第35話 「料理と刃の交差する戦場」
会場の中央、テイストキングとソーイの包丁が激しくぶつかり合う。
カキンッ! カキンッ!
互いの刃が何度も交差し、鋭い火花を散らしていた。
テイストキングは百戦錬磨の料理人としての実力を存分に発揮し、一切の隙を見せずにソーイの攻撃を捌いていく。
「やるな、テイストキング……!」
ソーイは舌打ちしながら間合いを取る。
「お前もな……だが、まだ甘い!」
テイストキングは流れるような動きで包丁を振るい、ソーイの肩口をかすめる。
スパッ!
エプロンの一部が裂け、ソーイの肩からうっすらと血が滲んだ。
だが、ソーイは表情を変えず、むしろニヤリと笑った。
「やはり、本気でやるしかなさそうだな……」
そう言うと、ソーイは包丁を逆手に構え、魔力を込めた。
「《召喚術・ミノタウロス》!!」
ドォォォォン!!
地面が激しく揺れ、大会会場の中央に魔方陣が浮かび上がる。
そこから、巨大な影が現れた――
「グオォォォォォ!!!」
黒毛の巨体。二本の屈強な角。
召喚されたのは、全身が筋肉の鎧に覆われたミノタウロスだった。
「なんで料理大会で魔物が出てくるんだよ!」
三好が叫ぶが、観客たちは恐怖に駆られ、一斉に逃げ出す。
ミノタウロスとの死闘
ミノタウロスが巨大な戦斧を振りかぶり、グレースに向かって襲いかかる。
「チッ……これはやるしかねえか!」
三好は腰の剣を抜き、カオルと共にミノタウロスへ向かっていく。
「マリア、グレースを守れ!」
「了解!」
マリアはグレースをかばうように後退し、光魔法の準備を始めた。
「グオォォォ!」
ミノタウロスの斧が地面を叩き割り、砂煙が舞い上がる。
三好はそれを素早く回避し、カオルも横に飛びのいた。
「くそっ、こいつデカいだけじゃねえ……攻撃が重すぎる!」
カオルはウォーハンマーを構え、全力で振りかぶる。
「オラァ!!!」
ガァンッ!!
カオルの一撃がミノタウロスの肩にめり込むが、ビクともしない。
「マジかよ……!」
逆にミノタウロスの拳がカオルを弾き飛ばし、カオルは地面を転がる。
ソーイの策略
一方、ソーイとテイストキングの戦いは続いていた。
ソーイは、テイストキングが明らかに「何か」を守るような動きをしていることに気づく。
「……なるほど。お前、俺の攻撃が娘に向かないようにしているな?」
テイストキングの表情が一瞬険しくなる。
「フン……ならば、その甘さを利用させてもらう!」
ソーイは手に持っていた包丁を、勢いよく投げた。
「クッ……!」
テイストキングは反射的に包丁を弾く。
カキンッ!
だが、その包丁はまるで計算されたかのように空中を弧を描き、グレースの方向へ飛んでいく。
三好の決断
「危ない!!」
三好の体が無意識に動いた。
グレースを守るため、彼は包丁の進路へ飛び込んだ。
「ッ……!!」
ザクッ!!
鋭い刃が三好の右胸に突き刺さる。
「三好さん!!!」
グレースの悲鳴が響く。
三好はその場に倒れ込み、視界がぐらつく。
「くそっ……マジかよ……」
力が抜けていく。
遠くで、ミノタウロスの咆哮と戦いの音が響いていた。
絶望の中で
「三好!! しっかりしろ!!」
カオルが叫びながらミノタウロスと戦っている。
マリアが駆け寄り、すぐに三好へ手をかざした。
「《ヒール》……お願い、間に合って!!」
彼女の手から淡い光が溢れるが、深く刺さった包丁の傷はすぐには塞がらない。
「三好……!!」
グレースは彼の頭を抱え、膝枕をするように支えた。
「ごめん……私のせいで……」
涙がグレースの頬を伝う。
三好はその顔をぼんやりと見つめながら、口を開く。
「バカ……お前のせいじゃねえよ……」
意識が遠のく中、彼の視界はゆっくりと暗転していった。
「三好……! 目を開けて……!」
グレースの必死の呼びかけが、かすかに聞こえる。
(……ここで終わるのか? 俺の異世界ライフ……)
薄れゆく意識の中で、静かに、まぶたを閉じた。




