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長らくお待たせしてすみません。


 夕飯時のためか街路を歩く人の姿は多くなく、食品を扱う店は閉店の準備に取り掛かっている。人が少ないおかげで、ギルドの北、シランの外周部近くにある騎士団駐屯地へは早く着けそうだ。

 役所へは先によって簡単な事情の説明をしてある。領主は館へと引き上げたようなので、役所が襲撃される可能性は低いと判断して、手近にいた騎士団員に警戒をさせている状況だ。職員にはギルドに人員を派遣して情報を共有するように伝えてある。ギルドの副支部長が全力疾走して出張ってきたのを見た彼らの対応は素早かったな。


「まずいかもしれません」


 ルヴィの肩に担がれていたリスカが何かに気がついたみたいだ。


「この時間帯は巡回の交代をして、駐屯地から見回りの騎士がでてきているはずです。ですが、一人も騎士を見かけません!」

「わかった。急ぐぞ!」

「はい!」


 駐屯地が近づいてきたが、襲撃だったり、何かが起こったという気配は感じ取れない。煙は煙突から常識な量が吐き出されているだけだし、争うような声も聞こえてこない。それどころか、駐屯地の門前には警備の騎士が2人、何事もなく立っている。

 むしろ女性を1人担ぎ上げた二人組が走ってくるのを確認して警戒しているようだ。人攫いに見えても仕方がないか。


「止まれ!!」


 胸当てなど、一揃いの防具を身に纏った騎士が槍を手に叫んだ。無駄に警戒させても仕方がないので、彼らの10m程前で立ち止まり、ルヴィにリスカを降ろさせる。


「リスカ、息は整ってるな?」

「大丈夫です。ギルド副支部長のリスカです! 緊急の用件で伺いました! 騎士団長に面会させて下さい!」


 右手の甲を見せているから、ギルド職員には役職を表す刻印があるのだろう。こういった時にしか使わないものなのだろうか、それを見た騎士団員は驚いている。


「後の2人は私の護衛です。すぐに面会を!」

「か、かしこまりました! こちらに! 門は任せる」

「はい!」


 リスカの切羽詰まった様子にすぐに駐屯地内へと入れてくれた。


「何か変わったことはありませんでしたか?」

「いえ……そういえば、巡回の連中が遅いですね」


 リスカの感じたことは正しかったようだ。この騎士はいつもより遅いな、程度の認識なのだろうが、ギルドの状況を考えると……。


「…今は夕飯時か?」

「え? えぇ、そうですけど」

「まさか!」

「食堂はどこだ!?」


 突然の訪問には対応して見せた彼も、さすがにこれには面喰っている。


「ご主人様! こっちの方です!」


 すかさず、ルヴィが俺の腕をとって走り始めた。そういえば、人より匂いに敏感だったな。食べ物だからかな?


「確かに、食堂はそちらですが、一体何が?」


 追いかけてきた騎士によって、鼻の正確さが証明された。


「行けばわかる!」

「な、なんだっていうんですか!?」


 中央にある建物の隣にある平屋建てに近づくと、僅かに声が聞こえてきた。恐らく調理場につながっているだろう裏口が開け放されている。表口に目をやると、中央の建物から4人の騎士が食堂に走っている。やはり、何かあったか。


 その騎士たちに遅れて、表から食堂に入ると最悪の状況だった。

 机に突っ伏して動かない者、床に倒れ伏している者、200人弱がいる中で動いているのは16人だけ…いや、15人だ。今倒れたから、また遅効性の毒だろう。今度は魔術的なものではなく、単純に毒物を食事に混ぜたらしい。壁際には、動ける騎士に5人の男が拘束されている。皆、白の揃いの調理服を身に着けている。


「マークだ! あの野郎がやったんだ!」

「いつの間にか逃げやがった!」

「俺がスープを任せたばっかりに……」


 こっちは犯人が確定しているようだ。それに、これだけのこと事をしてきた。まずいな。狙いが領主ならまだいいが、それ以外なら全く分からなくなる。


お読み下さり有難うございます。


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