だ。
「旦那様」
「・・・もう時間か・・・?」
「そろそろお戻りを。この後の予定に差しさわりが出るやもしれません」
「そう、か・・・」
言いつつも、男性の視線は揺るがない。先頭を走る人影はもう間もなく森に到達するところだ。
「・・・旦那様、よろしいのですか?」
後ろからかけられた言葉に反応したのは少し震えた、肩。
「僭越ながら申し上げます。お嬢様を・・・オレリア様を連れ戻されないのですか?」
「・・・」
「タミール様との婚約破棄はいわば冤罪でございます。なんの手続きも了承もされない、言いがかりにも等しい児戯でしかないと、あの場に居られた方ならばどなたもお認めになるでしょう。タランドール男爵家の騒動を鎮めたのもお嬢様のお力があったように伺っております。この功績をもってすれば、お嬢様を再びお迎えすることも可能かと愚考いたしますが」
「確かに、儂もそれを考えた。だが、無理だ」
男性・・・現ファルケニート侯爵は重い口を開いた。
「婚約破棄は無効であると、陛下からも言質を頂いておる。タミール殿に至っては、いまだに衝撃から抜け切れずに腑抜けておるともな。オレリアが元のさやに納まってくれるのなら、それが一番楽な決着であろう」
「では、何故お声をかけられないのですか?」
執事からの問いかけに目を伏せ、ため息をつく。
「忘れたのか?オレリアは・・・あの娘はすべてを捨てて出て行ったのだよ、あの婚約破棄の前に」
「そ!そう、でした・・・」
「男爵令嬢がタミール殿を篭絡しようが、婚約破棄を叫ばれようが、あの娘にとってそれらは価値の無い物と映っていたのだろう。この国のなにものもあの娘を引き留めることがかなわなかったのだ。今更、何を言うことがあろう。儂も・・・切り捨てられたのだから、な」
「旦那様・・・」
「さて、愚痴もここまでにするか。タランドール男爵の処遇も決めねばならぬし、あの腑抜けた王子もどきにも喝を入れねばならんしな。戻るぞ。馬車を回せ」
「はい、ただいますぐに」
侯爵の姿が馬車に消えると、騎士が警備を解いて整列し、丘を下っていく。
あとは金色の光が丘に降り注ぐだけだった。
~ Fin ~
侯爵様、八つ当たりで微妙に不敬なことを漏らしてます(笑)
短編から始まった『拗らせ令嬢』、ようやく完結編までたどり着きました!
何とか最後まで書ききることができました~。いや~、よくやれたと自分でも感動してます(涙、涙)初めての連載で未熟な点も多々ありますが、お付き合い下さりありがとうございます。
読んでいただいた皆様に最大級の感謝を!!




