二話
まずは、エマのパーティーで婚活をしましょう。どんなアプローチがいいかしら? 」
「妹の婚約パーティーで男探しですか? 」
ルイは床に散らばった書類を片しながら椅子に座り婚活の作戦を練るマリーにちょっとした嫌味を言う。
「エマと同い年ぐらいの子達はどんな子がいるのかしら? 」
しかし、マリーは自分の世界に入ってしまったからか、ルイの言葉は届いていないようだった。
ルイはため息をつきながら散らばった書類を丁寧に新しく持ってきた机へ積んでいく。
パーティー当日となった。
会場である公爵邸はとても広く、長く暮らしていたマリーですらたまに迷うことがあるほどである。
しかし、今日使うパーティー会場には公爵邸に住む使用人達が案内してくれるので迷う心配がない。
マリーは歩きながら、作戦をルイに告げた。
「ルイ、作戦はこうよ。気になった男に話しかける。題して感性を大切にしよう」
「感性を大事にするのは分かりますが、もう少し具体的な策はないんですか? 」
ルイは大雑把すぎる作戦に呆れていた。
「仕方がないでしょ。私、エマの同年代の男性は知らないんだもの」
マリー達はパーティーの会場となる広間に着く。
そこにはかなり大勢の人がいた。
十代の若者が多いようだ。
楽しそうに談笑しているものが多かったが、マリーを見ると皆話すのをやめた。
会場が途端に静かになる。
「どうしたのかしら? 」
マリーは不思議に思い、後ろに控えているルイに尋ねる。
「恐らくですが、マリー様に恐縮しているのではないでしょうか? 」
「私が綺麗だから? 」
「それもありますが、別の理由が大きいでしょうね」
マリーはますます疑問に思い、ルイに深く聞こうとするとコソコソと話し声が聞こえてきた。
マリーは耳を魔法で強化して聴力を上げ話し声が聞こえるようにした。
「おい、マリー様だぞ。なんで誰も挨拶に行かないんだ。この場では一番上の階級だろう」
「お前知らないのか? 教師の身包みを剥いで吊るしたり、次代の賢者を泣かせた挙句三日三晩土下座させたり、王子を半殺しにした話は有名だぞ」
「そんな物騒なお方だったのか。しかし、挨拶しないのは逆に失礼になるのでは? 」
「バカを言うな。学園時代、挨拶をした奴は片っ端からボコされたんだ。そんな人に挨拶をしに行くなんで変態かバカしかいない」
「なんと恐ろしい方だ。挨拶に行かなくてよかった」
マリーは魔法を解く。
「なるほど、別の理由がわかったわ」
ルイは怒らないマリーを不思議に思った。
「落ち着いておられますね」
「まぁだいたい事実だしね。ただ、教師がセクハラ野郎だったことや、賢者は自分の実力をひけらして、他人を見下すカスだったことや、挨拶にきた人間はもれなく喧嘩を売ってきたことなんかが抜けているけどね」
「ちなみに王子の件は? 」
「あれはあいつが浮気したのがバレて婚約者にボコされたのを私のせいにしたのよ。それにムカついた私が半殺しにしたから間違ってはいないわね」
ルイは王子の件の真相は知らなかったので驚いたと同時に、マリー様らしいと納得した。
「けれどこれじゃあ未来の旦那様を見つけることは無理ね」
マリーにとって恐れられているとはいえこんな綺麗な女性に挨拶をしない奴等は論外だと思った。
「では、どうなさいますか? 」
「そうねぇ。他国の貴族を狙うのはどうかしら? そうね。それがいいわ。この国にいないなら他国へ行けばいいのよ! 」
マリーは名案を思いついたのでついつい声が大きくなった。
その声に周りの貴族達はビクッと反応した。
「しかし、どのように行くので? マリー様は公爵令嬢だけでなく、第三宮廷魔術師長と立場があります。簡単に他国へ赴けるとは思いませんが」
「安心しなさい。考えがあるわ」
マリーは不敵に笑う。
その笑みを見た貴族達はヒィと怯えた声を出した。
ルイはまた一つ伝説ができそうだと考えていた。




