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深淵聖女(ディープマリア) ~転生魔王は勇者ご一行~  作者: 恩谷
JUPITERIAS(ジュピタリアス) 第三章 ~ハミルトンの魔女~
60/61

59.鋼鉄騎士と暗黒魔導士の因縁

お待たせしました。


内容が結構大人向けの話です。

挿絵(By みてみん)






ツタの様な青紫の花が咲き誇る露天風呂の天井。水面に漂うフルーツの数々。漂う甘酸っぱい香り。午後の日の明るいうちから、まるで紅茶を嗜むかの如く湯浴みに来る街の女性たち。



「ふぅ~~、いい街ねぇ~~」



目立つ赤髪を金髪に戻したメサリアは、肩まで湯に浸かりながら、目の前に広がる古き街並みと緑生い茂る山々を眺めた。


街並みのひとつの家屋の2階から顔を出す少年が、コチラを向いたように思えたがすぐに窓を閉めた。



「ねぇ~~。アレって絶対見えてるよね、私たち」



「気にしない気にしない。この街の文化だし、露天風呂の周りを結界魔法で覆い続ける方が非効率的ッスよ。それに…我ら見られて減るようなものじゃないでしょ?」(クスクス)



メサリアに答えるグリフィンシア。



「アナタはそういうの気にしないでしょうね、露出狂だし囚人が沢山いてもお構いなしだったものね!」



「コラコラ。それはもう忘れるッスよ!」(苦笑)



「それにしても、来なかったわね~~プリパレイダ」



「アークノイア殿下もね。まぁ殿下は来たとしても男湯ッスけど」



メサリアがふと気になってグリフィンシアに問いかける。



「ねぇ。殿下はなんで来れなかったの? なんて言ってた?」



「なんか寝床を整えて部屋でゆっくりするって言ってたすよ?」



「寝床~??」



今度はグリフィンシアがメサリアに問いかける。



「プリパレイダはなんて言っていたッスか?」



「なんか部屋ですることがあるとか。あと殿下と昔話もしたいとか………え゛ッ?」



メサリアが急に思いついたかのように顔をしかめる。



「あ~~、なるほど。あの子も結構やることエグイっすね。王族って乱れてるのかしら」



「ちょっ、確かにアナタも王族だけど。ってええ?? もしかして寝床を乱す行為をしてるってこと!? セシルさんは??」



「いやいや、雷鳴は昔そうだったって事だし、現に5年とか会ってないって言ってたし。それに殿下とはこれからチームとして一緒にアリシア女帝に挑むわけだから『絆』を深めておいて損はないんじゃない?」



慌てるメサリアと落ち着いているグリフィンシア。



「そんな簡単な話じゃないでしょ!? だってホプスエリンであんなにセシルさんとラブラブしてたのに…」



「付き合ってるわけじゃないって言ってたッスよ? それに簡単な話じゃないでしょ、彼女のピンチに昔からの知り合いのイケメンがわざわざ駆けつけてくれたんだから。実際かなり喜んでいたじゃない彼女。アレは雌の表情だったわ」



「そうなの!? もう確定なのそれ!?」



「だって言ってたッスよ。身体はホムンクルスだから何しても平気だって、ノーカンだって」



青ざめるメサリア。



「うわぁ………プリパレイダネキ…ヤバい娘だったのか………」



「よくある話でしょ。同窓会で再会した2人がそうなるって話」



空を見上げるメサリア。野鳥の鳴き声に紛れて、彼女の声までもが聴こえてくるような錯覚を覚えた_____






59.鋼鉄騎士と暗黒魔導士の因縁






[アリシア王国 古き恵みの街ランパルディ フルーティオーシャンホテル]




朝7時を回った頃、宿屋のロビーへ階段を降りていくメサリアは男同士のやり取りの声を耳にする。受付を拝むとそこに居たのはアークノイア殿下と疾風のリベルダ。そして壁際の椅子に腰かけるプリパレイダだった。



「…殿下。言っときますけどコレはある意味スキャンダルですぞ」



「リベルダおじさんは我が国の臣下じゃないんだから、気にしない気にしない」(はっはっは)



「だったらせめて防音の魔法でも張り巡らせてからにしてください! 私が耳が良いのは知っていますよね!?」



「おじさんが誰にも言いふらさなければ良いだけじゃないか」



「私の責任重大ですよね!!?」



目の下に隈が出来ているリベルダとは真逆でお肌がツルツルのアークノイア殿下。プリパレイダは少し顔を赤らめながら惚けて、じっと殿下を眺めていた。



「アーくん~~まだぁ? 私お腹空いたんだけど~~」



『うへぇ』



果てしなくぶりっ子を気取るプリパレイダを見て、メサリアはドン引きするような表情でため息をついた。そしてプリパレイダに近寄る。心なしか少し距離が空いているように思える。



「プリパレイダ…アナタねぇ………ちゃんと寝たの?」



「あ、メサリーおはよう! 寝たよーー1時間くらい??」



「ハァ!?!? 1時間しか寝てないの!? なんで!!??」



「なんでって、アークノイアくんと〇ックスしてたからに決まってるじゃない」



「△×□〇×▽◇◎!?!?」



ド直球の言葉にメサリアが混乱する。


突如後ろの階段から笑い声が聞こえる。グリフィンシアがむき出しのヘソを抱えて高笑いを繰り出した。



「昨日の昼間からずっとかよ~~。とんでもない女ッスね、後でどうだったか聞かせてほしいッスよ」



「あ~~聞いておくれ~~グリフィンシアちゃん頼む~~。殿下の魔法剣の話聞いて~~??」



『コイツ… マジで昨日までのあのプリパレイダ? 別人みたいなんだけど!? グリフィンシアよりもそっち方面の感覚ヤバくない!?!?』



壁に手を着き頭を抱えるリベルダに駆け寄ると、メサリアは心配そうに顔を伺った。



「大丈夫ですか? あの、心中お察しします…」



「お気遣い感謝する。いっそインペリアルオーダーの餌食になってしまえって思ってしまいましたよ」



『おいおいお前もお前で結構言うなあ!! 殺意高い!!』



冷や汗が止まらないメサリア。



「おーーーい。アンタら落ち着いて? この旅の終点をココにしちゃうけどよろしいか??」(苦笑)(怒)



皆「……………」



一斉に黙り込む4人。チームの相性はお世辞にも良いとは言えなく、今後が思いやられるなとため息をつくメサリアだった。


ふと耳を澄ませば聴こえてくる営みの声。メサリアは受付の下の宿名を目にする。



『ラブホみたいな名前』



次にメサリアは隣の説明文を読んだ。



『フルーティオーシャンホテルにようこそ! 当ホテルに気になる殿方とくれば絶対に結ばれる!(物理) 魔除けアイテムなどは外して来てください。当社特製の惚れ効果催眠魔法がアナタたちの気持ちを後押しいたします! ただし、ご利用後の責任は一切負いません。3時間コース金貨~………』



《バッ》



勢いよくリベルダに振り向くメサリア。



『どう考えてもココを宿に選んだテメェが諸悪の根源だろおおおおおおおおお!?!?!?』


「えっ!? これどうすんだ!?!?」



異常に引っ付くプリパレイダとアークノイアを眺めて顔が青ざめるメサリアだった_____






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[ルグリス平野 ランパルディブランケ街道]




朝一の大型キャラバンで長閑な街道を行くメサリアご一行。前を走る護衛の傭兵団のキャラバンと後ろを走る商人の荷を乗せたキャラバン、合わせて3台編成での旅路だ。メサリアたち5人以外には、あと4人と御者1人が乗っていた。


朝まで眠れなかったリベルダは、つい先ほどまでうつらうつらとしていたが、ようやく眠りについたようだ。グリフィンシアは先頭座席の方から前の傭兵団の連中を何やら観察しているようだった。



『ふぅん。6人中少なくとも2人は中々のやり手だな。アリシア南部の賊上がりか? 懐かしい空気を纏ってるッスね』



鋭い目付きで観察し続けるグリフィンシア。その視線に前の傭兵団は気づいていた。



「最近のルグリス平野は少し物騒だからな。お前ら気を付けろよ? 3日前の仲間のキャラバンは襲撃にあったばかりだぞ」



先頭のリーダー格の男が道の先を見ながら後ろの団員たちに声をかけた。一番後部に座る一人が後ろのキャラバンを凝視しながら振り向かずに応える。



団長スヴィム。俺は周りにいるかもしれない盗賊よりも、後ろの護衛対象の方が気がかりだぜ。なんなんだあの先頭の女。尋常じゃない気配をコチラに向けて来やがる。あいつはヤベエ」



「皆気付いているさグリッド。恐らく俺らの戦力を探っているのさ。あの女、恐らく俺らと出自は似ているかもな… 逆にこう考えるんだ。俺らだけで対処できない賊が現れても、最悪護衛対象に戦える奴がいるってな」



キャラバン後部に陣取る2人が言葉を交わす。



「バカ。護衛対象に助けられては俺ら傭兵団の面目丸つぶれだ! しっかりやるんだぞ! まぁお前たちの言うように、護衛対象のうちとりあえず2人は最悪戦えるだろうがな」



スヴィムがようやく後ろを向いて話し始める。



「気付いたか? あのエルフは我が国の疾風のリベルダ様だ」



「なんだって!?」



グリッドが1人だけ驚く。周りの仲間がやれやれと顔を見合わせる。



「だはははは! グリッド、お前あの女の視線に気を取られ過ぎだ。俺らみんな気付いていたぜ?」



少し恥ずかしそうに俯いて頭を掻くグリッド。



「マジすかぁ。連中みんなぼろっちいローブで身を包んでいるからわからなかったわ。だとすると、連れの4人もそこそこやれそうだな」



「まぁプラチナ級のリベルダ様に、プラチナ級の団長スヴィムがいるんだ。それに… よほどの事がない限り大丈夫だろ」



グリッドの隣の男が耳に手を当てて声を潜める。耳と口に小さい魔法陣が現れる。



「コチラ先頭車両のケニット。後部車両聴こえるか?」



《コチラ後部車両、イーグルアイ。商人の荷は無事だが、どうもきな臭い》



「なんだって?」



ケニットが魔法陣を拡大し、皆に聞こえるようにスピーカーにする。



《この先街道が大きく曲がるが、その先の街道脇の森からどうも嫌な気配がする。商人が言っていた例の不安要素かもしれん。一度確認してくれ!》



通信が終わるとスヴィムは一度馬車を止めるように指示し、3台のキャラバンはやがてその場に停止した。スヴィムが真ん中のキャラバンへと足を運ぶ。



「ワーグナー殿。少しいいだろうか」



「おお、団長殿、どうかされましたか?」



おどおどした様子で顔を上げたのはキャラバンの真ん中辺りに蹲っていた中年太りの商人だった。それなりに良い身なりをしており、商いが順調であることを物語っている。



「今回の行商、商工会のスケジュールに公開されているもので、それなりに額の高い物と伺っておりますが、そうですね?」



「あぁ、ええ。商工会のスケジュール通りですし、ランパルディで仕入れたそれなりのモノを積んでますゾイ?」



「アナタは商工会で最近妖しい動きをする間者を目撃している、と言っていましたね」



「ええ。黒いマントの男が商工会から素早く出ていくのを目の当たりにしましたゾイ。今回あなた方を雇ったのもそれがあったからですぞ」



スヴィムが考え込む。先頭のキャラバンからケニットが駆け付けて来た。



「スヴィム。イーグルアイが黒いマントの連中を目視した」



「ドンピシャだな」



スヴィムがワーグナーとその他搭乗者に聞こえる声で話し始めた。



「みなさん。うちの眼の良い者が黒マントの賊の待ち伏せを確認しました。この先の森を抜けねばルグリスブランケへはたどり着けませんし、戦力的にも私たちはそれなりに自信がある。強行突破するのでみなさんはキャラバンの中に身を潜めておいてください」



皆「賊じゃと!?」「ええっ、怖い!」「大丈夫なのか!?!?」



「それでいいですね、ワーグナー殿?」



「ぬぅ。致し方ありません。この道を通らねばルグリスブランケまでもう5日は掛かってしまいますからね。皆さんの力を信じますよ」



それを聞くと、スヴィムは先頭のキャラバンへと戻っていった。暫くしてキャラバンが再び動き出す。真ん中のキャラバンに搭乗する一般客が不安に騒めき始める。



「このあたりの黒マントの賊って言えば、盗賊ギルド『ギブスンメイル』じゃねーかな。まぁせいぜいゴールド級の烏合の衆って感じだから、傭兵団かれらでも大丈夫っすね」



グリフィンシアがメサリアに呟く。



「まぁいざとなったら私たちがいるし… ってリベルダさんまだ寝てる!」



メサリアがぐっすり眠るリベルダに驚く。



「というか、アタシは彼らの方が心配っすよ。街を離れてからずっとあの調子だし…」



グリフィンシアが後部座席のプリパレイダとアークノイアを心配した。2人は顔を俯きながらお互いに距離を取って座り込んでいた。


プリパレイダが顔をピンクに染めながら上目遣いでアークノイアを見つめる。するとアークノイアと視線が合い、すぐさま2人は視線を逸らした。



「うそだろ…」



アークノイアが馬車に背もたれを着いて顔面を片手で覆う。その顔も赤面していた。



『私、あのアークノイア君と凄いことしてた… なんで!? 確かにそう言う気持ちくらいはあったけれど… あれはやり過ぎだよ。セシルさんになんて言えばいいのよ』



プリパレイダがモジモジと両太ももを擦り付けた。メサリアがジト目で呟く。



「3人は使い物にならないわ。いざという時は私たちでなんとかしましょう、グリフィンシア」



「ブッ。そうだな、ははは」



軽く失笑するグリフィンシア。




3台のキャラバンはうっそうとした森へと突入した。街道が大きく弧を書いて曲がり出したあたりで、後部キャラバンからの通報が入る。



《お前ら、前方7人動き出したぞ。それから商品狙いと思われる5人が迂回してくる!》



「グリッドとケニットはイーグルアイと合流しろ! レインとベルディカは俺と共にここで奴らを食い止める! 中央キャラバンまで行かせるな!」



4人《ハッ!》



返事と共には羽織っていたローブを脱ぎ捨てる傭兵団。キャラバンの停止と共に前方の土が爆音と共に土煙を上げた。



《キャアアアッ!?》《ヒィィッッ!!》



騒ぎ立てる乗客。爆煙の両脇から黒マントが7人、キャラバンを包囲するように展開すると、リーダー格の男が声を上げた。



「積み荷を置いてけ!! そうすれば命くらいは見逃してやるかもなぁ!!」



「やはりギブスンメイルか。お前が頭領のサモアだな!」



スヴィムがそう言うと、サモアが手で合図をする。たちまち森から閃光のような矢が放たれ、スヴィムの右肩を貫いた。



「ぐあっ!?」



「団長!!」



すかさずスヴィムに駆け寄る女剣士。スヴィムが魔法通信を展開した。



「イーグルアイ、東の森に狙撃手がいる。雷矢使いだ! お前に任せる!」



《あいよっ!》



「ほぅ、ベントの雷矢を受けて戦意を喪失しないとは、中々やるな貴様」



サモアがニヤリと余裕そうに笑う。再び手で合図をするが、何も起こらなかった。



「チッ、ベントに誰か張り付いたな? お前らやっちまえ!!」



一斉に襲い掛かる盗賊たち。手負いのスヴィムと女剣士ベルディカが4人に包囲されつつ奮戦をする。他の2人はもう一人の魔女風のレインに襲い掛かった。



「ん? なんだ? 天気がいきなり悪くなってきたな」



後方で指揮をとるサモアが先ほどまで晴れていた空を見上げる。空は既にどんより暗く、雷雲がゴロゴロと音を立てていた。



「雷鳴の轟きよ(詠唱破棄)………!!」



《ズガガァァァンンッッ!!》



突如真上の雷雲から雨が降り注ぎ、魔女と相対していた賊の真上から巨大な落雷が2人を飲み込んだ。その場で黒焦げになって横たわる賊2人。



「な、なんだと!!? 天気を操る魔法使い!?」



落雷に気を取られた隙にスヴィムとベルディカがそれぞれ1人づつ切り伏せる。



「いいぞレイン。次はサモアを狙え!」



スヴィムの命令に頷くレイン。するとスヴィムに魔法連絡が入る。



《こちらイーグルアイ。すまん、目くらましにあった。雷矢の男がフリーになった。矢に警戒してくれ!》



「クッ、分かった」



突如東の森から放たれる閃光の如き雷矢、魔女を目掛けて突き進むが、直前で矢は雷の網に絡め捕られ、宙で停止してしまう。



「オート・サンダー………」



『何ッ!? 無詠唱だと!?』



木の陰に隠れていた狙撃手ベントが驚くと、近くの茂みから襲撃を受けて森の外へと追いやられた。



「クッ、貴様まだ…!?」



金色の鷲の眼を持つ傭兵がベントと斬り合う。



「イーグルアイ!! 無事か!!」



スヴィムに答える金色の鷲の眼。



「すまん。コイツは俺に任せろ!」



前方襲撃組の4人がやられ、残りの2人はサモアを護るように展開した。サモアが大きな剣を抜いて肩に乗せる。



「それなりの手練れを連れていたようだな。この血塗られのサモア様に剣を抜かせるとは!」



サモアが仲間2人の前へと出る。脇で戦闘中のベントが叫んだ。



「お頭ァ! その藍色の魔女、魔法使いレインだ! 気を付けろ!」



「なに!? ………あのプラチナ止まりの怠け者。詠唱破棄の天候使いか!!」



「………」



無言のレイン。サモアが口を開く。



「ということはお前ら、南のアガサ傭兵団か…ぬおおおああ!!」



スヴィムに斬りかかるサモア。剣で受け止めたスヴィムを腕力で圧倒する。



「スヴィム!! クソっ!!」



ベルディカは他の2人の相手で精一杯だ。レインが無詠唱攻撃をしようと片手を上げたのを見ると、サモアはスヴィムと着かず離れずを決め込む。



「………撃てない」



レインが躊躇する。サモアが告げた。



「くひひ…良いのか? 前方にこれだけ戦力を集中させて?」



(しまった。イーグルアイがこちらに来ては、後ろは2対5! まずい!!)


「クッ… 後方部隊、応答しろ! ………おい、グリッド。ケニット!」



曲がり角と天候の悪化で視界が悪く、後方を確認できないスヴィム。




「クソっ。やべぇ、こいつ等手練れを後方に…」



満身創痍でキャラバンに背もたれを着くケニット。



「イーグルアイさんがいれば何とか行けると思ったんだがな…」



片腕から血を流しながらグリッドが呟く。



「残念だったなテメェら。雑魚にしちゃ頑張った方だぜ? …殺せ」



5人の内リーダー格の巨漢が4人に指示を出した。



「おい、どうしたお前たち??」



リーダーの男が4人の異変に気付く。4人は膝から崩れ落ちると、白目を剥いて倒れだした。



「んなっ!? どうした、なにをしたテメェら!!」



「やれやれッスねぇ」



いつの間にか4人の背後に周っていた露出の高い賊の恰好をした女が呟く。



「!? なんだお前は!!?」



「賊に名乗る名は持ってないッスよ…ってあれ?」



最後の1人は慌てて中央キャラバンに駆けつけると、中から乗客の女一人を引きずり出した。



「キャアアアッ!!」



「動くなよお前ら、この女の命がどうなってもいいのか!?」



乗客の女に刃物を突き付ける巨漢の賊。グリフィンシアがそれを見て変な顔をした。



「はぁ? 何がキャアアアッだよ」



男が人質に取ったのは赤髪の聖女だった。



「よくやったゼムド。テメェら動くんじゃねぇぞ」《ピィィィイイッ!》



サモアが口笛を吹くと、森に伏せていた更に10名ほどの賊が瞬く間にキャラバンを包囲した。スヴィムがベルディカに寄りかかりながらうなだれる。



「まさかこれ程の数を見抜けなかったとは… 俺の大失態だ」



「クハハハハッ、俺の計画は完璧だ。よくもうちの仲間を数名殺ってくれたな。荷物を奪ったら何人か殺してやる!」



サモアが自分の剣をベロりと舌で気持ち悪く舐め回すと、人質の女へと目を向けた。次第にその目の瞳孔が限界にまで開かれる。



「はぁあああ゛!?!?」



信じられない光景に声を上げるサモア。サモアが見たのは赤い髪の聖女が片腕で巨漢のゼムドの喉を摘み上げ、握り潰そうとしているところだった。苦しがるゼムドの巨体を片腕で軽々と受け止めている。女は目を見開くとサモアを凝視した。



「貴様、我々を何人か殺すだと? ならばその前に俺が貴様たちを皆殺しにするが?」



賊も顔負けの悪人面に怖気つくその場の賊たち。傭兵団の皆も目を見開いて開けた口を閉じれなかった。


皆が驚く間に賊の後ろへと回り込んだグリフィンシアが人差し指と中指を立てて自身の額へと添える。



「呪縛の六… パンドラ・エフェクト………」



その場で泡を吹いて倒れるサモア以外の12人。剣を構えながらプルプル震えるサモアは、目の前から迫る赤髪の女から視線を逸らせずにいた。


メサリアはゼムドの喉を握りつぶすと、巨体を捨て置きゆっくりとサモアへと歩み寄る。



「危険だ!」



スヴィムが忠告するが、無視して進むメサリア。やがて気が動転したサモアがメサリアへと斬りかかった。その剣の刃を素手で受け止めると、彼女はたちまちその刃を破壊してしまった。



「うそだろ?…」



呟くイーグルアイ。



そのまま腹に拳で一撃を食らわせると、サモアは白目を剥いて地面に突っ伏した。



「何アレ…ヤバッ」



半開きの眼で冷や汗をかきながらレインが呟く。



「団長…」



「なんだ、グリッド」



片腕を怪我しながらも、よろよろとスヴィムに近寄るグリッド。



「………ご、護衛対象の方が強かったっすね」



「言うな…」



失笑するグリッド。頭を抱えるスヴィム。


余りにも驚愕な展開に、拍手し出す傭兵団と乗客たち。その拍手を無表情で掻い潜って、メサリアはキャラバンの乗客を覗いた。



「zzz」



「僕はなんてことを…」



「ハアアアッ///」『私ったらあんなことやこんなことまで!』



気持ちよさそうに眠るリベルダに、頭を抱えるアークノイアに、両手で顔を隠してモジモジするプリパレイダ。




「いつまでやってんだあああ!_____






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[アリシア王国 城下町ルグリスブランケ]




長距離移動に長けた種類の馬のキャラバンでさえ、ひたすら走らせても街に到着したのは夜の21時過ぎだった。


夜のルグリスブランケには古びた鋼鉄の街灯が並び立つ。飲食店や酒場などはまだ営業中のようだった。街の奥に見える巨大な鋼鉄の要塞は、四方八方からライトで照らされている。


門をくぐった先の広場にキャラバンを止めるメサリアたちご一行。



「遥か昔の感覚で、もう1日1回は風呂に入らないと臭くてかなわないわね」



「どこのお姫様よ。王族はともかく、巷の冒険者なんて一週間風呂に入らない事だってよくあるってのにぃ」



プリパレイダがメサリアへと突っ込みを入れる。



「…ちなみにね。私は臭い方が好きよ」(ヒソッ)



《ブッ》



横で話を聞いてたアークノイアが噴き出す。



「えっ、臭いのが好きってアナタねぇ!?」



「王女やってるとそう言う臭いと無縁の生活だから、冒険者になってからは刺激的だったわ。汗だくの殿方ばかりで…アハッ」



そう言うとプリパレイダはキャラバンを飛び降りた。それに続くメサリアとアークノイア。



《やっとご到着のようね、リベルダ》



(ハッ)



突如キャラバンで目を見開くリベルダ。思念魔法で応答する。



《何処にいる?》



《到着が夜遅くで良かった。アタイは東側の路地の陰に潜んでいる。門の壁から一つ目の路地を突き進め。そこで合流よ》



リベルダが最後にキャラバンから飛び降りると、4人と向き合った。



「あ、おはようございます。皆さま私についてきてください。協力者に会います」



「ずっと起きなかったわね」



グリフィンシアが呆れる。



「あんたたち!」



先頭のキャラバンの方から男の声がして皆が振り返る。そこには傭兵団の6人がこちらを見ていた。



「昼間は助かった。あんたたちの実力じゃ俺らは役不足だろうが…何かあったら気軽に頼ってくれ」



「深淵さんに呪縛さん、サイン家宝にします~~!」



団長スヴィムとグリッドがそう言うと、他も手を振り会釈をしてメサリアたちを見送る。メサリアたちはそれに応えると、小走りのリベルダの背を追った。


西側に見える鋼鉄要塞タイタンとは真逆の東側の路地を行くと、少ししてリベルダが立ち止まる。



「ここら辺は要塞勤務の奴らの多い居住区でな、ひと気がないから安全さ」



大きな鋼鉄の鎧を着た者が、甲冑越しの籠った声で喋りかけて来た。左肩には碧い薔薇のペイントが入っている。



「お久しぶりですね。どうやら上手く抜け出してこれたようで何よりです」



リベルダが頭のフードを脱いでオールバックを露わにする。



「渦中の者以外に何人か連れがいるとは聞いていたが… これ程の者たちだとは聞いてないわよ。気配が女王陛下に匹敵する…」



リベルダの後ろに続く数名の影を眺めつつそう言うと、協力者は鋼鉄の兜を外した。肩にかからない程の金髪が解放され、その右目は黒い眼帯で覆われている。背格好は男に負けず劣らずの巨体で、背中には巨大な大剣を背負っていた。



「まさか… クリス!?」



「!?!? アークノイア殿下!? 何故ここに!!」



アークノイアとクリステラが共に駆け寄り手を取り合う。



「もちろん、アリシアを説得するために来たんだ!」



「なんと心強い! 学友の殿下が説得に応じて頂けるならば腹違いのアリシアも目を覚ます可能性があります」



そう言いながら他の2人に目を移すクリステラ。その気配に臆して唾を飲み込んだ。



「渦中の者は?」



クリステラがそう言うと、最後尾にいた魔女のシルエットが動き出す。路地の影から月の照らす領域に7割ほどその身を呈した。



「なっ!? アンタ… 暗黒魔導士!!??」



皆「!!??」



驚いて一歩後ずさるクリステラ。



「お久しぶりですね、鋼鉄騎士。いや、クリステラ・ローゼン・アリシアベル」



メサリアとグリフィンシアがその名に驚く。



『身内って…そう言うことか』



「…まさかアンタがハミルトン王家第3皇女だったとは驚きよ… それに以前よりも…」



クリステラがプリパレイダの全身を見渡す。



「………デューラン様にはもう近寄らせないわよ」



「安心して。私には雷鳴様がいるから♡」



何故か睨みつけるクリステラ、対して笑顔で返すプリパレイダ。



「君たちは、どういう関係なんだい?」



アークノイアが尋ねる。




「かつて… 共に魔王軍と戦った勇者ご一行の仲間さ_____






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次話、未定です。


あと、感想と評価ほしいです!!

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