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11.ギルド憲章

ブックマークありがとうございます。これからも頑張ります。

 ーside ギルドマスター【スイデン】ー

「何が起こっていやがる。」


 受付嬢のセリナがマスタールームに駆け込み、ゴーバとその一味が、件の新人のタカヤに仕掛けたと報告してきた。


 すぐさまマスタールームを飛び出し、上から何かあれば止めるつもりで様子を見る事にした。


 出口付近をゴーバとタカヤを中心にパーティ5人が囲み、出口を塞いでいる。


 どうやらタカヤにいちゃもんをつけて金を巻き上げ、リンチして奴隷のように使い潰す魂胆のようだ。


 馬鹿どもめが、ギルド内でそんなことをしてタダで済むと思うなよ。ギルド不干渉を履き違えやがって。


 逆ギレしたゴーバが殴り掛かる。ここで止めようとした。


 ここからが不可思議な光景の始まりだった。ゴーバの馬鹿が殴り掛かる前、少年はゴーバの頭から爪先までを見た。


 いや観察していた。その行動にゴーバがキレ、殴り掛かったが当たらない。とにかく当たらない。


 あいつは性格は問題外だが、冒険者としての強さの資質は高い。傭兵から遅めの冒険者になったが、あっという間にその身体能力を活かしてCランクまで駆け上がった。


 だが当たらない。


 業を煮やして、とうとうバトルアクスまで引き抜き、そのスキルを思う存分使っている。スピードも上がった。技術も上がった。


 だが当たらない。


 すべて紙一重で避ける。そしてその目は、一挙手一投足を見逃さぬよう観察しているかのようだ。


「あっこれじゃない……。」


 少年が何かを呟いた。何かがあったのだろうか。その後も避け続ける。


 そして明らかに体の動きが変わる。その瞬間、確かに一瞬だが笑みを浮かべた。

ここまでだ。


「てめーら!何やってやがる!」


 2階から威圧をまとって声をあげる。


 異常な光景をつい見入ってしまったが、これ以上はいけねぇ。


 ーside タカヤー


 デカイ怒号が聞こえた瞬間。

 ギルド内の時が止まる。どうやら終わったようだ。


 それにしても2階のデカイ声のおっちゃんは、初日の受付のおっちゃんじゃないか。やっぱり怖いおっちゃんだったか。


「ギ・ギルドマスター・・・」

 震える声を絞り出し、ゴーバが顔面蒼白になる。


「ギルドマスター?」


 おぅまさかの大物か。

 あのおっちゃんはギルマスだったようだ。てかなんで受付なんかにいたんだ?


「ゴーバ!こりゃあどういう事だ?」

 階段を下りながらゴーバに投げかける。


「い、いや違うんだこれは!これは。そう新人の指導をしようって話だ。そんな事にまでギルドマスター直々に介入するのか!」


 そうだ!そうだ!とゴーバのパーティメンバーが息を吹き返す。


 こいつら馬鹿だな〜。

 ギルドのルールとも言われるギルド憲章には、確かにギルド不干渉の一文が書いてある。小冊子にも書いてあった。


 しかしこれは、あくまでも小競り合いレベルで、さすがに新人を、しかもギルド内で潰そうとしているのに干渉しないなんて事はない。


 むしろ罰を受けるべき事案だろう。

 おそらく最初に目を向けた時には、ギルマスを呼びに行ってくれたのだろう。


 2階に息を整えているセリナさんが見える。

 ごめんなさい見捨てられたと思ってました。

 あとでお礼を言わないとな。


「それはギルド不干渉の事を言っているのか?」


「そっそうだ。ギルドは揉め事に関与しないはずだろ!」


 テンプレのようなやりとりだ。まさかのここでテンプレ展開とは。


「馬鹿が!ギルド不干渉はあくまでも小競り合い程度のものだ!誰が同じギルドメンバーを恫喝し恐喝、殺害しようとしているやつを見逃すってんだ。」


「なっ そもそもこいつが反抗してきたんだ!」


 とうとう矛先がこちらになったようだ。しかしギルマスの口元がピクピクしている。


「あは。ワッハッハ。子供か!お前は。しかも絡んでおいて冷静に返されたからって逆ギレした挙句。カスリもせず翻弄されて、本気出してそれもカスリもしないなんて。たしかにいい笑い者だ。」


 ギルマスが大笑いした事で、ゴーバの顔が真っ赤に染まる。


「ゴーバ!貴様は2ランク降格だ。周りのお前らは1ランク降格。嫌なら退会しやがれ!その瞬間逮捕されて留置場送りだがな!さぁ皆散れ!茶番は終わりだ!」


 そう言って強引にこの場を納め、こちらに振り返る。

「昨日登録したタカヤだったな。俺を覚えてるか?まあそういうこった。あとで2階のマスタールームに来てくれ」


「はぁ。覚えてますよ。そんな衝撃的な顔と威圧忘れるはずないじゃないですか。マスタールームですね。わかりました。伺います。」


 やりとりの途中、ゴーバのパーティは、その場をそそくさと退散していた。ギルド内はすぐに元どおりに戻りいつも通りの業務を再開していた。


「はやいな〜 切り替え」


「こんなの日常ですからね。」


 ひょいっと横にセリナさんが顔を出す。

 横顔が非常に美しい。そして前のめりの姿勢は素晴らしい。


 そんなことよりも、もう息は整ったようだ。


「あっセリナさん。ギルマスを呼んでくれたんですね。有難うございました。正解の対応がわからずに、迷ってましたから。助かりました。」


 お礼をいわれたのが不思議だったのか、一瞬びっくりした顔をしすぐに笑顔に戻る。


「いえいえ。さすがにギルド内で新人潰しは目に余りますから。タカヤ様マスタールームにご案内致します。よろしいですか?」


「はい。よろしくお願いします。」


 セリナさんの案内のもと、階段を上がり突き当たりの部屋をノックする。


「セリナです。タカヤ様をお連れしました。」


「おう入れ!」


 中からギルマスが許可を出した為、扉を開けて中に入る。


 ドコッ!

 その瞬間横っ面に急に衝撃が走る。


 おそらく、いや間違いなくギルマスが殴ってきた。


「痛ったー。何するんですか!いきなり!」


 突然殴りつけるなんて、何考えてるんだ全く!

 まぁ殺気も何もなかったから避けなかったけど。痛いものは痛いんだ。僕はLv2だぞ!


「なっ何してるんですか!ギルドマスター!」


 後ろでセリナさんが激昂している。そうだもっと言ってやれー。


「えっ いやおま。お前避けろよ。避けられるだろ?今のゴーバよりちょっと速いくらいだぞ?」


 うん。知ってた。まぁ何かを確かめようとしてんたんだろうけど。その手には乗らない。


「いや避けろよって。避けられませんよそんなの」


「ふんっ。まぁいい。隠すなら乗ってやる。そこに座れ。俺はここのギルマス。元Sランク冒険者スイデンだ」


 自己紹介をしつつ、座るように促すギルドマスター。っていうか元Sランクなんだこの人。


 ぶすっとした面のギルマスを正面に、そう考えながらとりあえず無駄に大きなソファーに座る。


 セリナさんは受付に戻るようだ。


「改めてここのギルマスのスイデンだ。」


「昨日登録しましたGランクのタカヤです。」

 挨拶を交わしたところで、すぐにスイデンが口を開く。


「今回の件はまぁ慣れてくれとしか言えん。冒険者は血の気が多いやつが多い。これからも、こういった事はあるだろう。」

 どうやらただの諸注意のようだ。まぁ当事者だし当然かな。


「はい。ご忠告有難うございます。気をつけます。」


「おうまぁさっきのは明らかに奴らに非がある。やり返してよかったんだぞ?」


 ニヤリとまだ何かを探ろうとしている目をむける。


「いやいやそんなの悪目立ちしたくないですよ。勘弁です」


「ふんっ否定はしないんだな。まあいい。お前さんFランクに格上げな。Cランクのゴーバは戦闘だけなら上位の奴だ。そんなの奴の本気の攻撃を避けて、いつでも反撃出来る様な奴をGランクとは言わん。戦闘試験を受けた事にしてランクはあげるからな。」


「そういえばそんな制度ありましたね。分かりました、お受けします。ただここに来る前に薬草と大鼠の依頼を受けているんですが。ちなみに薬草は納品可能です。」


「ああ それならここで納品すればいい。大鼠はまぁギルド都合のキャンセルだな。じゃあ薬草出してくれ今担当を呼ぶ。」


 そういうと机にあるボタンを押した。


読んで頂きありがとうございす。

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物語の精査の合間に書いた小説を新作として公開致しました。
ぜひこちらもよろしくお願いします。

迷宮都市の料理人
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