最終幕『あたしは知ってる、君が歩いていくこと』
あたしは、空を見上げた。
焼け跡から立ちのぼる煙の、その向こう。
ほら、ちゃんと晴れてる。
——よかった、間に合ったね。
「ふぅ……まさか、あそこまでやるとは思わなかったよ」
そう言いながら、ひときわ大きな瓦礫に腰を下ろす。
リクも、セブンを肩に背負ってこっちに歩いてきた。
顔はちょっと煤けてるけど、どこか誇らしげだった。
「おつかれさま。勇者さん」
言いながら、ふと目を細める。
ねえ、リク。
「さっきさ、セブンが起動した瞬間。あんたの髪、一瞬だけ——緑に、光ったの。気づいてた?」
彼は目をぱちくりさせた。
私はすぐに笑って誤魔化した。
だよね。本人にも、自覚はないか。
この世界で“緑の髪”ってのは、古代文明の遺産にリンクできる、ごくごく限られた素質の証。
本来は、こっちの世界の人にしか、出ないはずの印——
なんで“異世界人”の彼が?
でも、言葉にはしない。ただ、微笑んで肩をすくめた。
まあ、いいか。今はまだ。
戦いは、始まったばかり。
魔王を倒しに行く——って、それだけなら、まだよかった。
でもきっと、あの子が巻き込まれていくのは、
それよりも、もっと深くて、もっと厄介で、もっと危ないものだ。
これは、予言……というより、予感。
でも、リクはきっと、歩いていく。
あの目をしてたもん。誰かを守るときの、強くて真っすぐな目。
そして彼は出会うだろう。——仲間たちと。
リクは、きっと彼等と出会い、繋がっていく。
それが、この物語の本当の始まり。
……でも、ちょっとぐらいなら、あたしのことも覚えててくれるといいな。
ね? 勇者くん。
——the episode’s end.