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深淵聖女(ディープマリア) ~転生魔王は勇者ご一行~  作者: 恩谷
JUPITERIAS(ジュピタリアス) 第二章 ~悠久の刻のテトラ~
36/61

36.動き出す刻、巡り出す血液

お待たせしました。書きたかった2つの話を一気に消化してしまいました。


お楽しみくださいませ。

 





 ………



 ここは… 何処だ…?



 俺は… どうしてここに居るんだ………?




 それまで自分が何をしていたのか。自分の中の記憶をたどるが、行く道が突然途切れるかのように何一つ自身の中に手掛かりがない。


 もどかしさを感じつつも、手足を藻掻くことすら出来ず、ただただ靄がかった宙に漂う。


 やがて、あらゆる五感が文字通り蘇って来ると、ようやく自分が何者か考えるに至った。




 (俺は… そうだ、俺の名前はディライサだ)




 かつて常にその身に放さず持っていた長柄武器を探して、利き手の右手を握っては緩めるディライサ。そこに自慢の愛槍はあるのだろうか。


 まだ完全には取り戻せない五感に焦りを感じつつも、ようやく自分が愛槍を所持していることに気が付く。




 (俺は何と戦っていたんだ?)




 ようやく感覚を取り戻せた自身の右手に力を込める。




 (俺は何を守っていたんだ?)




 ふと脳裏に鮮明に映し出される白い魔女。とても見慣れた風貌のその者の名前は直ぐに出てこない。そして、その者の顔は「恐怖」に染まっていた。




 「避けろ……… アスラァァァ!!!!!!!!」



 「ディライサ… 来ちゃだめぇぇええ!!!」




 蘇る想い。間に合え… 間に合え!! その一心で槍に力を込める………




 (ちくしょう。何故こんなにも人間は非力なのか。どんなに槍の道を極めても、圧倒的な存在の前には成す術もない。愛する者ですら守れない…)



 (正真正銘の化け物め…)




 全ての感情を言葉に乗せて、ディライサは唸った。




 「ジュピタリア… メイザァぁぁー… !!」




 「なんじゃ? わらわの名を気安く呼ぶでないわ、下郎が!」



 眼を見開くと、そこには大胆不敵の笑みを浮かべる美しい化け物が、堂々と玉座に腰を下ろしていた_____






 36.動き出す(とき)、巡り出す血液(かんじょう)






 [魔王城ジュピタートライデント 玉座の間]




 ふと我に返る。本来ならばただひたすらに魔王の攻撃を防ぐことに力を注ぐはずだが、違和感を覚えるディライサ。なぜ魔王は座ったままなのか。



 《ビクッ》



 痙攣するように身体が大きく震える。勢いよく攻撃を防ぐよう飛び出したはずの身体は停止していた。



「な… んだ………?」



 そして思い出したように自分の後ろへと目を向ける。そこには白い魔女が杖にしがみ付いてしゃがみ込んでいた。



「ディライサ!!?」《ハァッ、ハァッ》



「アスラ!!!」



 白い吐息がアスラの口元を漂う。彼女が生きている証だった。自分がアスラを守りきれた事実を認識すると、ディライサは再び前を向いた。


 振り向きざまに視界を掠めたのは人間。その者へと視線を移すディライサは、その者が自分の仲間であることを悟った。



「メル!!!? 何故ここに戻って来た!?!? 魔王から離れろ、そこは危険だ!!!」



 ディライサは咄嗟に叫びかける。仲間であるはずの導師は、宿敵である魔王の目と鼻の先に立ち尽くしていた。あまりにも接近しすぎだと焦る。



「えっ!? あっ…その!!」



 歯切れが悪い返事を返す導師。強張って動けないのではなく、何故か全くの無警戒でその場に立ち尽くしている。寧ろその警戒は仲間であるはずのディライサたちにこそ向いていた。



「なんじゃ、貴様は相変わらずじゃな。ククク… 本当に相変わらずじゃ… 虫唾が走るわ」



 眼を細める魔王。その黒い眼球に深紅の瞳に見つめられて強張る槍使いと白魔導士。彼らは文字通り必死だった。それも当然のこと。目の前には宿敵がいるのだから。



 《バチンッ》



 突如なんの前触れもなく導師が魔王の頭を軽く叩き落とす。



「ほら、そうやって挑発しない!」



「仕方なかろう? これが当時のわらわの普通なのじゃ」



 2人「!?!?!?」



 ディライサとアスラが纏うピリピリした空気とは真逆の空気が魔王と導師の間に漂う。そのギャップに困惑する2人。ディライサは恐る恐る後退し、後ろのアスラの傍らまでたどり着く。



「大丈夫かアスラ!?」「えぇ、あなたは??」「俺は大丈夫だ…」



 お互い支え合いながらも、視線を目の前の2人から離さないディライサとアスラ。



「メル!!! 何をしてる!!! 早くコチラに来い!!!」



「はッ…はい!!」



 必死に叫ぶディライサに呼ばれ、駆け寄る導師。



「お前… フレイダや俺たちの託した使命を忘れたのか!? 戻って来るなんて、このバカ者め」「なんで戻って来たのよ!」



「私でもあなたたちのお役に立てればと思いまして」



 そう言うと導師は魔導書(グリモワール)を地面において、掌を押し付けて唱えた。



「回復の陣、安らぎの序章!!」



 白く発光する魔法陣が魔導書を中心に拡大し、3人を包む。すると、次第にディライサとアスラの身体も微弱に発光し始めた。



「何よ、この魔法!? 力がみなぎって来る…」「傷が…癒えていく? メル、回復を出来るようになったのか!?」



「導師の設置型魔法陣もこの数百年で進化し続けてきたのですよ。我がファーバー家でも歴史の浅い秘術の一つです」



 傷だらけだったディライサの身体がたちまち綺麗になり、2人は完全回復をしたかの如く腰を上げた。



「武器を捨てよ、愚かな人間共。わらわの前に(ひざまず)くがよい」



 魔王がその黒い眼球に深紅の瞳で睨む。威圧感にたじろぐ2人。



「だぁかぁらーーー、やめなさいってばメサリア! そんなに誤解されたいんですか!!??」



「なんと言ったらよいのかわからんのじゃメルト!! わらわはどうもこういうのが苦手じゃ!」



 あまりにも陽気な2人のやり取りに思考停止する槍使いと白魔導士。



「はぁ………メサリア?」



 困惑する2人から離れてメサリアの元へと歩み寄るメルト。そして、メサリアの深紅の髪の毛を掴んでわしゃわしゃと、まるで飼い犬をあやすようにする。



「お前… 本当にメルか?? それに…」「えっ…… どうなってるのよ魔王も…」



「メサリア、ふっつーーーに喋ってくださいよ?? お願いですから!!」



 髪を掴む手に一際力を込めると、メルトはメサリアの頭から手を離した。



「お久しぶりですね、ディライサ、アスラ。あなたたちは500年間眠っていたのですよ、私の魔法によって」



 威圧も何もせずに普通に語り掛けるメサリア。



「は?」「500年!?」



「ええ、あの魔王決戦から既に500年経っています。かつての英雄と話せる時が来るなんて、とても光栄ですディライサ様、アスラ様。私はメル・ファーバーの子孫、メルト・ファーバーと申します」



 メルトが腰を低くして敬意を示す。



「え、子孫??」「メルト!?!?」



 アスラが一歩前へ出る。



「確かに…声も容姿も私たちの知っているメルと非常に良く似ているけれども、先ほどの魔法にその性格、メルとは思えない…」



「我が祖先のメル様は、物凄くシャイで奥手だったと言い伝えられてますからねぇ…はは…色々とお粗末な私とは正反対で…いやはや」



 心なしか元気を失くし、眼を背けるメルト。



「では何故魔王と親しくしている、ファーバー家の子孫よ!? 人間は魔王軍に下ったのか!? それに何故500年間我らを生かし続け、今になって解放した!?」



「ヒィッ」



 ディライサの大きな声と剣幕にビビるメルト。未だに槍の矛先をメサリアへと向け続ける彼に、アスラは近づき肩に手を乗せた。



「落ち着いてディライサ。どうやらそういう空気じゃないわよ」



 アスラはメサリアとメルトを交互に見つめる。



「彼女たちがその気なら私たちを解放するのも不可解だし、そもそも嘘を言う必要もない。武器を持たずに平穏なやり取りを見せるということは武力行使の意図はない。寧ろ対話を望んでいる?」



「流石に物分かりがいいですねアスラ。500年前も人と魔人の意見の相違について、言葉を交わせたのはあなただけでした」



 そう言うとメサリアは玉座から腰を上げて2人にゆっくりと歩み寄る。何もしないと示すように手ぶらな両手を掲げながらディライサの矛先のすれすれまで近づくと、優しくその槍を掴んだ。



「私の話を…聞いてくれますかディライサ?」



 ねだるような上目遣いでお願いされ、武器の構えを解くディライサ。その表情からも闘志が薄れていくのを感じた。



「お、おう…」



 その様子を見て少しムッとするアスラ。メルトは心の中で思った。



『うわぁーー。ちょろいなーー』






 -----------------------------------------------------------------------------






  [旧魔王城ジュピタートライデント 大浴場]






「ふぅーーーーーっ」



 両手を絡め頭上で掌を天井へ翻し、大きく身体を伸ばす黒髪の美少女。



「流石に10世紀ぶりのお風呂ともなると… 身体に染みるわねぇぇ…」



 テトラは黒い長髪を綺麗にまとめ上げ、顎の下までずっぽりお湯に浸かり、満面の笑みを浮かべて瞼を閉じた。



「あああぁ………」



 片や銀髪のエルフは両腕を開くように岩の浴槽の淵に乗せ、天井を仰ぎながらオッサンのような声を上げる。



「私も本体でのお風呂は500年振りだわぁぁ………ヤバすぎ、最高」



 ユノレヴィアは目を開ける。



「ジュピタリアも本体と合体したし、勇者フレイダの身体はあのまま保管し続けるとして、問題は3人目よねぇ」



 2人は思い出す。ポラステリウム・エポックの最下層にて発見したジュピタリアの本体。それを卵から引っ張り出してメサリアが抱きかかえると、たちまち本体が発光し光の粒子となってメサリアの体内へと吸収された。


 暫く身体が熱い、鼓動が早いと言っていたメサリアだったが、少しして元通りになる。



 そしてその後、全員でくまなく墓標を徘徊し、数多の屍の中から生存しているものを探し出そうとしたが見つからなかった。


 そもそも稼働している卵は管制室で場所を特定できる仕様だ。しかしシステムが故障しているのか、卵の位置は不明のまま。


 フレイダ本体を含め、生体反応2という不気味な数字を残したまま、一同は大地のゆりかごを後にした。



「故障ではないと思う。多分私や山デブが眠ってた卵の様に特殊な構造のやつだと思うわ。どこかに入口が隠されてる、もしくは地殻変動で入口が埋もれたとか」



 テトラがゆっくりと瞼を開けた。



「今確実に言えることは、私たちと同じ旧時代からの渡航者がもう一人どこかに存在しているということよ」



 ユノレヴィアは息を吞む。



「それよりも大丈夫なの? 魔王時代の宿敵2人を解き放って説得するとか。誰かついていてあげた方が良かったんじゃ?」



「私は直接面識はないしぃ~、当事者と末裔以外がしゃしゃり出てもややこしくなるだけでしょ~~? それに…」



「伝説の2人とはいえ、人間にあの娘をどうにかできるわけがないでしょう?」



 ユノレヴィアは呆れた風に両手の平を返した。






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 [旧魔王城ジュピタートライデント アプローディアの中庭]




 旧魔王城の真ん中には天井からマナ鉱石の光が太陽の様に差し込む中庭がある。その中庭には背の低い木々が生繁っていた。


 中庭の北側には高層ビルの側面のように何層にも連なった古い回廊があり、その奥は例外なく闇色に染まっていて見えない。


 地下にあるのにも関わらず、その高層遺跡は少なくとも20層以上も天へと続いており、天井は更に高い位置から光を中庭へと注いでいた。



 その中庭の木々の間にある立派なテーブルに腰かける4人組。




 2人「人間に転生したーー!?!?」



 驚きのあまりに声を上げるディライサとアスラ。ディライサはテーブルから上半身を乗り出すと向かいに座るメサリアの全身をくまなく観察するが、顔を赤らめると再び腰を下ろしそっぽを向いた。



「み、見た目はただの魔人ではないか!」



 隣のアスラがディライサを軽く小突いた。



「普通にしていると、なんとけしからん恰好の女子だな」(///)



「ふ、服くらい着なさいよ魔王! 全裸とか痴女じゃないの!!」



 慌てて付け足したように指摘するアスラは焦っていた。



「何を今更。500年前からわらわは全裸ではないか」



 メサリアが手に顎を乗せ、肘を着きながらジト目で返事をする。



「この恰好は魔法変化じゃ。本来の姿は金髪の女子じゃわい。転生前の記憶に目覚めた時、わらわはとある小国の勇者ご一行じゃった」



 2人「転生魔王は勇者ご一行!!??」



 2人は顔を見合わすと、突如思い切り笑い転げた。



「自分が魔王だったことを忘れて、魔王を倒しに行く勇者側になっていたとか傑作だな!! ぶっはははははは!!」



 席をのけ反りながら腹を抱えて笑うディライサ。



「何やってるのよ魔王! 私たちにもとどめを刺し忘れ、挙句の果てに人間の勇者の仲間だなんて!! プークスクス」



 白い魔女帽子で口元しか見えないが、アスラは爆笑していた。



「あっははは、ですよねぇ? あっははは!」



 つられてメサリアの隣に座っていたメルトまでも笑い出す。



 《カァーーーーーーッ///》



 顔を赤く染めるメサリア。



 笑いながら目の前の皿に盛られた見事な果物たちのうちの一つを手に取り、ひとかじりするアスラ。すると突如目から涙を流した。



「おいしい…」



 一口、また一口と、果実を食するアスラ。



「時を止めていたとはいえ、500年ぶりの食事じゃからな。それはそれは美味であろう?」



 それを見たディライサも、果物を手に取り口にすると涙を流した。



 暫く食事を堪能し、ついには皿の上の果実を完食した2人。テーブルの向かい側で食事を見守っていたメサリアとメルトへと目をやる。



「とりあえず理解した。そもそも我らを生かし時の牢獄から解放したこと、我らの仲間であるメルの子孫と和解していること、戦う意思を感じないこと、その時点で我ら2人が貴様に牙を剥く気は毛頭ない。極めつけに我らと同じ人へと転生していたとなれば尚更だ」



「先ほどはただ怯えていただけよ、魔王。依然としてその人離れした力、それに凄み、それらは魔王そのもの。私たちはあの時、死を覚悟した。それが死んでいなかったのですもの、良いこともあるものだわ」



 ディライサとアスラは先ほどよりも警戒を解いていた。



「決して和解しようなどとは軽はずみにも言えぬ。じゃが、わらわはもはや人に仇成すものではない」



「メサリアさん…でしたか? あなたは人間側なのね?」



 メサリアの言葉に問いかけるアスラ。



「人間側じゃ。目覚めた魔王の力も人のために使いたい。しかし、魔人としての記憶もある以上彼らともことを構えるつもりはない」



 アスラは言質のためか、メルトの方を見た。メルトは頷く。



「メサリアが言っていることは本当ですよ。実際に2年前の魔王幹部の襲撃を撃退して人を、仲間を守ったのは彼女ですから」



 ほう、と感心する2人。すると空になった皿の果物を補充するために1人の男がやって来た。



「おやおや、これはこれは」



 2人「!?!?」「貴様は!!??」



 クゥエイスは突如、普段から瞑っている両目を開眼した。



「雷聖ディライサと白魔導士アスラ。私を追い詰めカミラとクリムを殺した人間!!」



三魔皇(さんまこう)クゥエイス!!」「えっ、本物なの!?!?」



 突然の来襲に身構え、席を立つと背中の槍に手を伸ばすディライサだったが、槍は中庭の入り口に置いてきたままだった。しかし、相手のクゥエイスも果物の皿を持っており両手が塞がっている。


 それを見て、少し安堵すると共にその姿とのミスマッチなシュールさに笑いさえ込み上げて来そうだった。



「久しぶりですね、人間共!」《クワッ!!》



「クゥエイスさん、あなたも止めてくださいよそういうの」《トントン》



 メルトが魔導書の端でクゥエイスを二回叩いた。



「これは失敬。メルトさんの大先輩でしたね…」



 クゥエイスが軽くお辞儀をする。その様子を見ていたアスラが呟く。



「メルトさん…なんか、魔王とその手下をペットの様に飼いならしている飼い主みたい」



「何者だ、ファーバー家の子孫よ。まさか黒幕か!?」



 ディライサが真面目に問いかける。



 《ドンッ》



 メルトがテーブルを両手で強く叩いた。



「そんなわけないでしょうがぁーーーー!」



 そうこうしているうちに、クゥエイスが皿の果物を補充すると、誕生日席に腰を掛けた。



「私も混ぜてもらいたく存じます」



 2人「……………」




 500年前の宿敵同士が同じテーブルに座る、なんとも奇妙な絵面が完成した。




「えーーそれでは、私の地元メーデリア農国の弱小ギルド山頂(ピークス)喫茶店(ティーハウス)の名産サラマリ茶をどうぞ」



 メルトが予め用意しておいたティーセットで5人分のお茶を注ぐと、それぞれに配る。



「メーデリア農国? 何処だそれは」「ギルドってなんの事かしら。サラマリって言ったらあれよね? ヴァルキュディスの南東辺りの…」



 ディライサとアスラがそれぞれ反応する。



「あーそうでしたね、そうでした。500年前だと…フローレンツィア王国の~… ルプスヘルゲン辺りですかね」



 2人「なんと!? フローレンツィアのエリン王家は途絶えたのか!」「ええっ!? 私フローレンツィアの貴族シエルハント家に親友がいたのよ! 滅んだの!?」



「旧貴族シエルハント家は少数ですがまだ健在なはずですよ。旧貴族家はトーラス家とオッドニッサ家が有名ですけど」



 ふむふむと、相槌を打ちながら現在の情勢の把握を試みるアスラ。ディライサはそれよりも隣に着席した魔人を気にしていた。



「それにしても…執事、生きていたとはな」



「心の臓を貫かれる前に石化しましたので。咄嗟の石化のせいで、目覚めれたのは数年後でしたがねぇ。あと、我々魔人は長命ですから。私からしたら、あなた方のほうが生きているのが驚きでしたねぇ」



「それはもう、わらわの時の魔法の秀逸さよ。恐らくわらわが消えた後、魔王軍の魔人たちが2人を破壊しようとしたはずじゃ。宿敵の像がずっとそこに在るのも変な話じゃからな。しかし、わらわの魔力によって守られた主らは鉄壁。外からの攻撃なぞものともせぬ」



 誇らしげにいうメサリアに、流石です魔王様と拍手を送るクゥエイス。


 ディライサはため息を付く。



「仮にも貴様は魔人だろう。人間となった主でも仕えるというのか。中々の忠誠心だな」



「実は最初、人間のメサリアさんを襲撃したところ返り討ちにされまして、それがたまたまジュピタリア様の転生後の姿だったのです」



「魔王とわからずに襲ったのか! そりゃ見ものだったな」




 現代組3人は、目覚めたばかりの2人に現在の世界情勢、基礎知識などを沢山聞かせた_____




「考えてみれば、もう私たちの知り合いは魔人を覗いて全員この世を去っているのよね…」



 しんみりするアスラの頭をディライサが優しく撫でる。



「生まれたばかりだった我が子も… 言葉を話す前に別れて、気付けばこの世を去っているだなんてな… 親らしいことを何もしてやれなかった」



「何よりも許せないのは我がフロムロラン家が、ウルス・マギア家の血を拒んだことよ!」



 メルトからフロムロランとウルスマギアの決別を聞いたアスラは、それを思い出し、再び頭に血が上る。



「現在のフロムロラン家の割と高めの地位にいるロニエ殿とは一度話したことがありますが、結構話のわかるお方でした。一度話してみられては? 一方ウルス・マギアを名乗っているキキエッタ殿はちょっと天然入ってて… あぁ、そう言えばメサリアと同郷の同期で友人でしたね」



「魔王と我が子孫が友人!? なんという…」



「もうしばらく会ってはおらぬがのぅ」



 アスラがテーブルに上半身を預けて力なく伏した。



「もう私たちが守ろうとしていたみんなは居なくて、その子孫が繁栄を遂げてる。私たちの知らない人たちが知らない魔王と戦っているのよね。同じ人を守りたい意思は変わらないけれど、なんか肩の荷が下りた、というか拍子抜けしちゃった…」



「俺たちは使命を果たした。実際にあの時代から魔王ジュピタリアはいなくなり、戦いは少し落ち着いたという… お前を信じればだがなメサリア」



「実際にどうなったかはわらわもこの目で見てはおらぬがな。魔王幹部と勇者ご一行がこぞって消滅したのじゃ、暫くの間争いが収まったという史実は確かじゃろうな」



 力が抜けてしんみりする3人。その様は前線を退いて老後を考えるご隠居たちのそれと似ていた。



「ちょっと、どうしちゃったんですか。来月辺りには魔王軍との戦いがありますし、まだまだ人々は戦っているのですよ!?」



 席から腰を上げて両腕を使って言うメルト。その表情には焦りが見えた。



「そうなんだがなぁ… 今すぐに身の振り方を定めるのは、難しいぜ」



「そうね。本国へ帰ってもそこは既に私たちの帰る場所ではないような気がする。血族たちは仲たがいをし、我が子は既にこの世を去っている。私たちが倒そうとしていた魔王には完敗だったし、その上生かされてて目覚めれば魔王は人間側」



「メサリアよ、あいつは…フレイダは転生したのだな?」



 ディライサが確認をとる。



「ほぼ確実にこの世にいるじゃろうな」



 メサリアは説明に入る。



「つい先日の話じゃ。わらわの本体があったところにフレイダの本体もあった。奴の魂はそこにはなく、既に転生していることがうかがえる。しかし人間にかつてのフレイダを思わせるような戦士は現れておらぬ気がする。わらわの様に記憶に目覚めるのが遅れる場合もあるが」




 わらわの様に違う種族に転生している可能性もある_____




 2人「!!??」「えっ!?!?」



「それはつまり、フレイダが魔人に転生している可能性もあると…そういうことか?」



「そうじゃ。それどころか、魔王軍に所属している可能性すらある」



 ディライサ、アスラ、メルトは絶句した。人々を救った伝説の勇者が魔王軍にいたら、とんでもないことになる。



 するとクゥエイスが考え込んだ。



「私が現魔王軍を離脱する前… 一人だけ心当たりがありますねぇ」



 4人「心当たり!?」「本当か!」



 クゥエイスは頷いた。



「えぇ。剣の手練れで何故か人の世界にも詳しい魔人でした。彼は魔王幹部の妖精王イクシリスの配下の若手です」



 言葉を失う5人。



「ジュピタリア、いやメサリアよ。後でフレイダの場所へ案内してくれるな? お前を疑っているわけではないが、仮にも我らの宿敵だった女。慎重に見極めていく必要がある。お前の人間の姿も後程みせてくれ。確かにお前は変わったが、その姿のまま鵜呑みにするわけにはいくまい」



「了解じゃ」



「アナタの魔王軍は多くの人々を苦しめた。もちろん人間側も魔人たちを排除しようとしていた。あの動乱の時代、すべてがあなたの所為とまでは言わないけれど、アナタが魔王軍を率いていたことは事実なのよ。人に転生したからと言って、記憶があるならば全てが許されるわけではないわ」



「わかっておる」



 ディライサとアスラに言われ、メサリアは下を向いた。メルトがさりげなくメサリアを気遣い、肩を持つ。



「その上で言うわ。私たちを生かしておいてくれてありがとう。戦争の宿敵を生かしておくなんて甘っちょろいけれど、それがあなたの優しさだって私たちは気づいているわ」



「転生して人の心を知ったか、今のお前になら歩み寄れる気がするぞ」



 一転して感謝を述べられ、メサリアは目に涙を浮かべる。



「私のほうこそ、話を聞いてくれてありがとう」






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次話、未定です。


あと、感想と評価ほしいです!!

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