集結する兵士達
今回で丁度100話に到達致しました!
100話記念として、物語の舞台となる大陸地図とアルフォード王国の地図を作製しました。
ささやかな記念コンテンツですが、これによって物語をより楽しんで頂けたら幸いかと思います。
~大陸地図~
~アルフォード王国地図~
南砦を無事に突破した私達は、市街地前に兵を集めた。
南砦前の激戦で負傷した兵を除く1万2千の王都守備隊が、レナード城攻略のための準備を進めている。
そして、南砦突破の報を聞きつけた西方騎士団5千が私達に合流した。
「アイリス殿、ご無事で何より。我々西方騎士団も微力ながら参戦致します。」
「貴殿ら西方騎士団の参戦、とても心強い。ハンク将軍、紹介しよう。こちらは西方騎士団を率いる騎士団長ローレンス殿だ。」
「始めまして、騎士団長ローレンス・バニルと申します。」
「私は王都守備隊を率いるハンク・ウィシャートと申します。貴殿らのご助力、誠に感謝致します!」
二人は、互いに感謝を込めた固い握手を交わす。
「ところでアイリス殿、我々西方騎士団は歩兵のみの5千で良いと仰られたが、全軍を出さずして難攻不落のレナード城を攻め落とす事が可能なのですかな?」
「それについてだが、未だ領外には敵傭兵部隊が多数存在している事だろう。残る西方騎士団で砦を死守し、背後からの奇襲を防いでもらいたい。」
「確かに、攻城中に背を撃たれては厄介ですな。心得た、全力を以て守備に当たらせよう。」
「よろしく頼む。」
「しかし、如何にしてレナード城を攻めるおつもりか?」
「ラキ少年、君はこの中で最も城の陣容について詳しく知っている。説明してくれるか?」
「お待ちくださいアイリス殿。彼は一体何者なのですか?まさか、こんな幼い少年を戦に参加させるつもりではないでしょうな!」
ハンク将軍は訝し気にラキ少年を見詰めている。
「彼は勇者パンジャールの息子だ。」
「パンジャール!?そうか、西方騎士団には勇者パンジャール殿がおりましたな!パンジャール殿が加わればフェニキアの傭兵など恐るるに足りず。して、そのパンジャール殿は何処に?」
「残念ながら、領主ゼルギウスによって処刑されてしまった…。」
「そんな!」
「ラキ少年は勇者パンジャール亡き後も、たった一人でレナード領を守って来た。傭兵達の会話を聞いていた彼だからこそ、敵の情報に最も詳しい。」
「ああ、砦に引き籠ってたアンタら騎士団よりも詳しい自信はある。」
ラキ少年は、騎士団に対する皮肉を言いながらローレンスを見詰める。
ローレンスはラキ少年の視線を受けて、申し訳なさそうに頭を下げた。
「我々も自らの間違いを不甲斐なく思っている。ラキ少年よ、許してもらえるかな?」
「別に…今更謝られたところで、父は帰って来ない。今は憎きゼルギウスを倒し、レナード領からフェニキアのキツネ共を追い出すのがオレ達のやるべき事だ。」
「ああ、その通りだ。一刻も早くレナード領を取り戻そう!」
「ではラキ少年、レナード城の陣容を説明してくれ。」
ラキ少年の話をまとめると、そもそもレナード城はフェニキア側に対する備えが強固であり、背面に当たるこちら側からの攻撃は想定されていない。
備え付けの迎撃兵器は全てフェニキア側に向いており、こちらに移動する事は出来ないようだ。
そして敵の兵力だが、フェニキアの正規軍が3千から5千ほど城を守備している。
正確な数は分からないそうだが、城内に6千以上の兵士を収容するほどの広さはないと思われる。
次に、王都魔法学院から来た魔術師の存在。
これは我々にとって脅威である。
我々王都守備隊と西方騎士団の混成軍には、私しか魔術師がいない。
つまり敵の魔術師に対抗できるのは、私だけだという事になる。
そしてフェニキアからの増援の存在。
これはラキ少年の情報ではなく、南砦前で戦った敵の敗残兵を捕えて聞き出した情報だが、王都へ向けて5万の増援が迫りつつあるらしい。
5万もの傭兵がレナード領に到着してしまえば、もはや戦況は絶望的に不利になってしまう。
以上の事を考慮し、レナード城攻略戦の作戦が立てられた。
騎士団長ローレンスとハンク将軍の両将が作戦の指揮を執る。
私は薬を使い、少ない時間で随分と魔力を回復する事が出来た。
増援が到着する前にカタを着けなければならない我々混成軍は、すぐさまレナード城へ向かい、陣容を整える。
一方、レナード城の城壁の上には、進軍を開始する混成軍の姿を見降ろす領主ゼルギウスと魔術師達の姿があった。
「ほぉ、あれがクロスボーンを破った王都守備隊か…。」
「ゼルギウス様、王都守備隊に呼応した西方騎士団も戦列に加わっているようでございます。」
「ふむ…奴ら、救援に戻って来たアルタイルを退けたそうだな。」
「はい、これはゼルギウス様に対する反逆でございます。」
「戦が終わった暁には、奴らの一族郎党皆殺しにせよ。」
「しかし、それでは奴らを飼い馴らす事は難しくなるかと…。」
「構わん、奴ら諸共皆殺しにせよ。代わりなら幾らでもいる。」
「畏まりました。」
「それで、奴らの中にウォーロックがいるという話だが、どう対処するつもりだ?」
「ご心配無く。城壁には既に、魔法に対する障壁を展開しております。如何にウォーロックとて、そう簡単には破れますまい。」
「あのウォーロック相手に大した自信だな…、まあ良い。して、作戦の方はどうなっている?」
「はい。城門前に3千を布陣し、防御陣形で守備に当たります。その間、この城壁の上から500の弓兵と我々魔術師の魔法で迎撃します。そして、数時間守備に徹すれば5万の増援が到着し、一気に奴らを殲滅出来るかと。」
「ふむ、上策だな。では、首尾は任せた。」
「畏まりました。」
ゼルギウスは黒いマントを翻し、数人の護衛と共に城内へと消えて行く。
レナード城の城門前に集結した両軍は共に陣形を整え、いよいよレナード領における最後の戦いが幕を開けようとしていた――
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