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「確かに、それなら……」


 魔術を使用した毒による症状が体調不良の原因とする俺の推測は受け入れられたようだ。


「魔登録機に細工する機会はあるのか?」

「2か月ほど前に定期点検をやった。それ以外で魔登録機を開けることは殆ど無いから、その時だろうな。ちっ、ギルド職員が犯人かよ」


 自分の管轄で、それも部下が絡んだ非常事態に怒り心頭のようだ。リスカはショックを隠せていない。


「それだけじゃないだろうな」

「協力者か」

「少なくとも、カシアはそうだろう。あいつのパーティーメンバー殺しは、代表受注機能の停止を狙ったものだったんじゃないか? 代表受注がある限り、冒険者の中でも魔登録機を使用する機会は限られてくる。そこで一気に対象の拡大を謀ったんだろう」


 固く拳を握り込んだ支部長の、今すぐ犯人を殴りに行きたい気持ちは分かるが、組織のトップなんだから冷静になれよ。リスカがいないと下は大変そうだな。


「恐らく、それが理由なのでしょうが……長期的な計画を持って動けるにも関わらず、狙いだった機能停止後すぐに露見するような事をするでしょうか?」


 ここらは俺も疑問だったんだよな。


「メンバー殺しの偽装のことか……以前に起きた同様の事故もカシアに係わりがあるとすると、中途半端な偽装で終わらせた理由は、確かに分からないな。偶然、気付かれていなかっただけかもしれないが……あまり推測を重ねるのはよくないが、効果が出てくるまで待てない理由が出来たんじゃないかな」

「狙いは、なんだ? そうすることで何を狙っている?」


 最大の疑問である、冒険者を排除して何をなすのかという事。冒険者以外に被害のないことを考えると、ギルドに対する怨恨か、支部を乗っ取るだとか、あまり意味を見いだせない答えしか浮かんでこない。

 怨恨の場合は本人にしか理解できない動機で動くことがあるため、捕まえてみるまでは目的不明のままだろう。乗っ取るってのもな。考えはしたが、こんな一支部を乗っ取ったところで何が出来るわけでもないし、ギルドや騎士団に強制排除されるのがオチだ。


「目的は分かりかねます。ですが、良くない事を企んでいるのは確実です。打てる手を打ちましょう」

「そろそろ帰ってくる時間か。魔登録機の即時使用停止と調査、冒険者の一時待機、職員から事情聴取、騎士団と役場へ連絡、とりあえずこれくらいか……リスカは連絡に行け。シラヌイ、リスカの護衛に付け」

「はい」

「あぁ」


 支部長に選ばれるだけのことはあるんだな。緊急時に、頼れる親父のような存在感を発揮して、全体の指揮がとれる男がいれば少しの欠点は目をつぶる、か。能力の発揮を期待したくないと思われるタイプだな。支部長なりの苦労も多いんだろう。そんなこと、どうでもいいが。


「では、よろしくお願いします。シラヌイさん」

「任せろ」


 階段を駆け下りホールへと入ると、心配そうな様子のルヴィとロッカが待っていた。他の冒険者もだんだんと帰ってきているようだ。


「あっ、ご主人様!」

「ルヴィ! ついてこい! ロッカは待機!」


 ロッカは意味がわからず固まっているが、ルヴィは事情が分からなくても走ってついてきている。こういう時に言った通りに動いてくれると本当に助かる。

 ルヴィにも説明しようとした時に、背後のギルドホールから支部長の簡潔な命令が大音声で響いてきた。


「冒険者は全員ホールで待機!! 魔登録機は使用停止だ!! 説明はする!! 今は黙ってろ!!!」


 強引で、実に支部長らしい命令だ。


「ルヴィ、今から騎士団と役所に行く。体調は大丈夫か?」

「は、はい。体調は問題ないです」


 確か、毒系は体内の魔力の流れを狂わすことで症状が出るようにしている、だったか。今朝は……魔力の乱れを感じることは無かったから、本当に大丈夫だろう。


「少しでもおかしいと感じたら言うんだぞ?」

「はい!」

「それと、今はリスカの護衛任務中だ。リスカと自分の安全だけ考えろ。俺のことは気にするな」

「で、ですが」

「気にするな」

「は、はい!」


 まだ500mも走っていないんだが、リスカ、ばててきてないか? ミコちゃんでもこれぐらい全力で走ってたぞ……鍛えたおかげで熊さんは余裕綽綽だし、担がせた方がいいか?

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