第28章 — ベンケイの橋
〈回想――12年前〉
???:
―― 君がそんなにも惹かれている“アニマ”を、尽きることなく与えてやろう。
アルベルト・アインシュタイン:
―― 科学というものは、これからも、そして永遠に、生き続けるのだ。
次の瞬間、空を裂くような巨大な光の柱が天へと伸び、
“科学の楽園”へ向かって真っ直ぐに放たれた。
ハストゥル(ハスター)は恐怖で顔を引きつらせた。
―― い、今のは一体なんなんだよ、博士!!
だがその直後――
音がすべて消えた。
世界が止まったかのような、不気味な静寂。
やがて、風に舞う桜の花びらのような優しい音が漂い始めた。
ハストゥルは、はっと目を見開いた。
―― えっ……ここはどこだ!?
彼は慌てて身を起こし、地面に倒れているラスタバンを発見する。
すぐに肩を揺さぶった。
ラスタバン(バン)は飛び起き、頭を押さえながら言う。
―― 何が起きたんだ……?
―― ていうか、ここ……どこだよ!!
その時、低く深い声が空気を震わせた。
???:
―― 起きたのは……お前たちが“死”から逃れた、というだけのことだ。
二人が同時に振り返ると、
そこには――
“座っているのに巨人”としか言えない男がいた。
落ち着いた表情で二人を観察している。
しかし、その存在感だけは常識を逸していた。
???:
―― 今お前たちが立っている場所は、ペレイリアへ続く街道の途中だ。
男はゆっくりと立ち上がった。
その巨体が影を作り、視界を覆うほどだ。
???:
―― 俺の名はベンケイ。
五条の橋を守護する者だ。
ハストゥルは混乱しきって叫ぶ。
―― 意味が分からない……!ついさっきまで俺たちは――
ベンケイは太い腕を上げ、遠方を指差した。
―― 見ろ。あの場所が、お前たちを飲み込むはずだった“光”の落ちた地点だ。
ラスタバンは目を見張って叫ぶ。
―― まさか……あれ、村の方角じゃねぇか!!?
顔色が一気に青ざめる。
―― じゃあ師匠のドランは!!?
ハストゥルは険しい表情で呟く。
―― いや……それよりおかしいのは、どうやって俺たちだけが助かったかってことだ。
―― そして……なぜここに連れて来られたのか。
ベンケイは鼻で笑い、呆れたように肩をすくめた。
―― まったく……理解が遅いな、ちっぽけな虫ども。
―― あの光はお前たちを完全に葬るためのものだった。
彼はゆっくりと続けた。
―― だが、“旅人ダンテ”が救い出したのだ。
お前たち二人を抱えてここまで運び、ついでに“ドラン”とかいう男も連れていったらしい。
バンは勢いよく飛び出した。
―― じゃあ、ダンテが連れて行った先を教えてくれよ!!
シュバァァァン!!!
鋭い刃が空を裂き、バンの目前でピタリと止まった。
巨大な刃が、彼の行く手を完全に塞ぐ。
バン:
―― ひぃぃぃッ!!
ベンケイ:
―― 悪いが……通すわけにはいかん。
ダンテからの命令だ。
巨大な薙刀の切っ先を二人へ向ける。
―― だが、一応“選択肢”はやる。
太い指を一本、ゆっくりと立てる。
―― 第一の選択肢。
力づくでこの橋を突破し、俺を倒すことだ。
その場合のみ、ダンテがどこへ行ったか教えてやる。
次に、右方向をぐいっと指差す。
―― 第二の選択肢。
大回りしてペレイリアの街へ行くこと。
最後に腕を組み、声を低くした。
―― そして、第三の選択肢……
不気味な笑みを浮かべ、鋭い犬歯を覗かせる。
―― 引き返して家に帰ることだ。
だがそれはやめておけ。
一歩でも下がれば……その瞬間、お前たちの首は飛ぶ。
ハストゥルは条件反射で自分の首を押さえ、青ざめた。
ベンケイ:
―― さて……どれを選ぶ?
ハストゥルとバンは声を揃えて叫んだ。
―― もちろん、迷うまでもなく……!
バン:
―― 第一の選択肢だ!!
ハストゥル:
―― 第二の選択肢だ!!!
二人は勢いよく振り向き、同時に絶叫した。
―― はぁぁぁぁ!?!?




