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境界のソードファンタズマ  作者: 矢崎 那央
第1部6話『空に届く力』
29/80

第4幕『戦場にて、剣は重く、意志は鋭く』


 オレは今、戦場の真ん中で暴れてる“何か”に、思いっきり殴りかかってる。


 「ぅおおおおらあああああ!!」


 

 ズガンッ!



 セブンの刀身を両手で振り抜いて、真正面から叩き込む。

 質量5tに設定した一撃が、でかいトカゲみたいなモンスターの顔面を潰した。


 骨の砕ける音と一緒に、地面に沈む重量感。

 派手に血が飛ぶが、どこか現実味がなかった。


 


 たぶん、相手が人間じゃないからだ。

 まだ“殺す覚悟”なんて、できちゃいない。

 けど、こいつらは……まだマシだ。


 


 「ワイヤー支点、左上。展開します」


 

 アリスの冷静な声が響く。


 同時に、視界の上端に銀のラインが伸びた。

 建物の瓦礫に刺さったワイヤー。オレの頭の少し上。



 「サンキュッ!」



 オレはそれを蹴って、空中へ。


 真下に、モンスターが一体。牙を剥いてこっちを見ている。



 「質量、15tで着地補正!」


 《了解》



 セブンを逆手に構え、全体重+セブンの重量で落下。


 バシュッ!


 


 風を切る音と、骨の砕ける音が重なった。


 ……なんだこれ。

 むちゃくちゃ効率的だ。


 


 「さすがだよ、セブン」


 《称賛と理解不能な戦闘スタイルを同時に受理。

 記録名称:“重撃型フリーフォール連携”》


 


 「わかりづらッ!!」


 


 そのとき、背後でまた別のモンスターが吠えた。


 こっちを見て、突進してくる。

 背丈2メートル超えのイノシシみたいな奴。牙のサイズだけでヤバい。


 


 ……が。


 


 「では、特訓の方法を——説明しよう!」


 


 ギュウウウウン!


 


 空間が光って、男の横に、妙な物体が転送された。


 


 トゲトゲ。

 鉄製のゴーレム。

 胸に「訓練用」と書かれた看板が下がってる。


 


 「“ナグリマネキンMk-Ⅳ”転送完了ッ!!」


 


 「いやまたお前かよ!?今それ出すタイミングじゃ——」


 


 ズドォォン!!


 


 突進してきたモンスターが、ゴーレムにぶつかる。


 


 そして——


 


 ボンッ!!


 


 爆発した。


 


 訓練マネキンごと、敵がふっとんだ。

 地面がえぐれ、黒煙が立ちのぼる。


 


 オレとアリスが揃って硬直した。


 


 「……なんか、勝ったぞ」


 


 「確認:戦術効果、良好です」


 


 爆風の収まったあと、しばらくして彼はポツリと呟いた。


 


 「……いや、あれは、ミナセくんの訓練用仮想敵として転送したのだが……」


 


 視線の先では、モンスターの死体が煙を上げている。


 「モンスターがうじゃうじゃいる場所で、わざわざ“訓練用”を出す意味はなかったのでは……?」

 



 「……しょぼーん……」


 「オイ!!こんな鉄火場でしょんぼりすんな!!」


 


 ——それでも。


 前を見れば、まだモンスターは残ってる。

 地面を這い、壁を壊し、叫びながら迫ってくる。


 

 アリスが、次の支点を張った。


 セブンの質量設定が変わる。


 白衣の男が、今度は小型の起爆球を取り出し、別のモンスターにポイっと投げる。


 


 もう、オレたちは完全に“チーム”だった。


 

 「アリス、次、あの屋根の上!」


 「展開します。補助支点、右上、三秒で展開完了」



 「セブン、質量上限どこまでいける?」


 《この環境下では80tが限界。使用時は覚悟と覚悟と覚悟が必要》


 「お前の警告、地味に怖ぇよ!」


 

 ツッコミながら、オレはまた跳んだ。

 空のど真ん中。


 この戦場のど真ん中で——


 


 オレは、ようやくこの世界の“地面”を踏んでいる気がした。


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