53.流されてロベルハイムの森
お待たせしました。
「号外だーー!! 号外ーー!!」
その一報は瞬く間に人界の各地へと伝わった。『女王国絶対指令』それは諸国の民を震撼させることとなる。
「バカな! いつの時代だと思ってやがる!? この現代でそれが起こると言うのか!?」
インペリアルオーダー、それはかつてアリシア王国が今ほどの大国でなかった頃に、周りの小国に攻め入り統合する度に発令していた指令だ。ひとたびそれが発令されると、一国が滅ぶまで止まらない。そういういわくつきなものである。
「人ひとりのためだけにそれをすると言うのか!? 新しいアリシア女王…狂ってやがるぜ!」「亡国の戦士にそんな娘いたか? 9人じゃなかったか?」「旧国の皇女が生きていたのか!!」「知っているぞ!? あの宿命の杯の元1番手じゃないか!!」
各地で飛び交う驚きの声。
「………鋼鉄のアリシアって、人界屈指の人柱の!?」
キースが隣に寄り添うグリフィンシアに確認をする。キースを抱きしめながら頷くグリフィンシア。
「ええ。人類最強の一角、時の番人や帝国の狂気の錬金術師と同等の存在。私もアサシン時代に一度だけ彼女の依頼を受けて族を狩ったことがあるけど… アレは文字通り人間を辞めていたわ」
グリフィンシアは親指を噛みながら言う。
『でも正直言って… あの深淵の方が何倍も…』
その視線の先には、テーブル向かいに座り新聞を広げているセシル・トル・ライデン。その手は小刻みに震えていた。
『…まさか、生きていたというのですか… あの、プリパレイダさんが』
「ぬぅ… まさかあ奴が…」
渋面を深める漆黒のゼネスは、ギルド『緑の渠底』のロビーで腰掛け佇んでいた。すると、目の前に出される暖かいコーヒー。持ってきたのは賢運の名が似合うガタイの良い老人だった。
「やはり知り合いか? ゼネス」
コーヒーを受け取るゼネス。
「いただこう、モーゼン。そうだ、クリスタル級である俺は王室に出入りしていたから知っている。冒険者ギルドでよく鉢合わせしていたあの娘が皇女だということはな。だが一つ引っかかることがある…」
コーヒーを口へと運ぶと、ゼネスは言った。
「王国が滅んだのは3年前だ。生きておったのならこの3年間あ奴は何処にいたのだ? 今、プリパレイダ姫の生存が明るみに出て、そして異例のインペリアルオーダーを発令した新女帝アリシア…」
「タイミングが良すぎるというのか?」
賢運のモーゼンが問いかける。ゼネスは答える。
「…俺が言うのもなんだがな、悠久に渡る歴史の大掛かりな宿命… その命運が今集約したように思える。何か大きな因果がはたらいているぞ。モーゼンよ、この一件…何か大きな意思を感じる。ただ事じゃすまぬぞ!」
天井を仰ぐゼネス。
「………同じ故郷の同胞として… あの娘に俺ができることをせねばな」
「もしツヴァイエルスへ遠征するんじゃとすれば、我がメーデリアを通る時にひと悶着ありそうじゃな…」
同じく天井を見上げるモーゼン。
53.流されてロベルハイムの森
[アリシア王国 王都トゥルベリム北西 鋼鉄要塞タイタン]
「聞いているのか、アリシア・ローゼン・アリシアベル!!?? 正気を取り戻ぜ!!」
巷に出回る希少な携帯翡翠鏡の設置型版。それから映し出される映像には、金髪の優男が画面に迫る勢いで力説している様子であった。
「失敬な。余は常に正気だ。そもそも貴様は何をもってこの世の沙汰を狂気だと位置づけるのだ? 神聖ウルバニア皇国 第一皇子 アークノイア・フレデル・クラウディア」
「そ、それは…」
言葉に詰まる青二才。クスクスほくそ笑むアリシア。
「今は人同士で争っている時では…」
少々弱気に話し出すアークノイア。
「人同士!? あはッ!! 笑わせるな!! ハミルトンの地には跋扈する死霊とアンデッドたち、魑魅魍魎とそれを掲げるエルダーリッチ。冥府魔導の力は貴様ら神聖ウルバニア皇国クラウディア教徒たちの天敵、真逆の力だろう。貴様こそ正気なのか?」
「化け物の一族を滅ぼす! 人々の安寧、そして我らアリシアベルの繁栄のためにな!! 邪魔となるならばバイエル共も殲滅する!」
アリシアは、その鋼鉄の右腕を掲げると、拳を強く握り潰してみせた。再び力説するアークノイア。
「ともに! ともに聖都アリエスの学院で学んだ同級生ではないか! アリシア!」
「ハッ、貴様こそあの頃を思い出せアークノイア! 必修科目とはいえ『冥府魔導の一族が神聖なる我が国へ学びに来るなど悍ましい』などと口にしていたのはどこのどいつだ?? 私以上にプリパレイダを嫌っていたではないか!」
そういい、咄嗟に顔を鋼鉄の手で覆うアリシア。慌てて通信を切る。
「待ッ…_____ 《プツッ》
途切れる映像。
「余は……… 私は一体何を言って……… あの頃とはなんだ!」
王室に独り、アリシアは辛そうに叫び出す_____
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[ツヴァイエルス王国南部 炭鉱町ラズロブルク]
「本当だ… 本当だった! 奴ら、本当に姫ちんを捉えに来るッスよ!」
道中耳にした情報と、ラズロブルクの入り口で手に入れたリンドウィン特報誌の内容を読み終え、インペリアルオーダーを知ったソーニャ・ジークステイル、ライファー、クリステル、そしてプリパレイダ。バイエルの街を飛び出して、とりあえず南のラズロブルクへたどり着いた一味だが、正直今後どうするかは決まらずにいた。
「ラズロブルクに来たのは正解だったかもしれませんね! 日も暮れたことで炭鉱町は隠れるには絶好の場所です!」
ライファーが周りに人気がないのを確認すると、その歩みを止める。
「…みんな? 私といるとみんなも巻き込んじゃうわ! 私は大丈夫だから、みんなはもう行って?? …元々バイエルの街で会えたのは偶然なんだし」《ドンッ》
背にある石壁へプリパレイダを押し付けるクレステル。真剣な眼差しで声を張る。
「そういうのはなしよプリパレイダ! あの時アタシたちを逃がすために身体張ってくれたアナタを、今度はアタシたちが守る番!」
こういう時だけ滑舌よくなるクレステル。
「そうですよプリパレイダさん、水臭いですよ。我ら宿命の杯4人、もう誰一人欠けたりはさせません!」「仲間を見捨てるなんて、杯を交わした俺らがするわけないッスよ!」
そうほほ笑むライファーとソーニャ。
「アナタたち…」
走って来て乱れた肩出しファッションの魔女服を整え胸を上着にしまい込むと、プリパレイダは3人へと向き直り、そして軽く笑ってみせた。
「ソーニャ、どうあっても翡翠晶ネットワークで仲間と連絡は取り合えないのですか?」
ライファーが言う。
「翡翠晶は、なんとなく危ない気がするッス。インペリアルオーダーが発令された今、人界中の誰が見ているかわからない。だから、今はメルトさんに渡されたこのマジックアイテムの『ブローチ』だけが頼み…」
ソーニャが宝石のはめ込まれたブローチを皆に見せた。プリパレイダが口を開く。
「ねぇ…アナタたちの言う仲間って誰の事?」
「亡国の戦士とあと他の数名と轟雷の皆さんですよ」
ライファーがそう言うと、プリパレイダの眼が少し大きく見開かれた。
「轟雷… セシルさんたち!? そう…そうなんだ」
プリパレイダが少し和らいだ表情をみせた。ソーニャがクレステルをみる。
「正直、こういう時は力ある者の意見が聞きたいッス。嬢ちゃん、いや… ユノレヴィア・ユグドラシル」
ライファーも何かを求める目でクレステルを見つめた。プリパレイダだけ理解していない。
「…ふぅ、当然よね。メタモルフォーゼ!」《キュィィィーーーン》
クレステルが唱えると、その身体は白く発光し変形していく。そして形が定まると、再び発光がおさまった。そこにいたのは青い神秘的な衣装に身を包んだ輝く銀髪ロングのハイエルフだった。
「えっ!?」
プリパレイダが驚く。更に物陰の方へと後退ると、ユノレヴィアは3人を指でクイクイ招いた。集まる3人。
「正直逃げ延びる方法なら数多よ。まず旧魔王城だけど、そもそも私はあの鬼人のような空間移動はできない。だから、あの子を呼ぼうと試みたのだけれど、あの子ったらあの日魔王城へ襲撃しに行ってから連絡が取れないのよ」
「だから最後の頼みはやはりジュピタリアね。もうやれることはやってあるわ。後は待つだけ」
「えっ… 何を言っているかサッパリわからない。アナタは誰? クレステルは? えっ、えっ?」
混乱するプリパレイダ。そっちのけで反応を返す2人。
「流石っス!」「ここで待っていればいいのですか!?」
「…ここは目立つわね。もう少し奥へ行きましょ?」
そう言うと4人はラズロブルクの更に奥へと進んだ。そこはもう使われなくなった炭鉱と、ほんのりと炭鉱入口を照らす魔法灯が数本あるだけだった。空を見上げるユノレヴィア。つられて他の3人も空を見上げる。そこには巨大な翼を広げた紅い魔物が何かを抱えて降下してくる姿があった。
2人「アレは!!」「未だに慣れないなぁ、もはやチートッスよね」
「アレは… あの紅い神獣は… アルカナの時に見た!?」
口を手で塞いで見つめるプリパレイダ。降下してくる紅き神獣。その姿は圧倒される程の魅力を纏った神話の魔人、その目は黒く瞳は緋色。本来ならば恐怖で逃げ出しているところだが、そんな時間はない。担がれた荷物がわらわらと目の前に湧いて来るまで、プリパレイダは紅き神獣に視線を奪われていた。
「うそ! 本当に!! 生きてたのね!!」
「クオリア・オッドニッサ!?」
「…ハハッ、懐かしいじゃねーの」
「ナハト・レイラルド!!」
「プリパレイダ氏!」
「…タンクの眼の細いゴザル!!」
両手を地面について落ち込むアーサー。クオリアがプリパレイダに抱き着いた。大きな胸どうしが密着する。
「生きてる! でもどうやって!?」
クオリアが涙を流した。しかしプリパレイダはもう一人の近づく者に気を囚われていた。目をパッチリ見開き、小刻みに身体を震わせながら、身構えようにもどうにもおぼつかない様子だ。そして、その神獣が口を開く。
「プリパレイダネキ!!」「は!?!?」
突如神獣に抱きしめられるプリパレイダ。
「ちょちょちょちょちょ!!?? きゃあああああ!?!?」
暫くバタバタ暴れると、身体を離してマジマジ魔人の身体を観察するプリパレイダ。クスクス笑う周りの者たち。
「3年前の聖都アルカナ攻防戦で、私たちを救った紅き神獣さん!?」
「いやぁ、あなた方が来てくれるだなんて心強い!」「ホントっスね。俺なんかもう一件落着しちまったッスよ!」
ライファーとソーニャが安堵する。メサリアが口を開いた。
「わらわたちはアリシア王国にいたから、インペリアルオーダーをいち早く知ることができたのじゃ。そしてソコのハイエルフからの呼びかけじゃ。…わらわたちはここに来れば探しているハミルトンの魔女に会えると確信できた」
プリパレイダを睨む解放形態メサリア。プリパレイダが恐る恐る口を開く。
「3年前、幽体化していた私は目の当たりにした。この紅き神獣が魔物たちを殲滅するのを… そして、その時感じていた…その神獣から伝わるハミルトンの鼓動を」
全員「ハミルトンの鼓動!?!?!?」
「なんじゃ、気付いておったのか?」
驚くメサリア。続けるプリパレイダ。
「私は同族を感知できるわ。やっぱり。あなた、ハミルトン家の血を引く… え、でも… ハミルトンの魔人!?!?」
「ハミルトンの血を引いているだって?」
ライファーとソーニャとユノレヴィアが驚く。
「そうじゃ。わらわの名は『メイ・フロステリア・ラノア・ハミルトン』じゃ」
3人「ええッ!?」「ハミルトンの一族だったの!?」
「………ラノアってことは、本家の生き残りがいたのね、意外だわ。生き残りがいたのなら私に一言あってもいいんじゃないのライファー、ソーニャも!」
プリパレイダが後ろの2人へ振り向く。ライファーが口を開く。
「いや、知りませんでしたよプリパレイダさん」
「えっ、でもこのメイさん? の姿を見た時知り合いみたいな反応だったじゃない!?」
「知り合いっすよ、ってか姫ちんも知り合いッスよ。このメンバーで分からないっすか? …いや、分からないっスね」(苦笑)
ソーニャに言われて考え込むプリパレイダ。
「ここに呼んだのは亡国の戦士? …真紅の槍刃? ハミルトンの鼓動… えっ!? まさか!?!?」
プリパレイダは紅き神獣へと向き合い、そして声を上げた。
「まさか、メサリー!?!?」
メサリアは手元にローブを用意し、ようやく元の姿へと戻ると即座にローブを着て髪を青いリボンで結んだ。そしてケープオブメイジスを唱えてローブを普段の衣装へと変化させる。
「お久しぶり、プリパレイダネキ」
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先頭を行くは、筋骨隆々の短髪赤髪の槍使い。手元の地図を、隣の胸元はだける魔女に神聖魔法で照らしてもらいながら、辺りを見回して歩いて行く。
その後ろを金髪聖女と片目の暗黒魔導士が仲良く手を繋いで歩いて行く。時折黒い方が金髪の方へと身を預けるように寄りかかるのがみえた。
「んふふぅ~~。本家の娘だったかぁ~~。ずっと謎だったのよね。名前は違うのにハミルトンの鼓動を感じるし、国王も姉君も聞いても意味深に何も言わないし」
「え゛ッ!? 王さまも皇女さまも!?」
プリパレイダの発言に驚くメサリア。
「な~んか知ってる風だったよアレは。私は遠い親戚なのかな~~程度に考えていたわ。それよりも…よ!」
プリパレイダはメサリアを見つめると、少し押し黙り、そして視線を逸らした。
「…やっぱり何でもない」
「えっ、気になりますよぉーーなんですかぁ?」
「私のこと心配して駆けつけてくれて嬉しいゾ!!」
「もぉーープリパレイダネキったらぁ!」
メサリアに抱き着くプリパレイダ。
『ハミルトンの者ならば知っている。700年前の魔女狩り、その頃に本家が企ててた途方もない儀式を。ハミルトンの悲願を。その悲願が叶っていたことに私は驚愕だ』
プリパレイダは考える。
古代フローレンツィアと同時期に存在していた古代タイタニア、その古き都『旧都アラベスク』 そこには俗にいう冥府魔導の御三家ことハミルトン家、リューベルト家、バイエル家が住み着いていた。そして隣接するアリシアベルの剛族に忌み嫌われていた。
何年もの間いがみ合ってきた御三家とアリシアベル。そしてアリシアベルは次第にその勢力を広げてゆき、対抗して御三家のハミルトンはとある儀式を企てる。その儀式とは冥府魔導の主を神子の器に堕とすという神堕としの禁術。それが成されればハミルトンは更なる繁栄を遂げることだろう。
しかし、世論を味方につけたアリシアベルがそれを許さなかった。次第に過激になった火種は、魔女狩りの名目で御三家を片っ端から火炙りの刑に処していく。御三家は旧都アラベスクを放棄せざるを得なくなり、ハミルトンの本家以外は遥か南の地へと逃れた。
その地に残り続けたハミルトン本家は、周りから隠れ潜み、ハミルトンの悲願を成就するその日までその地を離れることはできなかった。そして、大国アリシア王国を建国したアリシアベルは、次第にハミルトンの存在を忘れ、またハミルトンも中々実らない儀式を次第に忘れていく。
そして月日は過ぎていった。
『先ほどの話。メサリーが魔王ジュピタリア・メイザーの転生後の姿と聞いて全ての辻褄が合った。ハミルトン本家の最後の姫であるメサリアは、神堕としの器。そこに招かれた魔王の魂は正しく冥府魔導の主そのもの。つまり我ら一族の悲願は達成されたのだ』
『…アリシアベルが私を名指ししたのに、メサリーの存在には気付いていないのがしてやったりだわ。お父様方がコレを知っていたのだとしたら…』
「確認する必要がありそうね」
プリパレイダは呟く。
「あったぞ… ここだ!」
「ええ、ここが第37炭鉱よ」
ナハトとクオリアが指を差した先には、如何にも何年もの間手入れをしてない、放棄された廃坑があった。そこには魔法灯すら灯っていない。ライファーが尋ねる。
「ここからロベルハイムの森へと通じているんですね」
「結構昔に放棄された廃坑だから、落盤とかにはかなり気を付けなきゃならないでござるよ」
アーサーが汗を浮かべる。
「かと言ってメサリアの嬢ちゃんに全員抱えて飛んでくれってのも酷だしなぁ。魔物は魔除けのおかげで居ないらしいし、ちゃちゃっと通りますかぁ」
腕をまくる仕草をすると、鼻息荒くして炭鉱へと先陣を切るソーニャ。すぐさまプリパレイダに首根っこを掴まれる。
「待って。狭い坑道に入る前に情報整理しましょう? ナハト・レイラルド?」
「おう。なんだなんだ?」
ナハトがプリパレイダの前に出る。
「アナタが2年もの間『死都アルカナ』で魑魅魍魎相手にサバイバルしてきたことと、ギルド『深界迷宮』が安全圏であり、そこの主であるオズマ・ミストリッチ元宮廷守護騎士団元帥ともまめにコンタクトを取っていることを考えても、水先案内人としては申し分ないわ」
「ちなみにこの坑道は知っていたの?」
「いや。ここは以前知り合ったレジュアダ・オッドニッサと青天照のロウメイ少年たちから話に聞いていただけだ」
ナハトがレジュアダの名前を出すと、クオリアが何とも言えないジト目でナハトをみつめる。
「ワタクシですら知らないのに、なんであの女がこの裏道を知っているのか癪に障りますわ! 在ると分かればロベルハイム一帯はワタクシの領地ですから、恐らく大体の道筋は検討がつきますわ」
「じゃあとりあえず目的地は深界迷宮。そこに身を潜め、次の手を考える。それと、このメンバーならば余裕で魔物どもから身を守れる。決定ね?」
プリパレイダが全員の顔をみわたす。アーサーが口を開いた。
「バイエル家の密告で女王にバレたのだとしたら、インペリアルオーダーの矛先はひとまずツヴァイエルスでござる。どの道ここに留まっていたらいずれ追手がくるでござろうからな」
頷く皆の衆。
「ナハト以外のみんなにとっては、3年半ぶりの里帰りかぁ…」
メサリアが呟く。
「正直、かつての面影は皆無と考えていいと思いますけれども」
ライファーが目を更に細めた。アーサーも負けずに目を細める。
「実は私も3年半ぶりかな。私の本体を保管していてくれた人がね、棺桶をメーデリア南部まで移動しておいてくれたのよ。そのせいで本体に戻るのに数か月かかったのだけれど」
囁くプリパレイダ。クレステルの姿に戻ったエルフが問いかける。
「そ、その保管していてくれた人って、ホムンクルスを創る人と同じ?」
「ええ、そうよ」
「一体何者なの、その人」
クオリアが考え込む。まぁまぁ、と手でジェスチャーをしながら皆の前に出るメサリア。
「とりあえず、進みましょうか! 光よ、我が杖に灯れ… ローライト!」
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[旧ラナ王国領 ロベルハイムの森北部 第37炭鉱出口]
《ガラガラ… ガシャン!!》
朝日の差し込む新緑の美しいロベルハイムの森。その北側の小さな木製の扉を開いて出てくる一団。その先頭にはクオリアがいた。
「全く! 汚らわしい!」《プンスカ》
皆の歩みを待つことなく少々先走る怒り気味のクオリア。
「お嬢ーー待つでござるよーー」
追いかけるアーサー。
「………ま、しゃーないわね、ご愁傷様だわ」
呆れるプリパレイダ。
「そのレジュアダさんッスか? 会ったことないけどとんでもない魔女なんすねぇ?」
ソーニャがナハトをみる。
「んまぁ、そうだな」
そっぽを向くナハト。
一同はクオリアの地図と土地勘を元に坑道を進んだのだが、直ぐに他の一団が通った痕跡を見つけたのだった。その一団が1年前のレジュアダたちのものであることは直ぐにわかった。
そのおかげで、痕跡を辿るだけで裏道を攻略できたわけなのだが… 休憩を取った痕跡が見つかる度に、もう一つの痕跡が赤裸々に残されていたのだ。その上使用したものまでそこにポイ捨てだった。
「クレステルさんの痕跡魔法の映像化、途中で止めて正解でしたね」
ライファーが苦笑いする。
「えーー、私は見たかったのにぃ」
プリパレイダがモジモジする。クレステルがプリパレイダの肩を掴んだ。
「だ、大丈夫。録画済みだから、後で観れる!」《キリッ》
3人「やったーー! 後で女子会だーー!」「巨大スクリーンで頼む!」
盛り上がる宿命の杯、女3人衆。
※詳細は22話を参照
「ライファー、おめぇんところの女子共って…」
「ええ。時より手に負えない時が今までもありました…」(とほほ)
すると先行していたクオリアとアーサーが手を振って皆を呼ぶ。
「ねぇ! こちらに回復の泉がありますのよーー!!」
迷わず真っ先に回復の泉に飛び込む宿命の女三人衆。
「お゛お゛ん゛ッ!? あばばばばばばばひゃあーーーッ!!」(ヒクヒク)
突如変な声を上げると身体を麻痺させ天を仰ぐプリパレイダ。
2人「ちょっと大丈夫姫ちん!?」「プリパレイダ!?」
「ダメよ… 冥府魔導に馴染んだこの身体に、神聖魔法の泉は効きすぎるわ!!」
言ってる傍から飛び込むメサリア。
「確゛か゛に゛染゛み゛ま゛す゛ね゛ぇ゛」(プルプル)
「プフッ、アハハハッ!」
笑い転げるプリパレイダ。
「フフッ。そう言えばメサリー。アナタ聖女だったわよね?」
「はい。実は当時は正式な聖女ではなく、聖女一歩手前の聖女見習いでして。巡礼だけしていなかった私は、ラナ王国崩壊後に巡礼の旅を果たしました。それまでは神聖魔法が全く上達しなくって!」
「そりゃあそうよ。誰にだって適性があるもの。アナタはハミルトン本家の血筋なんだから、冥府魔導に手を出せば、恐らくトップクラスで実力者になっていたでしょうねーー!」(今更だけど!)
「いや、当時私、ゾンビとか苦手で…」(いや今もですけど)
《ドボーン》
最後に飛び込むクオリア・オッドニッサ。
「ウフン… あら? 殿方は?」
見渡すと、先ほどまでそこにいた男性陣がいない。
「いやまぁ、良くも悪くも空気を読める紳士どもってことッスねぇーー!」
甲冑を脱ぎ捨てて大胆に両腕を広げてくつろぐソーニャ。
女5人「アハハハッ」「ですねぇ!」「キャハッ」
少し離れた大木の麓で朝日を眺めるナハト、ライファー、そしてアーサー。大きくため息をつく3人。
「………」
3人『目のやり場に困るっつーの!!』(はぁっ)
《ピロリン!》
女5人「あらっ?」「えっ、なに?」
突然鳴り響いた音声とともに、宙から舞い降りて来たのはエメラルドグリーンに光輝く翼を生やした封筒だった。パタパタと翼をはためかせてゆっくりと泉へと降りてくる。
「あら、珍しい。魔法メッセージですのよ?」
クオリアが下唇に指をあててそう言う。
※第7話参照
「あ、クオリア姉さん。私、受け取りました」(挙手)
メサリアがほほ笑む。
「あら、ちゃんと届いたのねぇ良かったですわ。届くときは届く、届かないときは届かない、元来そういう風習ですから」
5人が見つめる中、光る封筒はヒラヒラと、今や目玉リボンのついた黒いお化け帽子だけの魔女へと降りてゆき、そしてその眼前で止まった。
「えっ、私かぁ… えーー誰からだろう? 今や私が生きてると知った人は多いからなぁ、ココで開いちゃうね?」
他の4人に開く許可を求めると、4人は揃って頷いた。
「えいっ!」
人差し指で光る封筒をタップするプリパレイダ。すると大きな映像と共に金髪の優男が現れた。
「まぁ、誰このイケメン!?」「うわぁ、男!! …って見られているわけじゃないっスけど」
見惚れるクオリア。慌てて泉に肩まで浸かるソーニャ。
「うそ… アークノイア君?」
驚くプリパレイダ。その映像は語り出す。
《今どこにいるかも分からない君に、この魔法メッセージが届くかはわからないが、それでもその可能性にかけることにする。まずは出来るだけ遠くに逃げてくれプリパレイダ。インペリアルオーダーが下された! 狙われているのは君だ! そして言うまでもないが、発令したのはあのアリシアだ!》
《彼女は冷酷無慈悲な新女帝、世間の誰もがその認識を持つ。だが思い出してくれプリパレイダ。我がセントアリエスジェミニ学院で共に学んだ頃の彼女は、君に対して敵対心を持っていなかっただろう? 彼女の身体はハミルトンの秘宝の力でバラバラになったというのにも関わらず、だ》
《不思議に思い、僕はアリシアと翡翠鏡を通じて話した。正気に戻れと説得した! しかし彼女は、まるで別人のような態度で僕の言葉に見向きもしなかったんだ。だが、ともに過ごした学院生活の話をしたときアリシアはそれを思い出したかのような反応を見せ、焦って通話を自ら切った》
《それを見て僕は確信したよ… アリシア・ローゼン・アリシアベル16世は『何か』に乗っ取られている、もしくは暴走している! 彼女の中にはかつての優しい心が眠っていると! ………だから共に戦おう! プリパレイダ、我が神聖ウルバニア皇国は君に助力する!》
《ともにアリシアの眼を覚ます方法を探そう! それが唯一無二の希望の光だ。君に連絡手段が残されているのであれば、一度連絡が欲しい。また3人で笑い合える日が来ることを祈って… 神聖ウルバニア皇国第一皇子 アークノイア・フレデル・クラウディアより》
映像が光の粒子となり消え去る。プリパレイダは両手で目を伏せ涙を流していた。
「嬉しい… 私のことを毛嫌いしていたアークノイアくんが、ともに戦おうって、私にメッセージまで残してくれるだなんてッ」
隣で泣く魔女の肩を抱き寄せるメサリア。
「まさか、ウルバニア皇国第一皇子とアリシア女王とプリパレイダが同級生だったなんて… というかワタクシよりも先輩でしたわね」
口元を手で覆って驚くクオリア。
「一歳しか変わらないでしょ~~! ホロロロロ」
不思議な泣き方をするプリパレイダ。ソーニャが再び泉から上半身を出すと口を開いた。
「正気じゃないとは思ってたッスけど、本当に正気じゃなかっただなんて」
「うん。もしもそれが本当なら、私たちにも出来ることがあると思う。武力じゃ本当の解決はできないもの」
頷くメサリア。すると、先ほどから黙っていたエルフが顔を赤らめて噴き出した。
「ほわぁあぁーーー 回復の泉、身体の力が抜けるぅ、色々と出ちゃうぅ」
4人「ちょっとやめてぇぇえええ!?!?」「ダメですって先輩はしたない!!!」「やめろおおおおお地獄の泉になるッスよおおおおお!!?」「ぎゃああああああああああ脱〇エルフ!」
そして4人は無事に、エルフの阻止に成功するのであった_____
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次話、未定です。
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