三話
パーティーの翌日、マリー達は王城にある王子の執務室に訪れていた。
「連絡なしで訪れてよろしいのですか? 」
ルイは学友と言えど相手はこの国に一人しかいない王子、流石にアポ無しでは取り合ってはくれないだろうと考えていた。
「問題ないわ。アイツは私に逆らえないもの」
マリーは扉を勢いよく開け、部屋に入っていく。
「レオン! 私を他国へ遠征させて」
「マリー、いきなりどうしたんだ? 来るなら連絡ぐらいしたらどうだ」
レオンはいきなり入ってきたマリーに対し、驚くことなく淡々と答える。
「連絡したら、貴方理由をつけて会わないでしょ」
「そんなことはない。数少ない友達じゃないか」
レオンは笑みを浮かべる。
ルイはその笑顔を見て、令嬢殺しの二つ名は伊達ではないと思った。
「ならその友達の願いを聞いてくれるわね」
「断る」
レオンは強く断言した。
「君は、公爵令嬢であり第三宮廷魔術師長と言う役職を持っている身だ。おいそれと他国へ派遣させられないよ」
「貴方の権限なら何とかなるでしょ」
「断る。君を派遣するなんて嫌な予感しかしない」
ルイはその考えに大いに同感した。
しかし、マリーは止まらない。
「お願いよ」
「ダメだ」
「こんなに頼んでも? 」
「どんなに頼んでもだ」
マリーはレオンの耳元による。
「じゃあ貴方が風俗街に夜な夜な行っていることをバラしてもいいのかしら」
その言葉にレオンの顔が険しくなる。
「何の話だ」
「知らなかったわ。まさか幼い子だけを集めた貴族御用達の風俗があるなんて」
「確かクロエって名前よね。貴方のお気に入りの子。貴方昔から変わってないのね」
レオンは震えながら俯いていた。
「俺を脅す気か」
「私は警告しているだけよ。私が知っているってことは他の人も知っているかもしれないものね。それに脅すならもっといいネタがあるもの」
マリーはレオンの耳元から離れ不敵に笑う。
「やめてくれ、言う通りにするから」
「ありがとう。貴方が友達でよかったわ」
その言葉を聞いたレオンはため息をついた。
「一週間後、タリア国の王女の誕生日パーティーに行く。その護衛としてくればいい。それなら君もついてこれるだろ」
確かに王子の護衛ならば魔術師長が同行しても問題ないとルイは思った。
「ちなみにその王女の年齢は? 」
「パーティーの日に二十歳を迎える」
「婚約者はいるの? 」
「縁談は来るらしいが全部断っているそうだ。どうしたんだ? 」
レオンは疑問を顔に浮かべながら聞く。
「私、王女様と仲良くなれそうだわ」
「ちなみに王女はノーマルだぞ」
「別に狙ってるわけじゃないわよ」
マリーは不服そうに頬を膨らます。
「きっと今も素敵な男性を待っているんだと思うと親近感が湧くのよ」
「君はその子より八才は年上だろう」
「私はまだ27よ」
その声から怒りが伝わってきたレオンはこれ以上話していたらまずいと思った。
「とりあえず、一週間は大人しくしてるんだな。くれぐれもイケメンがいたからと言って襲わないように」
「あら? 気づかなかったけどこんなところにイケメンがいるじゃない」
マリーは拳を握りしめて笑顔でレオンに近づいていく。
「待て。君は素敵な女性だと思うが、僕にはローズがいるんだ」
レオンは逃げようとするも扉側にマリーがいるため逃げるに逃げれない。
「遠慮なさらずに浮気は得意でしょ? 」
「やめろおおおおおおおお」