第10話 全能虚樹
《秦》へ来て、もう二十日くらいは経つ。
当初の目的であった『桜の開花』は難なく終わり、今は、民間の依頼をこなしつつ、《神桜樹》についての情報を集めている。
しかし、そんな情報が都合良く集まる訳も無く、その日々を依頼にのみ専念していた。
そんな日々の中、今日は何時振りかの休息の日であった。
そんな日を利用して、近くの海岸に来ていたワタシは、先着していた見知らぬ少女と出会った。
「こんちは~~」
少女は、ワタシに気付くと軽い感じで挨拶をしてきた。
「こ、こんにちは……………」
ワタシは、少し訝しげな気持ちになりつつも、その少女に挨拶を交わす。
時折吹く横殴りな潮風が、ワタシと少女に襲い掛かる。
「何を描いているのですか?」
ワタシが問うと、少女は、よくぞ聞いてくれました。と言わんばかりの面持ちで簡素な椅子から立ち上がった。
少女は、両手をL字にすると、それを海に向かって腕を伸ばした。
そして、片目を閉じ、そのカメラマンのようなポーズをした両手を前後に動かした。
「此処からの景色」
一瞬、何言ってんのコイツ。と思ったが、他人の趣味に口を挟むのは何なので、あえてそこは口にしなかった。
ワタシは、少女の側のキャンバスに視線を移した。
僅かな色の違いを感じる淡い蒼色。
二層に別れたように描かれたソレは、まるで、幻想の中の光と闇のようだ。
「綺麗…………」
そのキャンバスに描かれた空と海は此処から見える景色とは全く違って見える。
「そぉお?」
しかし、そんな少女の思いはワタシとは違っていた。
おそらくは、自身が思っていた絵とは違っているのだろう。
そう思っていると、少女はキャンバスに描かれた絵を、その紙ごとくしゃくしゃに丸め、海に向かって放り投げた。
「な、何を!?」
一瞬の事で、ワタシの口は思わぬ言葉を口走ってしまった。
「要らない『絵』は要らないの」
「……?」
その言葉に、何かの意味があるようで、ワタシは小さく首を傾げた。
「此処で会ったのも何かの縁だし、コレ、あげる」
そう言って渡された小さなガラス瓶。
その中には、謎の蒼い液体が入っていた。
その瓶を空に透かして見ていると、少女が口を開いた。
「貴女の『道』は、途方もなく危険に見えた。だから、それは保険のようなモノ」
「保険…………」
訝しげに、若干の違和感を覚える小瓶に視線を戻した。
「それじゃあね?」
何の説明も無く、少女はワタシの目の前から居なくなった。
颯爽と消えてしまった少女のことを考えながら、ワタシは小瓶を懐に仕舞い、当初の予定であった釣りを始めた。
そうした休息も束の間。
事件とは、こうした日に限ってやって来るものだ。
それは、その日の昼前に発生した。
場所は、先日と同じ場所。
相手は、その前と同じ相手。
しかし、その状況は以前とは違っていた。
「コイツら、本当にこの前の奴らなの?」
最中さんの問いには誰も答えず、ただその状況に唖然としていた。
一番驚いているのは、その時に『彼ら』と戦ったワタシや最中さんだ。
「えと………」
まるで、『狂気』に犯されているかのような『彼ら』の状況に畏怖を覚えつつも、ワタシは現状の把握に勤めた。
「どう、柚希?」
最中さんの問いに、ワタシは冷や汗をかきながら答えた。
「駄目です。何も分かりません」
事前に《ark follche》の『根』に回路を接続しており、その《樹》の一つ“対戦術予知視眼”を展開している。
しかし、その《眼》に映し出された『情報』はエラーのような状態。
「では、どうなさるのですか?」
シルヴィアさんの問いに、思考を巡らせ出来うる『手段』を提案した。
「最中さん、正面の豪胆な方の相手をお願いします。セレナさんはシルヴィアさんと共に、後方に隠れている小柄な方の相手をお願いします。ワタシは、残り二人の相手をします」
「「「…ッ!!!」」」
現状が把握出来ない以上、最も最適な状況に引き込み、多くの情報を収集する。
戦力の分担が思うように出来ない以上、極力戦術を持って状況を打破するしかない。
「それは、かなり危険じゃないかな?」
「そ、そうですわ。私でしたら一人でも大丈夫ですわ!」
「心配………?」
「「えっ?」」
最後のセレナさんの言葉で、最中さんとシルヴィアさんは、互いを見合う。
「はい」
無論、シルヴィアさんの戦力を卑下している訳ではない。
ただ、はっきりとした情報が無い以上、無理な戦術は組み込めない。
「柚希」
ふと、最中さんに声を掛けられた。
「ワタシが二人と共闘して後方三人をやっつけるから、柚希は正面の相手をするのはどう?」
「えと…………」
最中さんの提案を聞き、他の二人を見た。
シルヴィアさんもセレナさんも、それに賛成。と言わんばかりの頷きで返してくる。
ワタシは、拳をギュッと握った。
そうだね。
ここで、皆を信じなきゃ、戦術が成り立たないもんね?
自分にそう言い聞かせ、ワタシは三人に頷いて返した。
「では、深追いだけはしないようにお願いします。制限時間は五分。その間に、ワタシが多くの情報を収集します」
「分かった」
「分かりましたわ」
「ん……」
ワタシ達は一斉に地を蹴り、狙った相手の相手の懐に飛び込んだ。
『闇の厰気』と言わんばかりの闇色のオーラのようなものを纏っている彼らからは、明らかに違和感を覚えた。
それが一体何なのかは分からない。
だが、その『闇色のオーラ』によって、彼らが尋常ではない状況にあるのは理解出来る。
「クッ!!」
敵の攻撃によって、ワタシの身体は後方へと大きく弾き飛ばされる。
二人の力量差は、どう足掻いても埋めようのない差がある。
しかし、その力量差は、以前戦った際よりも、格段に開いていた。
それは、最中さん達も同じようで…………
「あっ!!」
「くっ!」
予想通り、苦戦していた。
その状況は読んでいた。
しかし、そんな中で、ワタシは彼らから何一つ情報を引き出せていない。
それが、何よりも予想外だった。
今はまだ、接続した『根』は一つ。
そこに、残り二つ、いや、一つを追加すればどうなるか。それは、ワタシ自身が一番よく知っている。
だが、今はそんな悠長な事を考えている暇は無い。
「………ッ!」
ワタシは意を決し、接続していた『根』から回路を引き離し、残り二つの『根』に回路を同時に接続した。
…………………“dmita guld”。………………“ulkce olum”。
『解読』という能力を捨て、『身体強化』と『超加速思考』という能力を優先させた。
特に、『身体強化』という拘束解除において、今回は一度七つの拘束を解除した。
「ぐっ、がっ!!」
激痛にも似た痛みが、ワタシの思考を弱らせ、心身に多大な負荷を掛ける。
しかし、そうも言ってられない。
「くっ!」
何とか痛みに耐え、改めて敵の姿を見据える。
相手からの情報が読み取れない以上、ワタシに残された手段は、この『猛攻』という荒業のみだ。
「はぁぁあぁぁぁぁぁ…………!!!」
途絶え掛けた意識の中、ワタシは地を思いっきり蹴り相手との距離を詰める。
相手はその行動に対し力業で対抗する。
降り下ろされた豪腕の右腕を紙一重で交わし、反転するように身体を捻って相手の背後へ回り込む。
回り込んだ際に一撃、背後に移った際に三撃加える。
相手がワタシの攻撃に反応し振り返った瞬間、ワタシは更に身体を捻って相手の攻撃を交わしつつ、再び相手の背後へ回り込み攻撃を加える。
これを何度も繰り返し、相手がワタシのスピードに追い付けなくなるまで攻撃を与える。
しかし、そんな猫だましのような攻撃が通用する訳も無く、相手はすぐさま体勢を整え始める。
くっ!やっぱり、物理技では対抗出来ないか…………。
ワタシは後ろへ跳躍し、剣を鞘に収め姿勢を下げて『型』を構える。
そして、左手で握る柄に意識を集中させ、妙技を振るう。
《六導十八門》…………。“四式八之型『焔九尾』”!!
「………ッ!!」
剣先から飛ばされた九つの焔が、敵の身体に命中する。
居合いの要領で放たれる、飛ぶ斬撃。
それは、伝承に存在する名のある武士達が用いたとされる剣術の一つで、《剣匠》や《剣聖》と呼ばれる人達が編み出した『魔術』に近い武芸。
特に、ワタシの放った『焔狐尾』は、神速の域に達する要領で剣技を振るい、その間に出た空気との摩擦に火花を相手に叩き付けるというもの。
実際でのモチーフは、狐花火。
「ッッッ!!」
しかし、そんな目眩まし程度の技でさえも通用するはずが無く、敵は少しの間を空けて再び動き始めた。
所詮は目眩まし。本当にやりたかったのは、その攻撃による相手の対応と効果。
僅かな穴が、決定的な勝利への近道と成り得るという判断。
「……ッ!!」
突如、身体が悲鳴を上げた。
やっぱり、無理があったのかな?
「柚希!!」
思考を巡らせていると、背後から声が聞こえた。
振り向くと…………
「最中さん……、皆さん………」
三人の姿があった。
どうやら、時間切れのようだ。
「くっ…………」
いったい、どうすれば…………?
刹那────。
ワタシの胸の内から、小さな光が漏れ出した。
「な、何…………?」
その光は懐から放たれており、懐を探ると、中から見覚えのある小瓶が現れた。
「コレって……………」
今朝方、海岸で少女に貰った蒼い液体の入った小瓶だ。
その蒼い液体は次第に強い光を放ち出し、光が瞬く間にワタシの全身を包み込んでいった。
「んっ…………」
目を開けた時、ワタシの瞳に映ったのは先程までとは全く違う景色だった。
「此処は…………」
茜色に染まった空。
そこには雲一つ無く、途方もなく広い空間が広がっていた。
辺りを見渡していると───、
―――漸ク、繋ガッタ………。
声が聞こえた。機械音のような、無機質な声。
しかし、声が聞こえ何処を見渡すが、その存在は見当たらない。
―――我ハ、汝ノ『殻核』。
え?
その言葉にワタシは、耳を疑った。
しかし、そんな存在はいつしか予期していた。
ワタシの身体に刻まれた《烙封印》。それが今、こうして話し掛けているのだと思ったが、そうではなかった。
―――我ハ、『全能なる大樹』。汝ノ内ニ眠リシ、『虚ろなる意思』。
その言葉でようやく理解した。
その声の主は、ワタシが《ark folltce》と呼んでいる存在そのものであると。
一つの伝承の中で、とある神が己が暮らす世界を一つの大樹に見立てて表現した。
それが、《世界樹》──『ユグドラシル』と呼ばれる『大樹』。
ワタシは、《世界樹》を真似て、ワタシ自身を一つの『樹』として扱い行使している。
それが、《全能虚樹》の正体。
伝承上の《世界樹》には三本の『根』が伸びており、それらは、『理』『概念』『事象』の法に繋がっている。
故に、ワタシの《全能虚樹》には―――、
『概念』を解き明かす『眼』の役割を持った“対戦術予知視眼”。
『理』を導き出す『思考』の役割を持った“対戦略観測思考”。
『事象』を縛る『鎖環』の役割を持った“対戦闘覇戒兵装”。
が存在する。
これらはワタシが想像し造り上げた偽法であり、実物するはずの無い存在だ。
「アナタは、いったい…………?」
ワタシは、声にしてその答えを問う。
―――? ソノ声色、汝ハ誰ダ……?
その答えは予想していなかった。
どうやら、《全能虚樹》も、コチラの姿が見えていないようだ。
状況を整理する為、ワタシは《全能虚樹》に改めて問う。
「アナタは、何者ですか? 此処は、何処ですか? 何故、今になって………」
―――我ハ、汝の『殻核』。
「コア………」
おそらく、機械の内部部品のようなものだろう。
―――汝ハ、我ラガ骸ノ中。
ムクロ………。つまり、今のワタシは、自身の精神の内にいるということだろう。
―――此度ノ邂逅…………、
最後の問いにのみ、《全能虚樹》は答えに詰まった。
―――外側カラノ、干渉ト推測………。
それについては心当たりがある。
おそらく、先程の小瓶の中の蒼い液体だろう。
あれが何だったのかは分からない。けど、その蒼い液体の影響でワタシは今こんな場所にいるんだと思う。
ふと、上を見上げた。空はいまだ、茜色のままだ。
―――我、汝トノ『契約』ヲ……求ム。
ケイヤク…………。ソレが何なのか………。
ワタシは、その答えが分からぬまま、《全能虚樹》に訪ねた。
「それは、アナタの『意思』………ですか?」
その答えを出すはずの無いと知りつつも、ワタシはその『答え』を待った。
―――『契約』ヲ………結ベ。
「ふっ………」
不適な笑みが溢れた。
ワタシは、何を求めていたんだろう。
力か…。正しさか……。いや、こんな状況で、何が正解かなんてそんなものは存在しないのだ。
ならば、その答えは、後で見つければ良い。
「………分かりました。その『契約』とやら、結びます!!」
その解答で、ワタシの視界は戻り、《全能虚樹》の最後の声が奇妙に聞こえた。
―――承認。《冥樹》・《仙樹》ノ出現ヲ、確認…………。
「柚希………?」
意識が戻って早々、背後から聞き慣れた声が聞こえた。
「最中さん………」
微かな違和感を感じる脳で、現状を再確認する。
前方に映るのは、闇色の何かを纏った男達。
後方には、少々頼りない頼もしい友。
前方が敵で、後方が見方だ。
「ワタシ、どのくらい立ち尽くしていましたか?」
「ん?………、二十秒……くらいかな?」
最中さんは、シルヴィアさんとセレナさんと顔を見合せ、不思議そうな表情で答えた。
「そうですか………」
「どうかした?」
「い、いえ、何でもありません!」
最中さんに訪ねられ、ワタシは慌てて否定した。
その対応に、唯一、セレナさんのみが怪訝そうな表情をした。
「それより、これからどうなさるおつもりですの?」
シルヴィアさんに訪ねられ、ワタシは思考を廻らせた。
ワタシの脳内には、いつの間にか覚えの無いはずの知識があった。
それが、先程の空間での出来事の結果だと、すぐに理解できた。
その時、ふと思い出して、懐の中をまさぐった。
「あ………」
そこには、あの空間に飛ばされる前まで光っていた小瓶がある。
取り出してみると、不思議なことになっていた。
「…………」
なんと、小瓶の中身は空っぽだったのだ。
しかし、そんなことは今はどうでもよかった。
それより、この状況をどうにかしないと…………。
「あの、三十秒程だけ、時間を貰えますか?」
「? いいけど、何をするの?」
最中さんの問いに、ワタシは小さな間を置いて答えた。
「少し、やってみたいことがあるんです」
答えている間に、ワタシは脳内から『真新しい情報』を引きずり起こす。
「やりたいこと?」
最中さんの問いに答えず、思考を廻らせ続ける。
「………分かった。三十秒だけね?」
最中さんは、身を固めたように地を蹴り、敵に向かって走り出した。
シルヴィアさんとセレナさんは、そんな最中さんの後に続いて走り出した。
その後ろ姿を気にも留めず、ワタシは《全能虚樹》の『根』ではなく、『幹』に回路を接続する。
伝承上の《世界樹》の『幹』には、神々が住まうとされ、その真上に位置する無数の枝木は、神々をも手が出せない世界の『英知』が存在するという。
ならば、ワタシの《全能虚樹》はそれを着実に再現出来るはずだ。
脳内に出現した、小さな結晶体。
その結晶体の中に、『真新しい情報』は収納されていた。
……………ッ!!
結晶体が砕け、中に収納されていた情報が、ワタシの脳内を侵食するかのように膨大に膨れ上がった。
「カッ!クッ……!!」
酷い頭痛がした。
なんとか痛みを堪え、膨れ上がった情報を読み取る。
「ガッ、ア、あぁぁぁぁあぁぁぁ……………!!!」
しかし、そんな痛みもつかの間、今度は全身が悲鳴を上げた。
それが、《烙封印》によるものだと瞬時に理解できた。
そして、ようやく気付いた。
その『情報』は、ワタシの『過去の記憶』だ…………。
ワタシが、《神威柚希》である以前の『記憶』───ワタシの『可能性』。
その『記憶の情報』によって、ワタシは認識した。
『記憶』があれば、今度こそッ………!
ワタシは、意識を強く保ち、回路を『幹』から『枝木』へ、更にそこから伸びる小枝を伝い、その先に成っている無数の『実』の内の、その一つに走らせる。
その『実』の果肉は、ワタシの肉と成り、その果汁は、ワタシの血と成る。
ワタシは精神を回路と同一化させ、その『記憶』を用いて、その『実』を、ワタシの身体に刻まれた《烙封印》の一つに浸透させる。
「あ…………」
『実』が《烙封印》に取り込まれた瞬間、ワタシの身体から痛みが抜けた。
「これが………、本来の《烙封印》の『在り方』」
身体の一部に宿った『権能』を認識した瞬間、ワタシの意思は『権能』を『再現』していた。
───蒼窮を舞い踊りし天邱の防人!激戦をくぐり抜けしその翼翻し、かの地より顕現せよッ!!
ワタシの身体から放たれた碧い光。その光は、ワタシの左手にその形状を確立させる。
ワタシの意思が形作る『英知の権能』。
ワタシの精神が彩る『記憶の昇華』。
その二つが織り成す『奇跡』は、ワタシの過去への『軌跡』となった。
「皆さん、お待たせしました」
ワタシの声に、最中さん達はほぼ同時にコチラへと跳躍する。
「結局、なにが……って、何ソレ?」
最中さんの言葉が止まり、その視線はワタシの左手に向けられた。
「碧い剣………」
シルヴィアさんが、呟く。
ワタシの左手に握られた、碧い光を放つ刀剣。
それは、ワタシが腰にぶら下げているモノでは無く、先程ワタシが造り上げた『権能の結晶』。
それが、本来のワタシ───その結果だ。
「それが、柚希がやりたかったこと?」
「はい」
ワタシは、力強く答えた。
「ですが、ソレをしたところで、この現状を変えられるんですの?」
その問いに、辺りが沈黙に閉ざされる。
「それに関しては、多分………大丈夫です」
「多分……?」
「コレの性能、少し試させて貰えませんか?」
「!?」
シルヴィアさんの顔が、一瞬にして青ざめた。
無茶を言っているのは承知だ。
だけど、それでもやり通したい『モノ』がある。
「じゃあ、私達はどうすれば良い?」
最中さんが平常な表情で問う。
本当は、最中さんもシルヴィアさんと同じ思いのはずだ。
しかし、それは彼女自身が気付いているのだろう。
だが、おそらく最中さんは、ワタシのことを何より気に掛けている。
それは、以前彼らを一人で相手していた時の反動だ。
だから、ワタシは一言言って、その場から逃げるように走り出した。
「大丈夫です。コレは、ワタシの問題で、何よりワタシ自身がやり遂げたいことですから………」
まるで最後の言葉だと、そう思われても良い。
ワタシは、ただこの『感情』を否定したくて仕方なかったのだ。




