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『ゼロから始める信用革命』~異世界最初の銀行を作ったら、世界大戦の勢力図が変わった~  作者: ユウジン


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第一話 銀行のない世界

午前8時。


東京中央銀行本店。


数千人が働く巨大なビル。


その最上階に、一人の男がいた。


名前は――


岡崎。


37歳。


役職。


執行役員。


日本銀行業界では異例の速度で昇進した男だった。


入社してわずか15年。


同期より10年以上早く、経営側へ上がった。


理由は簡単。


彼は数字だけを見なかった。


銀行員の多くは、


「この会社は利益が出るか」


「この人間に貸して返ってくるか」


を見る。


しかし岡崎は違った。


「なぜ、この人は金が必要なのか」


「この事業は、本当に未来があるのか」


を見る。


融資とは金を渡す仕事ではない。


未来へ投資する仕事。


それが岡崎の信念だった。


「岡崎さん……」


昼前。


若い銀行員が震えながら近づいてきた。


名前は佐藤。


入行2年目。


顔色が悪い。


「どうした?」


「融資案件の資料……間違えました」


岡崎は資料を見る。


数字の入力ミス。


一見、小さなミス。


しかし。


このまま審査会議に出れば、数十億円規模の融資判断を誤る可能性がある。


佐藤は俯く。


「もう終わりました……」


「俺、銀行員向いてないです」


岡崎は資料を閉じた。


「佐藤」


「はい」


「銀行員に必要なのは、ミスをしない能力じゃない」


佐藤が顔を上げる。


「ミスした後、何をするかだ」


岡崎は机に資料を置く。


「一緒に直すぞ」


「でも岡崎さん、今日表彰式が……」


「そんなものは後でいい」


「目の前の人間を助けられない銀行員が、企業を助けられると思うか?」


その言葉に、佐藤は涙をこらえた。


数時間後。


資料は完成した。


融資審査も無事終了。


佐藤は頭を下げた。


「ありがとうございました」


岡崎は笑う。


「次は一人で直せ」


「はい」


「でも、困ったら頼れ」


それが岡崎のやり方だった。


夜。


全国銀行員表彰式。


会場には日本中の金融関係者が集まっていた。


名前を呼ばれる。


「今年度、金融業界への多大なる貢献を称え――」


「岡崎氏」


会場から拍手。


史上最年少受賞。


岡崎は壇上へ上がる。


しかし。


本人は嬉しそうではなかった。


表彰状を受け取りながら考えていた。


(金融とは何なんだろうな)


数字。


利益。


成績。


それだけではない。


銀行は人間の人生を左右する。


だからこそ怖い。


力を持つ者ほど、慎重でなければならない。


帰宅途中。


岡崎は公園へ寄った。


缶コーヒーを買う。


ベンチに座る。


夜風が吹く。


「疲れたな……」


37歳。


若くして成功した。


周囲からは羨ましがられる。


しかし。


岡崎自身は満足していなかった。


もっとできることがある。


もっと多くの人間を救える仕組みがある。


そう考えていた。


その時。


隣から声がした。


「お前は……」


岡崎が振り向く。


そこには老人が座っていた。


いつからいたのか分からない。


古びた服。


しかし、不思議な威圧感。


「金融を扱う者か」


岡崎は警戒する。


「なぜ分かるんです?」


老人は笑う。


「目を見れば分かる」


「お前は金を見ていない」


「人間を見ている」


岡崎は黙る。


老人は続けた。


「お前には力がある」


「だが……」


老人の目が鋭くなる。


「その力を使う場所がない」


「……何を言っているんですか?」


老人は空を見る。


「金のない世界で」


「お前は何を作る?」


岡崎の表情が変わる。


意味が分からない。


「金のない世界?」


老人は笑う。


「いや」


「正確には――」


「金の意味を知らない世界だ」


その瞬間。


空が光った。


雷ではない。


街全体が白く染まる。


スマートフォンが一斉に消える。


街灯が消える。


車が停止する。


人々の声が響く。


「何だ?」


「停電か?」


しかし。


違った。


岡崎は立ち上がる。


空を見る。


星が消えていた。


まるで世界そのものが壊れているようだった。


老人だけが静かだった。


「始まったか」


岡崎が振り向く。


「あなたは何者だ」


老人は答えない。


ただ。


最後に言った。


「岡崎」


「次の世界では」


「お前が最初の銀行家になる」


眩しい光。


体が浮く。


意識が遠のく。


目を覚ました。


土の感触。


鳥の声。


知らない空。


岡崎はゆっくり起き上がる。


周囲を見る。


見たことのない森。


遠くに巨大な城壁。


服はそのまま。


スマートフォンは動かない。


財布の中の紙幣も意味を持たない。


しかし。


一つだけ残っていた。


頭の中にある知識。


金融。


経済。


信用。


銀行。


岡崎は立ち上がる。


「……なるほど」


老人の言葉を思い出す。


『金の意味を知らない世界』


岡崎は歩き出す。


この世界には。


銀行がない。


信用という概念すら未成熟。


ならば。


自分が作るしかない。


「銀行家になる、か」


遠くで鐘の音が鳴る。


後に世界を変える男の物語が始まった。

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